Web制作に必要なスキルは「コーディング」「デザイン」「運用・改善」の3つに大別できます。しかし、人事・総務担当者にとって「どこまでできれば即戦力なのか」「研修では何から教えるべきか」といった基準を明確にするのは難しい課題です。
基礎を押さえていない人材を採用すると、教育コストが膨らみ、成果が出るまでに時間がかかってしまいます。
本記事では、Web制作の基礎から実務で評価されるスキルまでを整理し、採用テストや研修プログラムに役立つ具体的なポイントを解説します。
Web制作の基礎スキルセット(新人向け)
Web制作において、まず確認すべきは基礎的なコーディングスキルです。新人エンジニアや未経験者を採用する場合、最低限「HTML/CSS」と「JavaScript」の理解があるかどうかで研修の難易度が大きく変わります。さらに、チームで開発を進める際に必須となる「Git」の習熟度も早い段階で確認すべきです。
ここでは、新人向けの基本スキルを具体的に解説します。
HTML・CSS|正しく構造化して装飾できる力
Web制作の土台となるのは、HTMLとCSSです。HTMLで文書の構造を定義し、CSSで見た目(デザイン)を整えます。ただ見た目を整えているだけでなく、タグの意味を理解してセマンティックに記述できるかが重要です。これができないと、検索エンジンに正しく認識されず、SEOの面でも不利になります。
採用時には「自己紹介ページをHTMLとCSSで組めるか」「レイアウト崩れを修正できるか」といった課題を出すと、基礎力を確認しやすくなります。研修では、レスポンシブデザインやFlexbox、Gridといったレイアウト技術まで段階的に学ばせると効果的です。
JavaScript|基本的な動きを加えられる力
静的なページはHTMLとCSSだけでも作れますが、ユーザーが操作できるインタラクティブなサイトを作るには、JavaScriptの知識が欠かせません。例えば、ボタンをクリックしたときにメニューを開く、入力フォームをリアルタイムでチェックするといった動きを付けるとき、JavaScriptのスキルが必要となります。
採用時には「簡単なフォームのバリデーションを書けるか」「DOMを操作して要素を動かせるか」を確認すると、実務に必要なレベルを見極めやすくなります。研修では、イベント処理や非同期通信(AjaxやFetch API)の基礎を学ばせると、より実践的な力を養えます。
Git|チーム開発に必須のコード管理スキル
複数人でWeb制作を進める場合、欠かせないのがGitによるコード管理です。Gitを使えないと、同じファイルを上書きして作業が失われるなど、チーム全体の効率が大きく低下します。GitHubやGitLabといったサービスを活用し、ブランチを分けて開発するスキルは必須です。
採用時には「Gitでコミット・プッシュ・プルができるか」「コンフリクトを解消できるか」を確認すると、協働開発に対応できるかがわかります。研修では、プルリクエストを通じたレビューの流れまで体験させると、実務に直結したスキルとして定着が可能です。
中級スキルセット(即戦力を見極める基準)
基礎スキルだけでは、採用後に研修や教育の負担が大きくなり、すぐに現場で戦力化するのは難しい場合があります。そのため、企業が即戦力を求める際には「フレームワークやCMSを扱えるか」「バックエンドの基礎を理解しているか」が大きな判断材料となります。
特に、企業サイト制作の現場ではWordPressが高い頻度で利用されるため、操作経験の有無は重要です。また、PHPやSQLといったサーバーサイドの知識を持つ人材は、静的サイトにとどまらず、会員制サイトや問い合わせフォームなどの動的機能まで担当できるため、業務の幅を広げられます。
WordPress|企業サイト制作に対応できる力
WordPressは世界的に利用されており、企業のコーポレートサイトや採用サイトでも標準的に導入されているCMSです。記事投稿だけでなく、テーマ編集やプラグインの活用ができる人材は、更新・運用業務を効率的に進められます。特に、テーマを修正してデザインや機能をカスタマイズできる力は即戦力として評価できます。
採用時には「既存テーマを修正した経験があるか」「プラグインを使って問い合わせフォームを実装できるか」を確認すると良いでしょう。研修では、テンプレート階層や子テーマの編集を題材にすると実務に直結した学びになります。
PHP・SQL|動的サイト構築の基礎
動的なWebサイトを構築するには、PHPとSQLの基礎理解が欠かせません。お問い合わせフォームの送信処理や、会員制サイトでのデータベース連携などは、企業サイトでも頻繁に求められる機能です。PHPを使ってデータを処理し、SQLで保存・参照できる力があれば、広範囲な業務対応が可能になります。
採用テストでは「簡単な入力フォームを作成し、データを保存する処理を書けるか」といった課題を設定すると、実践力を見極められます。研修では、基本的なCRUD処理(Create/Read/Update/Delete)を学ばせると効果的です。
JavaScriptフレームワーク|React/Vue.jsの活用力
ReactやVue.jsといったフレームワークは、モダンなWeb制作において高度なUI構築を可能にします。動的な画面遷移やコンポーネント管理など、従来のJavaScriptだけでは難しい開発を効率化できるため、大規模サイトやアプリ開発では必須のスキルです。
採用においては上級スキルとして評価される領域ですが、研修では基本的な理解をゴールとするのが現実的です。例えば「コンポーネントを使って入力フォームを分割できるか」「状態管理の仕組みを理解しているか」といった確認をすると、習熟度を判断しやすくなります。
周辺スキル(採用評価で差がつくポイント)
基礎や中級スキルは重要ですが、それだけではコーディングスキルに偏りがちになります。実際に成果を上げられる人材を見極めるためには、周辺スキルをどこまで身につけているかが重要です。
SEOやUI/UXの知識があれば、集客や成果につながるサイトを作れます。また、チームで進めるプロジェクトでは、チームで円滑に業務を行うためのコミュニケーション力が欠かせません。
採用や研修の段階でこれらのスキルを確認・強化できれば、人材を早期に戦力化できます。
SEO|検索順位を意識した制作スキル
どれだけ見栄えの良いサイトを作っても、検索結果で表示されなければユーザーには届きません。そのため、SEOの基本を理解している人材は採用価値が高くなります。具体的には、HTML構造を正しく記述できるか、メタ情報を適切に設定できるか、ページ速度を意識して制作できるかが評価ポイントになります。
採用の場面では「制作段階で検索を意識できるか」を確認項目に含めると良いでしょう。研修では、既存のページを題材に改善提案をさせると、知識を実践に落とし込むトレーニングになります。
UI/UX|使いやすさを重視したデザイン力
Web制作において「使いやすさ」を無視すると、離脱率が上がり成果を損ないます。UI/UXに関する基礎知識を持つ人材は、見た目のデザインだけでなく、ユーザーが目的を達成しやすい導線を考えられるため、高い付加価値を生み出せます。特に、Adobe XDやFigmaなどの設計ツールを用いてワイヤーフレームやプロトタイプを作れるスキルは重要です。
研修では、ユーザー視点で課題を発見し、改善策をデザインに反映させる演習を組み込んでみましょう。
コミュニケーション力|チームで成果を出すための必須要素
Web制作はデザイナー、エンジニア、マーケティング担当など、複数の役割が協力し合って進む仕事です。そのため、報告・連絡・相談を適切に行い、関係者と情報を共有できるかどうかが極めて重要です。
採用の際には「進捗をどう共有するか」「課題が発生したときにどう相談するか」といった行動を具体的に確認すると、実務でのトラブルを未然に防げます。研修では、グループでの制作課題を通じて、連携の中で自然にコミュニケーション力を発揮できるかを評価項目に含めると良いでしょう。
スキルマップの活用法
Web制作の現場では、必要なスキルが多岐にわたるため、採用や育成の基準が曖昧になりやすい課題があります。そこで効果的なのがスキルマップの活用です。
スキルを段階ごとに整理して見える化することで、採用時には候補者の実力を正しく把握でき、研修では指導計画を立てやすくなります。スキルマップは「何を基準に評価するか」を社内で共有する共通言語となり、人材確保を効率的かつ確実に進めるための土台になります。
基礎→中級→応用のステップを明確化する
スキルマップを活用する第一の方法は、スキルを段階ごとに整理することです。
たとえば基礎ではHTML/CSSや簡単なJavaScript、中級ではWordPressやPHP/SQL、応用ではReactなどのフレームワークといった形で分類します。こうしてレベルごとの到達目標を明確にしておけば、採用では「今回求めるのは基礎レベル人材か、即戦力レベルか」を判断でき、研修では「どこまで成長させるか」を具体的に計画に落とし込めます。結果として、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
スキルチェックリストで採用試験・研修を効率化する
スキルマップを実務に落とし込むもう一つの方法が、チェックリスト化です。
必要なスキルを項目ごとにリストにすれば、採用試験では合否の基準を明確化できます。研修においても、チェックリストを用いれば習熟度を可視化でき、弱点を早期に把握して適切な指導につなげられます。これにより、評価の属人化を防ぎ、組織全体で一貫した基準に基づいた育成と評価が可能になります。
まとめ|Web制作の人材を確保するポイント
Web制作のスキルセットは、コーディングからSEO、デザインまで多岐にわたります。採用側は幅広い観点で候補者を評価する必要があり、そのためにはスキルチェックの明確化が欠かせません。
スキルマップやチェックリストを用いて基準を整理すれば、採用と育成の判断が属人的にならず、組織として一貫性を持てます。最終的には、必要なスキルを可視化し、採用と教育を結びつけることで、成果を出せる人材を着実に確保可能です。
さらに、外部ツールを活用すれば判断の精度が高まります。ラクテスではWeb制作スキルセットテストを提供しているので、採用時点で候補者の実力を客観的に測定したい場合はぜひご活用ください。