企業における日本語研修はどうやる? 6ステップに分けて流れを紹介

はじめに

 外国籍の人が日本で働く機会が増えた今、多くの企業において日本語研修が必要になっています。外国人スタッフに各自で日本語教室に通わせることもできますが、働きながらだと時間の都合がとれなかったり、やる気がおきなかったりする場合があります。そのため、企業内での日本語研修は最良の方法といえます。今回は、企業が日本語研修を行う際どうすれば良いのか、大まかな流れを紹介します。

参照:出入国在留管理庁:令和2年度 在留外国人に対する基礎調査報告書

 日本語研修には2種類の方法があります。「企業内部で担当者を決め、日本語研修を自前で行う」方法と、「外部から日本語講師を招へいして研修を行ってもらう」方法です。本稿では、それぞれの方法で日本語研修を行う際の流れ・双方のメリット・デメリットを紹介します。

企業で担当者が研修する場合の流れ 6ステップ 

ここでは、研修を自前で行う(=内製化する)場合の流れを6ステップに分けて紹介します。

① 研修目的の設定

② 研修担当者の決定と育成

③ 研修参加者の現状把握

④ 時間の調整

➄ 教育機関への相談と費用計算

⑥ 研修の実施と終了後のフォローアップ

①研修目的の設定

まず、「何のために研修を行うのか」、「ゴールをどこに設定するか」を始めに設定する必要があります。これを決めておかないと、そのあとに行うカリキュラムを決定できないためです。

(参考)日本語能力試験(JLPT)による、N1レベル(ビジネスで日本語が使えるレベル)の問題例

 

参照:日本語能力試験:問題例に挑戦しよう

②研修担当者の決定と育成

 次に、研修を行うにあたって誰が担当者になるのかを決定する必要があります。基本的には人事部や総務部から選びますが、前提として英語が話せる(=受講者とコミュニケーションがとれる)スタッフか、海外勤務経験のあるスタッフであることが条件となります。それだけではなく、日本語教育の専門知識を持つスタッフでないと効果は見込めないでしょう。研修担当者の育成も不可欠です。

③研修参加者の現状把握

 レベルに合わせたカリキュラムの設定をするために、受講生として参加するスタッフの日本語がどの程度できるかは先に把握しておくべきです。また、スタッフのモチベーション維持のために、研修を行う意義や受講者自身へのメリットなども伝えておきましょう。

④時間の調整

 もちろん、研修は企業のスタッフが業務の一部として行うため、通常業務に支障が出ないように時間を設定する必要があります。 受講者のレベルや研修内容によって異なりますが、日本語が初心者レベルの場合は週2〜3回、一回90分程度が一般的です。

参照:米国務総省:日本語初学者がビジネス会話できるまでの時間・勉強量

⑤教育機関への相談と経費精算

 受講者のレベルや研修の目的が明確になったら、次は実施に向けた準備です。研修でのカリキュラムや、使用する教科書などは専門的な教育機関に相談しましょう。

 業種やポジション、受講者の日本語レベルによって、日本語研修の内容は変わります。話す・聞く・読む・書くの四技能だけでなく、実際の会話を想定した実践型の講習もあります。

・日本に来て間もない人向け:買い物・タクシーの乗り方といった基本的な表現、語いを研修する コース(一ヶ月)

・ビジネス:メール作成、電話応対、新聞読解を学ぶコース(三ヶ月)

・サービス業:会話を中心とした話す・聞くことを中心に研修するコース(一ヶ月)

 その他、仕事内容によって専門的な用語・知識を研修します。

 教科書は、研修の内容によって様々なものが販売されています。目的に合った教科書を使いましょう。

サービス日本語−ホテルスタッフ編−         
1,991円(税込み)          
JALアカデミー(現キャプラン) 著
株式会社凡人社 発売
Furigana Japan ニッポンのしきたり
1,650円(税込み)
IBCパブリッシング 発売

費用の確認も不可欠です。

大まかな例として、一回90分、週3回の研修を5人の受講者にむけて行うとすると、

・人件費 年間45万円 

・教材費 年間5万円

・設備費 初期費用10万円

・運営費 年間30万円

・追加の雑費など 5万円

年間で合計100万円前後となります(あくまで一例です)。

⑥研修の実施と終了後のフォローアップ

 具体的な準備が整ったら、いよいよ研修の開始です。研修が終了したら、そのままにせず、評価やフィードバックも忘れないようにしましょう。また、受講者が教えられた内容を反芻できるよう、継続的なフォローアップも重要です。わからないところや苦手なところは、適宜テストなどで確認しましょう。

 

外部から講師を招く場合の流れ

 次に、研修を行う際に外部から日本語の講師を招く(外注する)場合の流れを紹介します。こちらも基本的な流れは上記と同じですが、いくつか異なる点があります。以下に順序を紹介します。

①研修目的の設定

②研修参加者の現状把握

③講師の選定

④時間の調整

⑤研修の実施と終了後のフォローアップ

①研修目的の設定

 上と同じです。

②研修参加者の現状把握

 上と同じです。

③講師の選定

 実際に研修をしてもらう講師を選びます。判断基準としては、専門知識・信頼性の高さ・経験などがあげられます。料金などの待遇面も加味するべきでしょう。

 料金はプランや講師によって異なりますが、相場としては、法人向けの講師は1時間あたりひとり3,000〜5,000円ほどです。(参照:八重ランゲージスクール

参考までに、こちらも費用を大まかに出してみます。

一回90分、週3回の研修を5人の受講者にむけて行うとすると、

・人件費 専門の講師の場合、年間216万+移動費、食費など

・教材費 年間5万円

・設備費 初期費用10万円

・運営費 30万円

・その他雑費 10万円

合計で270〜280万円となります(あくまで一例です)。

④時間の調整

 受講者が通常業務に支障をださないように、講師の方と相談して時間を調整しましょう。

双方の都合と研修レベルによって変わりますが、日本語初心者の場合、一般的には週2〜3回、一回90分が相場となっています。

⑤研修の実施と終了後のフォローアップ

 具体的な準備が整ったら、いよいよ研修の開始です。研修が終了したら、そのままにせず、評価やフィードバックも忘れないようにしましょう。また、受講者が教えられた内容を反芻できるよう、継続的なフォローアップも重要です。もうひとつ重要なのは、講師と企業の間で情報共有を欠かさず行うことです。研修の進捗はどうか、受講者の習熟度はどうかといったことは、今後のカリキュラム決定のために常に把握しておきましょう。

双方のメリット・デメリット

 ここまでそれぞれの情報を見てきました。判断の基準として、メリット・デメリットをまとめます。

両方に共通する問題点とまとめ

 今回は、外国籍のスタッフに向けた日本語研修の流れを紹介しました。それぞれにメリット・デメリットがありますが、共通する問題点として、「フォローアップの大変さ」があります。受講者の苦手分野や分からないことを把握・解消し、スキルアップにつなげることは全工程で最も重要なことの一つです。しかし、内製化の場合はそこまでできる知識やノウハウがないこと、明確な区切りがないことから負担増加につながります。外注の場合は、講師の仕事が増え、さらなる費用増加につながります。

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