採用試験(筆記)における制限時間の設定方法 目安の分数と考え方

筆記試験の制限時間の設定方法

「オンラインで採用試験を実施するとき、制限時間はどのくらいがよいのだろう…」
「長めにすると受験者が減りそうだし、短すぎると能力を測りきれないかも…」

採用担当者であれば、このようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。筆記試験の制限時間は「候補者への負担」「不正を防ぐ難しさ」「どの能力をチェックしたいか」など、多くの要素が関わるため、一概に正解はありません。

制限時間を長くしすぎると候補者が負担を感じて離脱してしまうリスクがあり、短すぎると十分な能力を測れないという課題が出てきます。特にオンライン採用試験が増えている今、調べやすい環境でのテスト対策には時間設定が大きく関わります。

本コラムでは、オンライン・対面それぞれのケースでの制限時間設定の考え方や目安を紹介するとともに、制限時間を長めに設定する場合・短めに設定する場合のメリット・デメリットを解説します。また、筆記試験の中でも正解がないタイプの問題(作文など)については、制限時間を設けずに締切日だけを設定するケースも増えてきています。それらを踏まえ、自社に合った最適な時間設定のヒントをお伝えします。オンライン受験と対面受験の違い短時間/長時間それぞれのメリット・デメリット、そして具体的な実践ステップを交えてご紹介します。

オンライン試験の制限時間:短くするメリットと設定の目安

不正対策として短めが多い理由

オンラインで自宅などから受験できる場合は、候補者がいくらでも調べることができる環境にあるため、制限時間を短めに設定する企業が多いです。
検索エンジンやAIチャットツールで回答を調べられる可能性をゼロにするのは非常に難しく、試験システムでコピーやスクリーンショットを制限していても、スマホで写真を撮って外部ツールに入力されてしまえば不正を完全には防ぎきれません。そのため、「調べる余裕がないほど短時間で設定する」ことが実質的な対策として機能します。

1問あたりの目安:30秒~2分

問題の難易度や形式(計算、常識問題、文章読解など)によりますが、1問あたり30秒~2分程度を目安にすると、調べる時間を確保できないスピード感で回答を進められます。これより短くすれば相当なスピードが要求されますし、逆に長くすると不正のリスクが上がることにも注意が必要です。
オンライン試験は複数回に分けて実施する企業もありますが、その場合も1回あたり長くても30~60分程度に収めるケースが多く見られます。

【ケーススタディ1】オンライン試験の時間を短くして辞退を減らした事例

ある企業では、以前は制限時間を1時間に設定していたために「そもそも受験すらせずに辞退する」「受験途中で離脱する」という候補者が続出していました。そこで制限時間を20分、問題数を10問にコンパクト化したところ、応募者の受験率が向上し、結果的に応募から採用に至る率が改善しました。

面接と同時に実施するケース:短時間試験がもたらす効果

面接に合わせてサクッと実施できる

対面の面接やオンライン面接に合わせて筆記試験を行う企業も少なくありません。来社や面接の時間に10~30分程度を追加し、以下のようなパターンで実施します。

  • 問題数を絞り込み、作文やデータの取り扱いの問題を出して考える能力や処理能力を見極める
  • 計算、国語、一般常識の問題などを多めに出し、1問あたり30~60秒で回答してもらい基本的な能力を見る


候補者がすぐにその場で回答を終える形式であれば、替え玉受験や外部リソースを使った不正が発生しにくいという利点もあります。

【ケーススタディ2】短時間試験で面接の質が向上した事例

とある企業では、面接前に短時間の筆記試験(30分程度)を実施するようにした結果、採用後のミスマッチの割合が減ったそうです。筆記試験の段階で候補者の文章力・思考力の基礎を把握できるようになったため、面接ではより踏み込んだ話ができ、候補者との相性を見極めやすくなったとのことです。

長時間試験を設定するメリット・デメリット

メリット:情報量を増やし判定精度を高める

制限時間を長めに設定すると、多くの問題を出せるため、候補者の複数能力(例えば計算力・論理力・文章力など)を幅広くチェックできます。問題数が増えれば増えるほど、見極めの精度が高まる可能性があります。

デメリット:辞退者や離脱が増える

一方で、長時間の試験に負担を感じて途中で辞退してしまう候補者が増える恐れがあります。特にオンラインで自宅受験の場合は、「時間をかけられない」「めんどう」と判断されてしまい、そもそも受験に至らないリスクが高まります。
また、同じ能力をチェックする問題を10問も20問も解かせるより、的確な5問を出題するほうが候補者、企業側の双方の負担が軽くなります。必要な情報量を担保できる範囲で、30~60分程度に収めるのが一般的と言えるでしょう。

【ケーススタディ3】長時間試験をあえて導入し、辞退をおりこんで選考する事例

B社では、文章作成力や専門知識が求められる職種に限り、あえて1時間の筆記試験を課しています。長文の分析問題や実務に近い内容を出し、「そこに時間をかける意欲がある人だけが最終面接に進んでほしい」という考えからです。結果として辞退は増えましたが、残った候補者の意欲や能力が高く、採用後のミスマッチが減ったという報告もあります。

正解がない問題の取り扱い:制限時間を設けない方法

締切日だけを指定し、自由に取り組ませる

作文や長文のレポート提出、デザインなど、正解がひとつに定まらない課題の場合は、敢えて試験時間の制限を設けず、提出期限(締切日)のみを設定する企業もあります。
この方法なら候補者が十分に時間をかけ、本来の実力や個性を発揮しやすくなります。例えばワークサンプルテスト(実際の業務に近い課題を与えて、取り組み方や成果物を評価するテスト)では、試験そのものの完成度だけでなく、課題への姿勢や取り組むプロセスを重視する企業も多いです。

メリットと注意点

  • メリット:候補者が実際の実務に近い作業をじっくり行うため、意欲やスキルを深く観察できる。
  • 注意点:課題を「他人にやってもらう」不正を防ぎにくい。締切日を設定しても、実際にどれだけ本人が時間をかけたかを把握するのは難しいため、面接での追加ヒアリングなどを組み合わせると効果的。

【ケーススタディ4】長時間ワーク+短時間テストのハイブリッド

ある企業では、まずは短時間の筆記試験(30分〜1時間)で基礎的な国語力や思考力を測り、その後1週間の締切を設けてレポートを書いてもらう形式を採用しています。短時間テストではスピード感や基礎知識をチェックし、レポートでは深い思考力やクリエイティブな発想を確認する流れです。
これにより、筆記試験だけではわからない「文章構成力」や「仕事への向き合い方」を見極められるうえ、短時間テストが候補者にとって大きな負担にならないため、「辞退者が極端に増える」ことも防げています

制限時間を決める前にやるべき3ステップ

制限時間をいきなり「○分にしよう」と決めるのではなく、以下の3ステップを踏むと、自社の状況に合った時間配分を考えやすくなります。

ステップ1:チェックしたい能力を整理する

  • なぜ筆記試験を行うのか?
    まず「どんな能力やスキルを見極めたいのか」を明確にしましょう。たとえば「計算力や国語力をサッと確認したい」「論理的思考力を重視している」「文章構成力を重点的に見たい」など、職種やポジションによって重視するポイントは異なります。
  • 判断基準をはっきりさせる
    「どうなれば合格・不合格(あるいは次の選考に進むか)」というラインをはっきりさせておくと、テストの形式や問題数がぶれにくくなります。

ステップ2:問題の難易度や形式を決める

  • 1問あたりの回答想定時間をざっくり試算
    例)計算問題や常識問題なら1問あたり30秒~1分、読解力・思考力を問う文章問題なら1~2分といった具合に、おおまかな目安を立ててみます。
  • 複数の能力をチェックしたいなら、問題数を増やすか?
    「文章力も計算力も見たい」という場合は、問題が複数ジャンルに及ぶため、ある程度長めの制限時間を確保する必要があります。

ステップ3:社内でリハーサルして微調整する

  • 実際に社内の方に受験してもらう
    いきなり本番の候補者に出すのではなく、社内メンバーに協力してもらい実際に解いてもらいましょう。解答にかかった時間や「ここは短すぎる」「ここは余裕だった」というフィードバックをもとに、制限時間を微調整します。
  • 不正リスクや辞退率も考慮
    オンラインであれば、検索エンジンやAIツールを活用する不正が考えられますし、長時間であれば辞退者が増える可能性もあります。自社がどこまで不正を気にするか、どの程度の離脱率を許容できるかによって、最終的な時間配分を決めましょう。

まとめ

採用試験の制限時間をどう設定するかは、一見シンプルなようで奥が深いテーマです。オンラインでの実施が増えるにつれ、調べ放題の環境や不正対策、候補者の負担など、考慮すべき要素はさらに多くなっています。

  • 短時間設定のメリット
    短時間であれば、不正を行う余裕を与えにくく、気軽に受験できるため辞退率を下げる効果があります。スピード感や基礎力を見極めたいときに有効です。
  • 長時間設定のメリット
    さまざまな能力を幅広くチェックでき、応募者の本気度を測る指標にもなります。ただし、負担が大きくなる分、辞退を選考の一環と割り切る姿勢が必要です。
  • 正解がないタイプの問題
    作文やワークサンプルテストでは、制限時間を設けずに締切日だけ設定することで、候補者の「考え方」や「創意工夫」を深く見ることができます。面接でその背景を質問すれば、さらに多角的な評価が可能です。
  • 自社に合った制限時間を見極める3ステップ
    1. チェックしたい能力を洗い出す
    2. 問題の難易度・形式を決め、回答想定時間を試算する
    3. 社内でリハーサルを行い、不正リスクや辞退率を考慮しつつ最終調整する

これらのステップを踏むことで、「何をどこまで見たいのか」「不正をどこまで防ぎたいのか」という自社の方針が明確になり、無理のない制限時間を設定しやすくなるでしょう。

また、筆記試験だけでは測れない部分を面接と組み合わせるか、逆に短時間テストで候補者をスクリーニングしつつ、必要な場合は長めの課題にも取り組んでもらうなど、複数の方法を組み合わせることも有効です。

最終的には、「どの能力をどのくらい深く確認したいか」「どこまで辞退を許容できるか」を明確にしたうえで、採用後のミスマッチを最小限に抑えられる形を模索してみてください。オンラインでも対面でも、候補者が力を発揮しやすく、企業が求める情報を的確に得られるバランスを見つけることが、効果的な制限時間設定のカギとなります。

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