コンピテンシー診断とは?効果的な活用場面や導入事例を紹介

個々人の特性や仕事の向き不向きは、履歴書や短時間の面談だけで把握するのは困難です。そのため人事・採用担当者としては、採用活動や組織開発などを強化・改善するために、多様な手段を用いて人材の見極めをする必要があります。その有力な手段のひとつに挙げられるのが、「コンピテンシー診断」です。本記事では、コンピテンシー診断の概要をはじめ、活用シーンや活用メリット、コンピテンシー診断を効率的に作成・実施できるツールを紹介します。

採用活動や人材教育で活用されるコンピテンシー診断

コンピテンシー診断とは、受検者の行動特性や思考傾向などを分析するテストです。コンピテンシーとは、一般に「能力」や「技量」などと訳されますが、ビジネスシーンでは特に「優れた成果を上げる人材の行動特性」として捉えられます。

この概念は1970年代のアメリカで誕生し、日本では1990年代から広く受け入れられるようになりました。学歴や職歴、保有スキルだけでは、どのような人材が高いパフォーマンスや成果を出すのかを測りきれないため、その見極めをより正確にできるようにすることが、コンピテンシー診断の主な活用目的です。

コンピテンシー診断の調査項目

コンピテンシー診断では、受検者の能力や行動特性、思考傾向を明らかにするために、以下のようにさまざまな診断項目を設定します。

  • 交渉能力
  • マネジメント能力やリーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • ストレス要因やストレス耐性
  • 業務に対する積極性や問題解決能力
  • 特定の部門や職務、役職に対する適性
  • 上司や部下としての特性や相性タイプ


上記の項目はあくまで一例であり、多くの場合、自社が重視したいことや明らかにしたいことに応じて、チェック内容を調整します。

いずれにせよ、このように多様な観点からコンピテンシー診断を行うことで、各従業員について目に見える実績やスキルだけでなく、その行動特性や思考パターン、潜在的な強みなども明らかにできます。この診断データをもとに、ハイパフォーマーとローパフォーマーを比較・分析することで、自社や各部門、特定の職掌などに向いている人材の特性をより客観的に把握し、一定の基準を設けることが可能です。

そして、この基準やテストの診断結果は、人材の採用・育成プロセスの改善や適材適所の人材配置、組織マネジメントの強化などに役立ちます。そのため、多くの企業が人材戦略の一環としてコンピテンシー診断を活用しています。

コンピテンシー診断で何がわかる?

コンピテンシー診断を実施することで、企業は人材について以下のようなことを効果的に把握できます。

自社で活躍できるか

コンピテンシー診断は、企業が採用活動を行う際に、応募者が自社で成功するために必要な素養を持っているかを客観的に評価するうえで有用です。企業が求める人材は、同じ職種であっても異なることが多く、自社の社風やビジネスモデルに適した人材を見極めることが非常に重要です。

そのためには学歴や職歴、スキル、学力といった表面的な情報だけでなく、応募者の性格的な特性などについても把握する必要があります。その点、コンピテンシー診断では、応募者の性格的な特性や思考パターンなども把握できるので、自社で活躍する人材を特定しやすくなります。

適性の部署はどこか

各従業員の個性を最大限に活かせる部署の選定は、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。その点、コンピテンシー診断を活用することで、企業は「特定の部署や職階に向いた従業員とは、どのような人物なのか」という基準を明確化することが可能です。

これによって、人事異動や新入社員の配置に際して、個々人が最もパフォーマンスを発揮できる部署を把握し、それにあわせて人材を最適配置できます。特に新入社員の場合、自分でも自身の職務適性やポテンシャルを完全には理解していないことが多いので、コンピテンシー診断の結果を参照することは非常に有益です。

個人の能力や特性

コンピテンシー診断を活用することで、個人の能力や特性を正確に把握し、それを組織運営に活かせます。コンピテンシー診断では、行動や思考のパターン、リーダーシップ、問題解決能力、コミュニケーション能力や協調性など、多岐にわたるパーソナリティや能力を分析可能です。

従業員の能力や性格的な傾向を把握することは、自社に適した組織運営をするうえで非常に役立ちます。また、潜在的な能力やリーダーシップの有無を明らかにすることは、将来の管理職やリーダー候補の選定をする際にも有用です。

コンピテンシー診断を活用するメリット

コンピテンシー診断を活用することで、企業は人事評価の標準化、採用活動の効率化、人材育成の強化などを促進できます。これらは組織全体にとって、多大なメリットをもたらすものです。

人事評価を標準化できる

コンピテンシー診断を活用することで、人事評価を標準化し、組織内の公平性や透明性を高めて、従業員満足度を向上できます。

人事評価が曖昧な基準に沿って行われている場合、評価者の主観が大きく影響してしまいがちです。このように評価プロセスが不透明になっていると、従業員は人事評価に不満をもちやすくなります。また、どのような行動が評価に結びつくのか分からなければ、従業員は努力すべき方向性も分かりません。

その点、コンピテンシー診断では、活躍している従業員の行動・思考の特性を、客観的なデータとして把握することが可能です。このデータをもとに、人事評価の基準を設定することで、どのような人材を自社が高く評価するのか、説得力のある仕方ですべての従業員に対して示せます。従業員としては、評価基準が納得感のある形で具体化されていれば、それを目指して高いモチベーションをもって努力しやすくなります。

また、評価プロセスにおける主観性を排除することは、人事評価に対する従業員の不満を抑えることにも繋がります。これらの結果として、従業員の生産性向上や離職率の低減が期待できます。

採用活動を効率化できる

コンピテンシー診断の活用は、採用基準を標準化し、採用活動を効率化するうえでも重要です。採用基準が明確になっていないと、誰をどのような基準で採用するか、採用担当者によって大きく変わることになってしまいます。そうなると、自社に適した人材を採用できるかどうかは、非常に属人性が高いものになり、早期離職などのリスクが高くなりがちです。

その点、自社で成功している従業員のコンピテンシー診断結果を分析し、それをもとに採用基準を標準化することで、採用プロセスにおける属人性を抑えられます。応募者に対してもコンピテンシー診断を実施して行動特性や潜在能力を調査し、その結果を上記で標準化した採用基準や職務遂行に必要なスキルや能力と照合することで、自社の企業風土や業務要件に合致した人材を採用しやすくなります。その結果、離職率の低下が可能です。離職率が低下すれば、中途採用の必要性も減るので、採用プロセス全体の効率化やコスト削減も見込めます。

人材育成に役立てることができる

コンピテンシー診断は、従業員の現在のコンピテンシーレベルを評価し、それに基づいて個別の研修プランを立てる際も非常に有効です。活躍するハイパフォーマーの行動・思考特性を明らかにすることで、自社が求める人物像や成長の方向性が明確になり、それに沿った効率的な人材育成が可能になります。個々の従業員がどのようなキャリアを積みたいか、どのように仕事をしていきたいかといった意向を尊重しつつ、必要な行動や考え方を意識した研修を実施することで、育成効果を最大化できます。

また、従業員としても評価を得るために何をすべきかが明確になるため、モチベーション向上にも有用です。さらに、診断結果を各個人にフィードバックすることで、本人が自覚していなかった能力や改善すべき点を発見できるので、自己成長に繋げられます。このようにコンピテンシー診断を活用することで、個人の成長と組織の発展の双方を支える効率的な人材育成が実現可能となります。

コンピテンシー診断を利用する際の注意点

コンピテンシー診断を利用する際には、その効果を最大限に引き出すために、以下のような注意点についても把握しておくことが大切です。

部署別・役職別にコンピテンシーモデルを設定する

同じ企業内でも、部署や役職に応じてハイパフォーマーの特性は異なるのが通例です。例えば、現場ではエース級の活躍を見せる従業員でも、管理職に転向すると思い通りにいかないことは珍しくありません。そのため、採用活動や人材配置の評価基準となるコンピテンシーモデルは、部署別・役職別に設定することが大切です。

また、コンピテンシー診断を実施する際には、どのような問題を解決したいのか、どのような情報を得たいのかを事前に定義し、診断を受ける対象者や評価基準を明確にすることが成功のカギとなります。

すべての人に同じコンピテンシーを強制するべきではない

コンピテンシー診断はハイパフォーマーの特性を明確にし、基準化することに役立ちますが、だからといってその基準を何から何まですべての従業員へ強制するのは無理があります。生まれながらの才能や幼少期から培われてきた性格を変えることを要求しても、効果が出にくいばかりか、ストレスの原因となる恐れもあります。

そのため、診断結果やコンピテンシーモデルを重視しすぎず、各従業員の先天的な特性や背景、価値観も考慮したうえで、その人に合ったコンピテンシーの強化を目指すことが大切です。

定期的なフィードバックや調整をする必要がある

コンピテンシー診断の結果を活用する際には、定期的なフィードバックと調整が重要です。企業や組織を取り巻く環境は常に変化しているので、時代の移り変わりにあわせた評価基準の見直しや再設定が求められます。そのため、コンピテンシーモデルは一度設計したら終わりではなく、継続的にメンテナンスをするように気をつけましょう。

AIによる問題作成機能で適性スキルチェック

従業員や求人応募者の適性を把握するためには、ラクテスの適性スキルチェックテストを導入するのが効果的です。ラクテスを活用することで、企業は職種・職業別にカスタマイズされた適性検査、昇格・昇進試験、資格試験の作成から受験結果の管理蓄積までワンストップで行えます。

特に、ラクテスに標準搭載された既定の職種適性チェックテストは、専門家の研究成果を反映しており、567人の職業人の実データに基づき調整されています。これを活用することで、面接だけでは把握しにくい人材の特性や、職業・職場へのマッチングを効率的に診断可能です。

また、ラクテスではAIを活用した、理解度チェックテストや研修カリキュラムのテストを自動で作成できる機能を提供しています。AIに問題作成を任せることで、簡単かつ迅速にシステムへ問題を登録可能です。これによって、企業は自社に特化したオリジナルの設問を簡単に作成したり、既存の問題を手直ししたりする時間や労力を大幅に節減できます。

このようにラクテスは、従業員の適性を見極めるためのテストの作成や調整、管理に要する時間と労力を節約することで、より効果的な人材活用の実現に寄与します。

ラクテス

コンピテンシー診断に繋がるスキルチェックテストの導入事例

ラクテスを活用することで、企業は具体的にどのような成果を得られるのでしょうか。以下では参考のために、ラクテスのスキルチェックテストを導入した企業の事例を2つ紹介します。

理解度チェックで人材教育に繋げるRPAテクノロジーズ株式会社

RPAテクノロジーズ株式会社は、RPAとAI技術を駆使して「楽しい時代」への進化を目指す情報処理サービス企業です。同社は従来、独自の研修サービスを提供する中で、研修に対する受講者の理解度を確認するテストの作成に課題を抱えていました。特に、顧客のニーズに細かくあわせたテストの作成には、Excelなどでの手作業による大きな工数がかかり、効率的な運用が困難でした。

しかし、ラクテスを導入することで、同社はこのテスト作成プロセスを劇的に改善することに成功しました。ラクテスのAIによるテスト作成補助機能を活用することで、顧客が重視する知識分野にフォーカスした理解度テストの作成が容易になり、研修サービスの質が向上しています。

また、ラクテスのオンラインテストは、受験から採点まで一連のプロセスを自動化できるので、テスト運営の労力も大幅に削減されました。さらに、Excelでのテスト作成と比較して、不正のリスクを大きく減らせたので、より信頼性の高いテスト運用が可能になったとのことです。

同社では、社内教育においてもラクテスを利用しています。同社が提供しているシステムは半年ごとにバージョンアップするので、従業員が新機能をしっかり理解して顧客に説明できるよう、ラクテスを使って定期的に理解度テストを実施しています。

このようにRPAテクノロジーズ株式会社は、ラクテスで理解度テストの作成・実施をすることで、さまざまな面でサービス品質の向上に成功しました。

苦手意識解消で業務改善へ繋がった保育ICT協会

保育ICT協会は、保育現場のICT活用を推進する一般社団法人です。同法人では、その事業の一環として、ICTのリテラシーを高めるために、Zoomを通じた講習を保育士に提供しています。同法人がラクテスを導入したのも、ICTに関する知識をしっかり習得できているか、講習の受講者がしっかり理解しているかの確認テストを実施するためです。

同法人ではラクテスの導入前、無料のアンケートフォームなどを使ってテストの実施を試みたこともありました。しかし、そうしたツールでは動画の挿入や文字の編集などが難しく、分かりやすいテストを作るための表現の幅が狭い点が問題になっていました。

その点、ラクテスなら動画や画像の挿入も含めて柔軟にテストを作成し、オンライン受験に不慣れな人にも配慮した分かりやすい問題作りが可能です。また、ラクテスではテストの作成から採点、合否判定、テスト結果のメール配信まで自動化できるので、従来よりもテスト運営にかかる時間や労力が大幅に削減できます。

こうしたラクテスの強みを活かすことで、保育ICT協会はテスト運営を効率化し、「講習→確認テスト」の流れを確立して、受講者の理解度をさらに深めることに成功しました。運用面においても、受講者が戸惑うことや大きなトラブルもなく、スムーズな運営を実現しています。

まとめ

コンピテンシー診断とは、個人の行動特性や思考パターンを分析し、仕事に必要な能力の有無や適性を調べるテストです。コンピテンシー診断の結果は、人材の採用・育成・配置や人事評価など、多様な用途に活用できます。

コンピテンシー診断の導入に当たっては、ラクテスを活用することで、準備や管理に必要な時間や人員を大きく減らせます。出題問題を自分で作成して、コンテンツの入れ替えを自由に行える点も、他サービスに比べたラクテスの魅力です。

コンピテンシーやスキルなどの「見える化」は、社内の昇進基準の策定や、従業員のモチベーション維持、部署移動の判断にも役立ちます。ラクテスは無料会員登録でも利用できるので、ぜひ導入をご検討ください。

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