ジョブ型雇用のためのジョブディスクリプション(職務記述書)の作り方とポイント

ジョブ型雇用に切り替えるときに欠かせないのがジョブディスクリプション(職務記述書 JDと略されることも)です。海外ではジョブディスクリプションがある採用が一般的であるため、人事制度をグローバルで統一したい、外国人の採用を進めたいといった会社にも欠かせません。

この記事ではジョブディスクリプションの作り方と、採用を成功させるための書き方のポイントを紹介します。

ジョブディスクリプションに必要な項目

  • 職種・職務名
  • 職務等級
  • 具体的な職務内容とそれぞれの配分イメージ
  • 職種に求められるミッション・役割
  • 組織との関わり方
  • 責任や権限の範囲
  • レポートライン(直接やり取りする上司や部下の役職や人数など)
  • 雇用形態、勤務地、勤務時間などの条件
  • 待遇や福利厚生
  • 必須の経験・知識・スキル・資格など
  • あると良い経験・知識・スキル・資格など

以下それぞれについて簡単に説明します。

職種・職務名

その仕事の職種と職務名です。同じ職種でも職務名のつけ方を変えるだけで印象が変わり、求人への応募数も変わってきます。

たとえば以下はそれぞれ同じ職種を指していますが、職務名の付け方で印象は大きく変わります。

セールス/営業/アカウントプランナー

編集者/インハウスエディター/コンテンツディレクター

職務等級

職務の難易度や付随した役割などから、その職務につく人がどの等級に属することになるのかを説明します。グレード、役員・部長・課長・係長・リーダーなどの役職で表現されることもあります。企業によってどれくらいの段階を設けているかは異なります。

具体的な職務内容とそれぞれの配分イメージ

どんな仕事をすることになるのか、責任や時間などのウェートも含めて具体的に書きます。

等級が上がるほど、部下の採用や育成などのマネジメントの配分が多くなってくるのが一般的です。求職者とこの配分のイメージが一致させることが入社後に活躍してもらうためのポイントになります。たとえば、プレーヤーとして現場で作業するつもりで入社した人が、実は部下の採用・教育育成・管理監督みたいな仕事がメインの職務の担当になれば、ギャップが発生して活躍してもらえない可能性が高まるでしょう。

職種に求められるミッション・役割

その職務で達成するミッションと役割を説明します。どのような状態が理想なのかイメージできるようにするとよいです。短期的な目標と中長期的な目標をそれぞれ定量的、定性的にまとめてあると、求職者の方が仕事へのイメージを持ちやすくなります。求めている成果の基準を示しておくことでミスマッチを減らすことにつながります。

組織との関わり方

その職務は組織の他の部署や役職の人とどのように関わりあいながら仕事をすることになるのか、上司や部下以外にどんな人たちと共同で仕事をするのかなどをまとめていきます。

参加してもらう予定の会議にどのような参加者がいて、どう協力するのかを具体的に書くと組織との関わり方がわかるでしょう。

責任や権限の範囲

必ず達成しなくてはいけない数値目標などの責任範囲と、チームの人事権や自由に使える予算などの権限について書きます。

レポートライン(直接やり取りする上司や部下の役職や人数など)

誰にどんな報告をするのか、逆に何人の部下にどんな報告を受けるのか、上長や会社からどう評価されて、逆に部下をどう評価するのかなどについて書きます。

雇用形態、勤務地、勤務時間などの条件

一般的な求人の募集要項に書いてあるような内容です。

ジョブ型の場合、期間を限定した契約社員や業務委託など、メンバーシップ型よりも幅を持たせた形にしやすいです。

待遇や福利厚生

給与額や各種手当て、産休育休などの制度について説明します。

待遇で大切なのは、類似の職務で他社がどれくらい給与を支払っているのかです。世間一般の相場から大きくずれていれば良い応募者は集まらないでしょう。ジョブ型雇用では、求める成果水準や職務範囲が明確なので、それにあった適切な給与水準の設定をするために、定期的に市場相場を確認するようにします。

ここで大切なのは、メンバーシップ型で設定していた賃金テーブルから乖離してしまったとしても許容することです。メンバーシップ型のときの給与からすると高くなる職務と低くなる職務が両方発生するかと思います。たとえば、若手の優秀なエンジニアなどは従来の賃金テーブルからはみ出してしまうことが多いです。年功序列の考え方を廃して、若手でも能力がある人は給与を大胆に高く設定していかないと、優秀な人材を集めることは難しいです。

必須の経験・知識・スキル・資格など

職務を遂行するうえで必須の業務経験、知識、スキル、資格などをすべて書き出します。書類選考の段階でしっかりとその職務を遂行できそうな人材かを履歴書や職務経歴書などで判断できるようにするために、応募時に書いてもらうことも決めておきましょう。必要な学歴などがもしあればあわせて書いておきます。

あると良い経験・知識・スキル・資格など

なくても採用する可能性があるが、あるとより採用しやすい、評価されやすい経験・知識・スキルなどをまとめます。

ジョブディスクリプションを作成するときのポイント

求職者にとってわかりやすくする

以下のような例を前述しましたが、職務名の設定一つとっても、求職者にとってわかりやすいものとそうではないものがあります。

編集者/インハウスエディター/コンテンツディレクター

求職者の現職・前職の勤務先や、普段使っている用語にあわせてジョブディスクリプションの中で使う表現を決めます。自社が使っている表現と異なる表現でよく使われているものがないか探しましょう。

責任範囲や要求水準を曖昧にしないではっきりと書く

職務内容と求職者のスキルや経験のミスマッチが発生するとお互いにとって不幸です。最低限どのような能力が必要で、どれくらいの責任が発生する仕事なのか厳しい面も含めてはっきりと伝わるように書きましょう。特に目的・目標として管理することになる対象については定量的な指標と定性的なゴールの詳細を書きます。役職が上になるほど、はっきりとどんな目的目標に責任を持つことになるのか伝えます。

要求水準や応募条件を曖昧にしてしまえば、経験者しか採用するつもりがないのに未経験者が応募してくるなど、お互いにとってムダな時間が発生してしまいます。誤解の余地なくはっきりと伝わるように書きましょう。

グローバルで統一する

複数の国で事業を展開している場合、拠点間で等級などを揃えたうえでジョブディスクリプションを書き、同じ職務をする人はすべて同じグレードにつくようにするのが理想的です。国によってズレている状態だと、拠点間の異動や複数拠点でオンラインを活用して連携するときなどに、ポジションの整合性がとれなくなります。たとえば同じグレードで上司と部下の関係になるようなことが発生し、それが不公平感や転職のきっかけにつながってしまうことがあります。

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