採用テスト運用後の振り返り 改善サイクルを回すための指標設計

テストの改善サイクル

採用活動においてWebテストを導入する主な狙いは、論理的思考能力や数的処理能力などの基礎スキルを客観的に測定し、大量の応募者を効率よくフィルタリングすることにあります。新卒・中途を問わず、適切なテスト設計と分析を行えば、ミスマッチや早期離職のリスクを抑えられます。

同じテストをただ使い続けるだけでは、入社後の成果や定着度との関連を十分につかめず、大量のデータを活かしきれないままになりがちです。本記事では、採用担当者がWebテスト導入後のデータを活用し、テストを改善するためのPDCAサイクルを回していくための指標設計をどのように行えばよいかを具体的に解説します。テスト結果と入社後の評価を結びつける工夫で、採用活動の精度を少しずつ高めることができます。


1. 「Plan」:求める人物像を言語化し、指標を設計する

1-1. 採用目的から逆算した人材要件の定義

まずは、自社のビジョンや理念を踏まえ、「どんな人材を採用したいのか」を言語化することが大切です。新卒採用では基礎学力や論理的思考力、コミュニケーション力を重視する企業が多い一方で、中途採用は即戦力となる実務経験や専門知識がどれだけ発揮できるかが焦点になるでしょう。

たとえば、マネジメント候補を採用したいのであれば、チームワークや組織を俯瞰するスキルを重視した問題や配点を増やすなど、あらかじめ求める人物像からテスト設計を逆算しておくと分析がしやすくなります。

求める人材要件をもとに、テストの出題範囲、問題数、制限時間、基準となる点数を決めます。合格点を決めてそれで厳密に合格不合格を決めることもあれば、明確に基準となる点は決めずに面接の結果とあわせて総合的に決める会社もあります。

出題範囲、問題数、制限時間は難易度に直結してきます。採用する予定の職種と同じ仕事をしている自社の従業員数名に試しに受験してもらって、平均点を見て合格点を決めるときの参考にしたり、難易度調整したりといった方法があります。

1-2. 指標設計の考え方:KPIの明確化と優先順位

テスト導入後の改善サイクルをしっかり回すには、「どの指標を中心に分析し、テストの評価判断するか」をあらかじめ定義しておく必要があります。 たとえば、以下のような視点を軸に考えるとテスト全体の指標設計がしやすくなります。

  1. スコア系の指標
    合格率やセクション別の平均得点、分散、標準偏差など、数値として表しやすい項目。たとえば「各セクション20点満点で10点以上を取れば合格」などと設定しておくと、運用がわかりやすくなります。
  2. 時間系の指標
    回答完了率、平均回答時間、回答を途中で離脱した割合など。新卒と中途で問題量や難易度が異なる場合は、ここに注目することで「テストが想定より長すぎる」などの問題点に気づけます。
  3. 入社後の定着度合いとの関連性
    3か月や6か月後の業務評価、離職率、エンゲージメントスコアなど、入社前のテストだけでは測れない部分とテスト結果を突き合わせる指標です。入社テストの点数と入社後の活躍が相関しているか、点数と離職率に相関があるのかといったことを定期的にチェックすることで、次のサイクルに向けた改善策のヒントが得られます。

このように、採用テストのどこに重点を置き、何を重視して合否や配置を決定するのかを最初の段階で定義することが「Plan」フェーズでの指標設計における鍵となります。 たとえば、「まずは基礎学力(論理・数的処理)をクリアしている層を足切りラインとして見極めたい」という目標があるならば、合格ラインをどこに設定するかを数値化しておき、そこからさらに面接でコミュニケーション力や専門性を深掘りする、という流れをあらかじめ描くとよいでしょう。


2. 「Do」:テストの実施とデータ収集のポイント

テスト配信のタイミングはエントリー受付時や一次面接前など、各企業の選考フローによって異なりますが、受験率を上げるためにはテストURLの送付方法やリマインドの回数をあらかじめ決めておくことが重要です。中途採用であれば、現職中の人が時間を取りにくい可能性を考慮し、柔軟に締切について相談を受け付けるようにすると受験完了率が上がります。

データを集計しやすくするには、「受験者ID」「応募枠(新卒・中途など)」「職種」「テストの合計点」「セクション別正答率」「回答完了率」「回答時間」などの項目をまとめておくと、後の分析に役立ちます。指標設計であらかじめ定義したKPIを反映できる項目をきちんと取得しておくことが、正確な検証の第一歩です。 たとえば、応用的には「回答スピードにどれだけ個人差があるか」や「特定のセクションだけ異常に回答率が低くないか」といった視点から、問題量や難易度を見直す材料が得られます。


3. 「Check」:テスト結果から見えてくる課題や傾向

テスト実施後は、まず平均点や合格率、完答率を確認し、問題全体の難易度や構成に大きな偏りがないかをざっくりチェックします。そのうえで、セクション別の正答率や回答時間を比べれば、「数的処理だけ明らかに正答率が低い」「国語力を要する問題への回答時間が長い」などの具体的な課題が浮かび上がるでしょう。

新卒と中途を区別して見ると、想定していたよりも難易度が高すぎたり、あるいは逆に簡単すぎたりする可能性が判明するかもしれません。職種別の点数分布を確認することで、営業職やエンジニア職に共通する課題がどこにあるかも把握しやすくなります。これらの分析を通じて、「Plan」段階で設定した指標が適切だったかどうかを検証するのが「Check」フェーズの大きな役割です。

たとえば、合格ラインを50点に設定したはずなのに応募者の大半が60点前後を取っているようであれば、足切りラインとして十分に機能しているか再考が必要でしょう。


4. 「Act」:問題の改善と評価指標の再調整

分析結果をもとに、問題文や配点、評価の基準を柔軟に修正します。極端に正答率が高い設問はテストとしての識別力が低く、逆に正答率が低すぎる設問は難易度や問い方に何らかの欠陥がある場合があります。こうした「悪問」を定期的に洗い出して、必要に応じて配点や問題文を変更したり、撤廃したりするだけでもテストの品質は徐々に向上します。

また、「Plan」段階で定義したKPIに照らし合わせて、実際の合格率や平均点が想定と大きく乖離していないか」を確認することが不可欠です。 たとえば、新卒のうち上位10%だけを面接に進める方針なのに、実際には合格率が30%に達しているなら、合格ラインを引き直す必要があるでしょう。反対に、中途採用で専門スキルを必須としたはずが、正答率が低すぎて人材がほとんど残らないケースもありえます。その場合は、専門セクションを段階的に難易度分けするなど、面接評価と組み合わせて総合判断できるよう配慮することが求められます。


5. ケーススタディ:新卒・中途でありがちな問題例

新卒採用のケースでは、基礎学力を測ろうとする論理的思考問題が、実は長文読解の能力を問うような構成になってしまい、想定以上に得点が伸びないという課題がよくあります。これは問題文の言い回しや設問数が多すぎることが原因の可能性もあるため、論理的思考力を正しく測れているかを確認しながら問題を見直す必要があります。

一方、中途採用のケースでは、専門知識を測るセクションで極端に満点か0点の二極化が起こることもあります。こうした場合は、問題が特定の分野に偏っていたり、想定外の難易度で作られていたりすることが多いでしょう。専門セクションを初級・中級・上級と分け、どのレベルまで正答できたかを複数段階で評価できるように調整すれば、応募者一人ひとりのスキル分布をより細かく把握できます。


6. 改善サイクルを回し続けるためのテンプレート活用

テスト内容や評価基準を見直すサイクルを継続するには、Excelなどで問題別の正答率や回答完了率を記録しておくテンプレートをあらかじめ用意しておくと便利です。三か月単位や採用サイクルの区切りでデータを振り返り、「どの問題をいつ修正し、正答率がどう変動したか」を見比べることで、改善の成果を把握しやすくなります。新卒と中途、職種ごとにシートを分け、属性ごとの傾向をチェックするのも有効です。

また、採用KPIを追跡するための管理シートを作成して、応募数・合格率・内定率・入社率・離職率などをWebテストの結果と結びつけておきましょう。あらかじめ「どの指標を重視するか」を決めておけば、同じフォーマットでデータを蓄積しやすくなり、改善のたびにPDCAが回しやすくなります。特に、「Plan」フェーズで設定したKPIに沿って推移を追い、その変動が採用成果にどのような影響を与えているかを見極めることが大切です。


7. ツールの活用:ラクテスで始めるテスト改善

テストの作成から配信、結果管理までを一元的に行うために、ラクテスをご利用いただけます。あらかじめ用意されたサンプルテストのテンプレートを基に、必要に応じてオリジナル問題を追加できる仕組みがあるため、時間をかけずに導入できるのがメリットです。

受験結果のデータをすべてクラウドに蓄積されていつでも見られるため、悪問の洗い出しや評価指標の修正が容易になります。

結果をExcelやCSVデータとして出力できる機能がありますので、前述のテンプレートと連動させ、「どの問題をいつ修正し、どう点数が変わったか」といったプロセスをスピーディに回せるようになります。一部の採用枠や少人数チームでパイロット的に試験運用し、問題の設定や合格ラインの妥当性を確かめながら、全社的な導入へ段階的に移行する方法をおすすめします。


8. まとめ:指標設計を軸にPDCAを徹底し、採用精度を高める

採用試験の精度を高めるコツは、データに基づいてテスト内容と評価基準をアップデートし続けることです。はじめに人材要件とテストの目的を明確にし、「何を基準に合否を判断し、その結果をどう検証して改善するか」を指標として定義することが、改善サイクルをしっかり回すための出発点です。

そこから、テスト実施と結果データの収集を経て、セクション別や応募者属性ごとの分布を分析し、問題と配点、合格ラインを調整するという流れを繰り返すことで、テストの質は徐々に向上していきます。新卒・中途いずれの採用においても、指標設計と運用フローを連動させれば、早期離職や採用ミスマッチのリスクを大きく抑えられるでしょう。

テスト結果と面接評価を併用すれば、データに基づく客観性と担当者の主観による補完がかみ合い、より精度の高い採用活動に結びつきます。特別な統計知識がなくても、Excelの基本機能ですぐに分析を始められるはずです。ぜひ「テストの改善サイクルを回すための指標設計」を軸に、採用試験の可能性を最大限に引き出してみてください。

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