働き方の多様化が進み、働き手の不足も懸念される昨今、組織や従業員の状態を把握し、組織が抱える課題の把握や組織の在り方を改善する方法として組織サーベイや組織診断ツールを活用する企業が増えています。そこで、本記事では組織サーベイと組織診断ツールの概要や導入手順と注意点を紹介します。
目次
組織サーベイや組織診断ツールとは?
組織サーベイやそのツールとは、組織や従業員の状態を数値化し、自社の健康状態を客観的な形で把握するための手段です。
組織サーベイは、従業員の意識や満足度、モチベーション、エンゲージメントを測定する調査のことです。組織の全体像を把握する意図があり、社内アンケートや収集したデータの分析や評価などの過程のことも含みます。
組織診断ツールは、組織や従業員の課題を可視化できるツールのことであり、生産性向上や離職率の改善などの施策を検討するのに役立ちます。目的別の質問項目がまとめられたテンプレートも備わっています。
組織サーベイを行う目的は、従業員の満足度やモチベーション、エンゲージメントなどさまざまな側面から組織の現状を測定し、組織課題を発見することです。特に100名以上の規模が大きい組織で、一人ひとりの声を拾い上げて問題点を洗い出すのに役立ちます。
組織サーベイの目的
実施目的について簡潔に説明すると、組織課題の把握と従業員の本音を調査するためです。調査によって従業員の細かい声を拾うことが可能になり、可視化されにくい組織の問題をデータで明らかにできます。
例えば、ストレスやメンタル、エンゲージメントのチェック、職場環境に関する調査を行い、集めたデータをもとに改善策を検討することが可能です。それ以外では、企業理念の組織浸透度や組織風土を把握する目的でも活用されます。調査で得られたデータを分析することで、企業と従業員が同じ方向を向いているかどうかが分かり、ギャップを把握して埋めていくことが可能になります。
このように、組織サーベイの実施によって、見えない課題の可視化と改善による生産性の向上、従業員満足度の向上といった取り組みにつなげることが可能です。調査は一度きりではなく定期的に実施し、企業の成長や組織作りに活かします。
組織診断ツールの目的
組織診断ツールは、組織や従業員にある問題の可視化と解決策の提案のために利用されるツールです。組織サーベイを効率的に実施するために導入されます。
ツールには種類があり、目的別に使い分けます。
目的の例を挙げると
- 人事課題の明確化と改善
- 離職率低下の防止、離職リスクが高い従業員の特定とフォロー
- 従業員の健康状態の把握
- 現場の声のヒアリングと組織課題の可視化などがあります。
ツールによって得意分野が異なるため、目的に合う機能を備えたツールを選ぶことが重要です。
従業員の状況をリアルタイムで把握するために利用できるツールもあります。その場合、毎週や毎月など短期間の調査を実施するパルスサーベイ機能付きのツールが最適です。定点観察や問題と原因の深掘りをしたい場合は、目的に合う設問がパッケージされたツールが適しています。
設問のパッケージは大抵のツールに備わっているため、自社で準備する手間なく簡単に調査を始められることがほとんどです。同時に分析機能も利用できることが多く、その場合は調査後の分析もツール上で完結できます。
組織サーベイと他のサーベイの違い
組織サーベイ以外にも従業員サーベイなど複数の種類があり、それぞれ実施する目的や中心として扱う調査項目が異なります。以下ではそれぞれのサーベイの特徴と違いについて解説します。
従業員サーベイは人事部が主体
従業員サーベイは、主に人事部が主体となって従業員に対して行う包括的な調査です。主に従業員満足度の向上や人事課題の把握、人事戦略の仮説検証を目的に実施します。調査では職場環境や人間関係、福利厚生、ワークライフバランス、従業員の企業に対する満足度などを明らかにします。集めたデータは人事制度を改善する施策を検討するのに活かされます。
組織サーベイと調査目的は異なります。組織サーベイは現状の組織の全体像を数値化して目指すべき姿とのギャップを把握し、組織改善に活かします。一方、従業員サーベイの場合は従業員を主な調査対象として人事制度の効果測定を行い、改善することを重視しています。調査項目に従業員満足度が含まれていることから、組織サーベイや後述するエンゲージメントサーベイと調査項目が類似する場合があります。
モラールサーベイは経営や組織の課題が可視化
モラールサーベイは、従業員の士気や意欲を測定するために定期的に実施される調査です。従業員意識調査と呼ばれることもあります。働きがいの有無や従業員の不満解消、やる気、勤労意欲という側面から組織課題を把握し、従業員のパフォーマンスや定着率の向上、人材配置の最適化、組織力の強化を目指します。
組織サーベイの場合、調査項目は従業員の士気に限りません。従業員のことも含めて組織全体の状態を客観的に把握するための調査で、課題の発見と組織体質の改善を目指します。
モラールサーベイでは、従業員の不満解消や定着率の向上に重きを置いているのが特徴です。調査結果は、心理学や統計学などの手法で分析します。
モラールサーベイには二つの実施方式があります。方式のひとつはNRK方式です。300名以上の規模がある大企業を対象にしています。もうひとつは中小規模(従業員300名未満)向けの厚生労働省方式があります。
モラールサーベイの実施時に役立つツールとして、厚生労働省から「企業の性中立的な従業員活用・育成力に関する自己理解ツール」も提供されています。これは、人事労務管理が男女にとらわれない性中立なものかどうか点検できるツールです。モラールサーベイとの併用または単独での実施が推奨されているため、指標など参考にしてみてください。
関連記事:厚生労働省「モラール・サーベイ的手法による労使の取組を促すツールの作成とその検討状況」
エンゲージメントサーベイは従業員の視点
エンゲージメントサーベイは、従業員の視点から企業や仕事に対するポジティブな感情や忠誠心、愛着心などについて数値化する調査です。従業員と企業の関係強化とエンゲージメントに関する組織課題を明確化することを目的として実施します。
組織サーベイの場合、組織全体の状況把握を重視して調査しますが、エンゲージメントサーベイは従業員が組織に感じている愛着度や信頼感を測定するために調査するという点で違いがあります。また、別の似た調査手段に従業員満足度調査があります。満足度調査は環境に対する満足度を測定するのに対し、エンゲージメントサーベイは従業員の企業や自社製品への愛着を重視する点で異なります。
エンゲージメントサーベイを定期的に実施してデータを集めることで、従業員の企業に対する愛着度や忠誠度の変化を可視化できます。データをもとに社内コミュニケーションの改善を図ったり、人事施策の検討や課題把握に活かしたりすることが可能です。また、サーベイから離職の兆候を察知し、適切なフォローを入れるのにも役立ちます。エンゲージメントが高まると従業員の熱意や貢献意識が高まるため、生産性が向上する効果も期待できます。
組織サーベイや組織診断ツールのメリット・デメリット
組織サーベイや組織診断ツールを使用することで、組織の状態が数値化されて、さまざまな改善策へつなげることが可能です。反面、目的意識なくただ実施するだけでは回答率が悪くなるなどのデメリットも発生します。詳細は以下で解説します。
組織サーベイや組織診断ツールのメリット
組織サーベイによって得られる客観的なデータは、組織や人事に存在する課題解決の精度を向上させます。得たデータを分析することで潜在的な課題が浮き彫りになり、適切な改善策を検討できるようになります。例えば、業務量の偏り、人間関係などの職場環境にある問題や人事課題が発見できる場合があります。
また、組織サーベイで従業員一人ひとりの声を可視化し、本音や不満を収集することで、従業員とのコミュニケーションを改善するヒントを得られます。そのほか、従業員が感じている企業への帰属意識や実際のモチベーションが明らかになり、組織全体の状況も客観的に把握できます。
そうして可視化した結果をもとに職場環境を改善したり、悩みがある従業員をフォローしたりすることで、従業員エンゲージメントを良好に保つことが可能です。社員のモチベーション向上や離職率の低下などの効果も期待できます。
組織サーベイや組織診断ツールのデメリット
組織サーベイにつきまとうデメリットのひとつに、回答率の低さや本音で回答されない点が挙げられます。思うような回答が得られない主な理由として、回答がどう利用されるか分からないこと、単純に質問数が多くて時間や手間がかかり、業務の邪魔になっていること、ストレスに感じていることなどが考えられます。適切な回答が得られないとデータの信頼性が低下するため、実施する際は実施目的の周知や、回答者に負担を与えないような工夫が必要です。
そのほかには実施後に得た回答の分析、解釈の困難さがあります。例えば、回答自体が分かりにくい場合や集めた回答の活かし方が分からない場合があります。対処法として、有効な回答が得られるように質問の仕方を工夫すること、改善行動に移すために必要な指標を設定すること、組織的に改善が進むような仕組みを作ることが挙げられます。
上記以外では、費用や手間が発生する点もデメリットです。実施する際は有効な回答を引き出せる質問を考えるなどの準備が必要です。組織診断ツールのテンプレートを使用すれば簡単に作成できますが、ツールの利用料金がかかります。
外部委託する場合でも費用がかかりますが、専門業者による客観的な助言は有益な側面もあるため、自社で実施すると負担が大きい場合は検討の余地があります。
導入しやすい理解度チェックや適性検査ができるツール
職業や職種に応じたスキルチェックや適性検査をするなら、ウェブテスト作成ツールの「ラクテス」がおすすめです。ラクテスでは、出題から採点、データ管理を一貫して行えます。
豊富な例題テンプレートを活用することで、問題作成の手間を省くことが可能です。オリジナルの問題を出したい場合は、AIのテスト作成補助機能を使うことで効率的に作成できます。テスト結果の出力にも対応しており、出力データを利用した統計処理も必要に応じて可能です。
また、ラクテスはテスト形式で受験者を採点するツールです。組織サーベイによくある質問形式と比較すると、採点があるテスト形式の方が真剣に回答する意欲が湧きやすくなります。そのため、ラクテスは組織サーベイや組織診断ツールで起きる回答に関するデメリットを避けつつ、同じようなメリットを享受できる特長があります。
ラクテスの利用がおすすめな例
- 社内研修や採用後に従業員が身についている技術や知識のチェックをしたい
- 昇進や昇格、部署異動のテストを導入したい
- 従業員の現状の実力を把握したい
- 従業員に適性がある職種をテストで見極めて人材配置を最適化したい
- 採用プロセス、知識の理解度やスキルチェック、適性検査を実施する負担の軽減、効率化できるツールが必要
既存の問題例をテストに使用することで個人の主観によらない評価が可能になり、評価基準の一貫性を確立できるのは大きなメリットです。これによって評価の公平性と透明性を向上させられます。ひとつのツールで検査やテストを完結できるため、ツールやデータが分散することなく、データ管理の最適化も実現できます。
ラクテスについてもっと知りたい、検討したい場合は以下のリンクからアクセス可能です。
関連記事:ラクテス
組織サーベイや組織診断ツールの導入手順
組織サーベイを導入する際は、準備や手順が大切です。準備から実行までスムーズに進めるための導入手順を解説します。
組織課題の洗い出し
始めにすることは、組織全体にある課題の特定と目的の明確化です。組織サーベイはただ漠然と実施しても思うような効果は得られません。何のために実施するのか、現在の組織に何の課題があるのか、どうしたら解決するのかの仮説を立てて、検証するための調査方法を決定しましょう。
例えば、離職率の高さが課題なら、従業員が何に不満を抱いているか、職場環境にどんな問題があるかを調べる必要があります。
組織課題を洗い出す手法として、マインドマップ、ブレインストーミングを行うか、ITツールに蓄積したデータや業務報告書からデータを抽出、分析して課題を発見する方法があります。抽出したデータから定量分析や定性分析を行うことで、生産性の低下や離職率の増加などの傾向を把握し、課題を明らかにすることが可能です。
調査対象と項目の設定
課題が明確になったら、調査項目や調査対象の範囲を決定します。全従業員か一部の従業員限定にするのか、課題を解決するにはどんな質問が必要なのか考えましょう。
離職率が高いという課題を例にして調査項目を挙げると、職場の雰囲気や風通しのよさ、コミュニケーションの円滑さ、待遇への満足度、人事評価に対する意見、働きがい、業務量の適切さなどが考えられます。
さらに、調査項目を決める時は、仮説の正確さを調べるための確認項目、改善の方向性を探るための改善項目に分けると、調査後に分析しやすくなります。
調査の頻度でサーベイの種類が変わるため、課題に応じたやり方を選択することも重要です。半年~1年の頻度で実施する調査をセンサスと呼びます。質問数は100問前後と多めで、掘り下げや多角的なデータ収集と分析に向きます。
定期的なデータ収集と進捗状況の把握、迅速な調査に向くのはパルスで、頻度は1週間~1ヵ月間隔、質問数は10問以下と少なめです。
自社の目的や課題に応じて適切な頻度で実施しましょう。なお、調査の実施期間は余裕を持たせた方が回答する従業員の負担が軽くなります。
サーベイの実行とデータを収集
組織課題、調査対象、調査項目が定まったら、最適な調査方法を選びましょう。
サーベイの方式として、無記名方式のオープンアンケートと記名方式のクローズドアンケートの2種類があります。オープンアンケートは匿名で回答するため、従業員が気軽に本音を回答しやすい特徴があります。反面、誰が回答したか不明なため、回答者の年齢や部署といったさまざまな属性の切り口で分析しにくい点がデメリットです。
一方、クローズドアンケートは回答者の属性ごとに記録できるほか、正確な回答が集まりやすい特徴があります。ただし、企業と従業員の関係によっては本音を書きにくくなる点がデメリットです。これらのことを踏まえ、調査の目的や課題、企業の文化に合った方法を選択しましょう。
調査が終わったら収集したデータを客観的に分析し、具体的な改善策を立案しましょう。仮説が間違っていた場合は次の仮説検証の準備をし、PDCAサイクルを回して効果的な組織改善を目指します。
最後に忘れてはいけないのが、従業員に調査結果をフィードバックすることです。従業員も回答に時間を使っているため、自分の声が組織に届いたと従業員に実感してもらう方が、次の協力も得やすくなります。
組織サーベイや組織診断ツールを導入する時の注意点
デメリットをできるだけ抑えて導入を成功させるには、事前の周知活動と収集すべきデータの把握が重要です。詳細を以下で解説します。
企業と従業員の両方にメリットがあると説明
実施する際は、関係者間で組織サーベイをする目的を知らせましょう。
組織サーベイは現場の協力がなければ成立しません。なぜするのか分からない、やらされているという姿勢の従業員に回答をもらっても、有用な内容が集まらない可能性があります。中身があり、意欲的な回答を引き出すためにも、なぜ実施するのか、回答をどう利用するのか、自分や組織にとってどんなメリットがあるのかなど事前に説明しておくことが大切です。
また、本音を回答すると人事評価に影響が出そうな点が不安要素となり、表面的な回答しか集まらないケースもあります。本当のことが分からない組織サーベイは意味がないため、組織課題を洗い出して解決する目的があることを理解してもらうようにしましょう。従業員が安心して回答できる状態を整えることも重要な仕事です。
目的と欲しいデータを明確にする
調査目的と欲しいデータがあいまいなまま導入しても、意味のある調査項目をまとめられず、集めたデータを有効活用できません。無駄な質問があると質問数も意味なく増えるため、回答者の負担や拒否反応につながります。あとで分析することも視野に入れて、質問を考えるようにしましょう。
また、目的が不明確だと担当者や管理者、経営者間で考えのズレが生じる場合もあります。効果的に実施するためにも、何の目的でデータを集める必要があるのか、従業員に何を回答してもらうべきなのか、関係者間で共有しておくことが重要です。
組織診断ツールの活用を検討している場合でも同様です。自社に合ったツールを選定するためには、何を把握したいのか、どう活用するのかを考えることが重要です。従業員のモチベーションの可視化、働き方のニーズ調査、あるいは現場の意見の吸い上げと潜在的な組織課題の把握といった目的を明確にし、適切なツールを選択しましょう。特に質問数が多くなるセンサスの実施が必要な場合は、ツールを使用した方が効率的です。
組織サーベイや組織診断ツールが現場で活用されるために
組織サーベイや組織診断ツールを効果的に活用するには、目的設定と使いやすいツールの選択が不可欠です。目的を明確化することで組織サーベイの効果を上げられるほか、組織診断ツールに必要な機能の把握と製品選定がしやすくなります。
また、ツールを選ぶときは従業員が使いやすい画面と操作感であることも重要です。画面が見づらい、または操作が難しいツールを選ぶと、回答者に余計なストレスを与えてしまいます。使いやすいツールの方が従業員の回答率や質が向上するため、導入前に無料トライアルで一度使ってみることをおすすめします。
人事やスキルに関する診断をするなら、ラクテスがおすすめです。特に従業員のスキルの可視化や適性検査、スキルの評価基準を確立したいケースで役に立ちます。ITツールに苦手意識がある人でも操作しやすく、出題者と回答者の両方が使いやすいツールです。また、ラクテスには知識の理解度やスキルチェックができるテストを簡単に作成できる機能があり、社内の昇進基準や従業員のモチベーション維持、部署異動の判断をしたい場合に活用できます。
まとめ
組織サーベイや組織診断ツールとは、組織や従業員を調査し、組織全体の状態を評価するための手段です。導入には、組織課題の早期発見、現場の声の吸い上げ、改善策の検討、新たな視点の発見、優秀な人材の離職防止などのメリットがあります。
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