企業の採用活動には、多くの時間やコストを費やすため、自社にマッチした人材の効率的な確保が求められます。面接評価シートを用いれば、定めた基準のもと自社が求める人材かどうかを判断でき、面接担当者の負担軽減にもつながります。本記事では、企業の採用活動に役立つ面接評価シートの作り方をはじめ、盛り込むべき評価項目やおすすめのツールなどを解説します。
目次
面接評価シートとは
面接評価シートとは、採用面接において応募者の評価に用いるシートです。評価項目や評価基準、質問すべき内容などが盛り込まれており、面接担当者はシートを活用しつつ自社が求める人材かどうかを評価します。
面接担当者の判断をサポートし、負担を軽減する役割も担います。シートには、人材をどのような基準で判断するのか記載されているため、担当者はそれに基づき人材を評価できます。また、面接のたびに担当者が質問を考えるとなると負担が増加しますが、シートには質問すべき内容が記載されているため、その心配がありません。
面接評価シートの目的とは
面接評価シートの目的は、採用の質を高め、自社が求める人材を獲得することです。評価シートの活用により、求める人材かどうかをしっかりと見極められます。評価シートには、自社がどのような人材を求めているのか、情報が整理されているためです。面接担当者の主観が入り込む余地がなく、求める人物像情報に基づいて人材を評価できます。
採用活動の効率化も目的のひとつです。明確な評価基準や評価項目がないと、面接担当者はその都度じっくりと応募者を見極めなくてはならず、面接がスムーズに進みません。評価シートには、評価基準や項目が盛り込まれているため、一貫性のある判断のもと効率的に面接を進められます。
応募者の情報を社内で共有するのにも役立ちます。評価シートに、面接担当者のコメント欄を設けておけば、面接で気になったことや応募者の人柄などを記録でき、社内での情報共有が可能です。採用を予定している人材の情報を事前に社内で共有できれば、どの部署が適切なのか、どのようなフォローが必要なのかが分かり、入社後に適切な対応を行えます。
面接評価シートの作り方
面接評価シートを作る際には、自社がどのような人材を求めているのか、人物像を設定しましょう。そのうえで評価する項目を洗い出し、評価基準や質問項目などを作成します。
1.求める人材の要件を定義する
企業にとって、採用のミスマッチは非常に大きな課題です。入社後も活躍が期待できないうえに、自社に合わないからといって解雇するわけにもいきません。このようなミスマッチを回避するため、まずは求める人材の要件を定義しましょう。
その際、組織全体から情報を収集したうえで定義しなければなりません。なぜなら、経営層や各部署により、理想とする人物像が異なるためです。経営層や各部署から情報収集しつつ、求める人物像を設定する必要があります。
また、採用NGの人物像をあえて定義するのもひとつの手です。採用NGの人物像を設定しておけば、重大なミスマッチも回避できます。
2. 評価する項目を洗い出す
考えられる限りの評価項目を洗い出しましょう。たとえば、志望動機や身だしなみ、チャレンジ精神、行動力、協調性、スキルなどが考えられます。
項目を洗い出したら絞り込みをします。求める人材の評価に直結する項目を残して絞り込みましょう。重視する項目が多く絞り込みが難しいのなら、一次選考と二次選考で項目を分けて使用するということも可能です。
また、項目に優先順位をつけると、面接の質が高まり担当者の負担も軽減します。どの項目を優先するのかは、各部署とも話し合ったうえで決めるとよいでしょう。
3. 要件ごとの評価基準を決める
評価基準は、一般的には3段階や5段階で点数化します。判定しやすい評価基準を設定すれば、面接官ごとの評価のばらつきを減らせるでしょう。各項目の評価基準とあわせて、どのラインへ到達すれば合格とするのかも決めます。
実際にシートを作成するときは、1~3、または1~5までの評価欄を設け、隣にコメントを書き込めるスペースも用意しておくとよいでしょう。数値の評価だけでは、なぜその評価にいたったのか根拠が見えないためです。次の選考を担当する面接担当者としっかり情報共有でき、より精度の高い面接が実現します。
4. 評価項目に即した質問例を作成する
面接のたびに、面接担当者が質問を作成するのは手間がかかるうえに、負担も大きくなってしまいます。面接のスムーズな進行も妨げてしまうため、あらかじめ質問例を作成しておきましょう。
また、面接に慣れていない担当者の場合、何を質問すればよいのか悩んでしまうかもしれません。的外れな質問をしてしまい、人材を正しく見極められない可能性もあります。十分な数の質問例を用意しておけば、慣れていない担当者でも問題なく面接を進められます。
質問例を作成する際には、起点となる質問と、そこから深く掘り下げられる質問を用意しましょう。たとえば、「行動力」の項目であれば、「自身の行動力をアピールできる経験はありますか?」を起点とし、そこから「その経験から何を学べましたか?」や「その行動力を入社後どのように活かしたいと考えていますか?」といった具合に話を掘り下げます。
面接評価シートのテンプレート
面接評価シートは、ExcelやWord、スプレッドシートなどを使えば作成できます。ただ、初めて評価シートを作成する場合、どのような項目を盛り込めばよいのか、どのような書式で作成すればよいのかと悩んでしまうかもしれません。
このようなケースでは、テンプレートの利用がおすすめです。インターネット上には、評価シートのサンプルやテンプレートを紹介しているWebサイトがいくつもあります。それらを参考にすれば、スピーディーに評価シートの作成が可能です。
また、Excelやスプレッドシート上で利用できるテンプレートを、無料で直接ダウンロードできるWebサイトもあります。しかし、無料ダウンロードできるWebサイトは、マルウェアへの感染リスクが少なからずあるため、信頼できるWebサイトかどうかを事前に確認しましょう。
面接評価シートに入れるべき評価項目
面接評価シートに盛り込む項目は、企業によって異なります。ただし、採用のミスマッチを回避し、自社にあった人材を獲得したいのであれば、志望度やスキル、人柄などの評価項目は最低限含めるととよいでしょう。
志望度
応募者の志望度は、重要な評価項目であるため必ず盛り込んでおきましょう。どれほど有能で理想的な人材であっても、志望度が低ければ組織への貢献は期待できません。
内定を出しても辞退されてしまったり、入社後すぐ退社されたりといった事態も想定できます。採用に費やした時間やコストも無駄にしてしまうため、志望度を確認できる項目は必須です。
志望度を測るには、「自社に関する十分な知識があるか」や「志望動機を明確に説明できるか」などの項目設定が有効です。応募者の志望度がどのレベルなのか正確に把握できれば、適切に対応できます。
たとえば、志望度が低いと判断したのなら、採用リソースを無駄に消費しないよう早い段階で不採用とする、志望度を高めてもらえるよう自社の魅力を積極的にアピールする、などの対応が可能です。
スキル
どのようなスキルを有しているかにより、入社後の配置が換わります。また、保有するスキルによっては即戦力としての活躍が期待できるほか、育成方針を定める際の参考にもできます。そのため、面接においては多角的に応募者のスキルを見極めなくてはなりません。
スキルの評価項目としては、ビジネススキルや一般常識、業務スキル、保有資格などが挙げられます。ただ、自己申告によるスキルは、どこまでが真実か判断が難しいところです。そのため、面接時にはスキル保有の裏付けとなる情報を引き出さなくてはなりません。
たとえば、応募者が高度な営業スキルを保有しているとアピールするのであれば、前職における具体的な実績やエピソードを話してもらいましょう。「1日で最大10件の契約をとった」「年間における営業成績がナンバー1だった」などのエピソードがあれば、保有しているスキルの裏付けとできます。
人柄
優れたスキルを有する理想的な人材であっても、人柄が自社にマッチしないと社内に不和が生じかねません。社内にいらぬ波風を立て、職場の雰囲気が悪くなったり、社員の離職を招いたりといった事態も考えられます。周りに影響を及ぼすだけでなく、本人が職場になじめず早期離職してしまう可能性もあります。
このような事態を避けるため、面接時には人柄もしっかりとチェックする必要があります。特に社会人経験がない新卒人材は、スキルや経験が期待できない分、人柄を重視することが多いため、しっかりと見極めましょう。
人柄の評価項目としては、個性や価値観、性格、ストレス耐性などが挙げられます。時間が限られている面接のなかで応募者の人柄を正確に把握するのは困難ですが、会話を通じてどのような人物なのかうまく情報を引き出しましょう。
面接シート作成のポイント・コツ
面接シート作成時には、評価項目が多くなりすぎないよう注意が必要です。また、定義の基準を明確にし、サンプルやテンプレートを使用するときはそのまま使わないようにしましょう。評価シートは新卒と中途採用で分け、定期的に項目を見直すのも大切なポイントです。
評価項目は時間に配慮しながら最低限に絞る
面接で応募者のすべてを把握したいと考えると、評価項目が膨大な数になる可能性があります。あれもこれも聞きたい、と考える気持ちは理解できますが、面接の時間は限られているためおすすめできません。面接担当者にも過度な負担をかけるおそれがあるため、時間を考慮したうえで最低限の数に絞り込みましょう。
面接時間は30~60分程度が目安です。この時間内に収まるように、評価項目の数を調整しましょう。評価項目の数が多すぎると、項目を埋めることが目的になってしまい、評価の精度も低下します。優先的に確認すべき項目を逃してしまうかもしれません。評価の精度を下げないためにも、項目数は最低限に絞る必要があります。
定義の基準を明確にする
評価項目の定義が曖昧では、面接担当者により評価にばらつきが生じます。たとえば「コミュニケーション能力」の定義が「表情を豊かにハキハキとした受け答えができること」なのか、「相手の話や意図を的確に理解してわかりやすく回答できること」なのか、担当者によって認識が異なるかもしれません。そのため、定義の基準は明確にしておかねばなりません。
評価シートの作成者と面接担当者が異なるのなら、事前に話し合う時間を設けましょう。すべての面接担当者が共通認識をもてるように、基準の明確化と言語化を進めます。
既存のサンプルをそのまま使用しない
既存のサンプルやテンプレートを使用すると、作成の手間を省けます。項目や書式を参考にできるため、初めて評価シートを作成するときも重宝できますが、そのまま使用するのはおすすめしません。
なぜなら、サンプルやテンプレートに記載されている項目が、自社の求める人物像にマッチしない可能性があるためです。サンプルの項目は、自社とは別の企業における面接時の評価項目や一般的によくある評価項目を例示してあるため、そのまま使用すると自社にマッチしない人材を採用しかねません。
そのため、サンプルやテンプレートは自社に合うようカスタマイズして使用することをおすすめします。ゼロからフォーマットを作成するのは時間も労力もかかるため、既存のサンプルやテンプレートの使える部分だけうまく利用しましょう。
新卒と中途で評価シートを分ける
新卒採用と中途採用で、同じ評価シートを用いるのはおすすめしません。なぜなら、新卒と中途採用では人材を見極めるポイントが異なるためです。同じシートを利用しても、チェックに使えない項目も出てくるため注意が必要です。一般的に、中途採用の人材には即戦力として活躍できる能力が求められることが多く、過去の経験や実績、保有するスキルなどが重視されます。
一方、新卒人材は社会人としての経験がありません。アルバイト経験がある人材はいるかもしれませんが、即戦力となるビジネススキルや経験などは期待できないため、中途とは異なる評価項目が求められます。新卒の場合は、個性や人柄、性格といった内面的な部分を測るための項目を設定します。
定期的に項目を見直す
評価シートは定期的に見直し、アップデートを行いましょう。なぜなら、自社が理想とする人材がいつまでも同じとは限らないためです。たとえば、事業戦略が大きく転換した場合には、これまでとは異なるスキルを有する人材が必要になるシーンが出てきます。
評価シートのアップデートを怠ってしまうと、古い評価項目を用いて面接を行うことになるため、採用のミスマッチが発生する可能性があります。真に必要な人材を獲得できず、組織の競争力低下も招きかねません。
上記のようなリスクを回避すべく、評価シートの項目を定期的に見直し、必要に応じて修正や追加、削除を行いましょう。
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まとめ
面接評価シートを利用すれば、面接に担当者の主観が入り込むことを回避でき、設定した評価基準に基づく正しい評価が行えます。また、質問項目も盛り込まれているため、担当者がその都度質問を考える必要がなく、不慣れな担当者でも問題なく面接を実施できます。
評価シートを作成する際は、設定する項目数に注意し、既存のサンプルやテンプレートをそのまま流用するのも控えましょう。また、新卒と中途採用でシートを分けて使用するのも大切なポイントです。
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