研修の効果測定方法やツールを紹介! 測定する際のポイントは?

研修は実施するだけでなく、効果が得られているかどうかを測定しなくてはなりません。測定を行わなければ、研修の成果が表れているかわからず、費用や時間を無駄にしてしまう可能性があります。本記事では、研修の効果測定方法や実施する際に覚えておくべきポイントなどについて解説します。

研修の効果測定はなぜ重要なのか

研修の効果測定は、研修の効果がきちんと表れているかどうかを確認するために行います。研修を自社で実施する場合、スケジュール調整や資料の準備など、さまざまな手間と時間コストが発生します。もし、成果につながらない研修を実施し続けていた場合、これらの手間とコストは無駄になってしまうでしょう。

また、望む成果が得られない場合、研修の内容に問題がある可能性も考えられます。このケースでは、目的にマッチした内容になっているか、どう改善すべきかを考える必要があり、研修を実施しておわりにしてはいけません。

研修が役に立っているかどうかを確かめるには、効果測定が必要です。測定の結果、望むような成果を得られていないとわかれば、研修内容の見直しや改善を図れます。なお、研修の目的が違えば測定方法も変わるため、目的や内容にマッチした測定方法を選択しなくてはなりません。

4段階で実施する効果測定の方法

研修の効果測定には、「カークパトリックの4段階評価法」が有効です。1950年代にアメリカの経済学者が提唱した評価法であり、反応・学習・行動・結果の4段階で研修の効果を評価します。

参考:https://www.kirkpatrickpartners.com/the-kirkpatrick-model/

レベル1:反応

反応とは、研修に対する受講者の満足度を指します。満足度の測定により、受講者がどの程度満足してくれたのか、納得できる内容であったかなどを把握できます。

満足度の測定方法としては、アンケート調査が一般的です。研修が終了した後にアンケート調査を実施し、満足度を測定します。質問項目としては、「研修の内容に満足できたか」「内容を正しく理解できたか」「実務に役立つと感じたか」「講師の説明はわかりやすかったか」などが考えられます。

アンケートの結果に基づき、課題や改善点を探りましょう。低評価が多い項目を見直し、改善を図ります。たとえば「実務に役立つと感じたか」との質問に対し、否定的な回答が多いようであれば、研修の担当者は現場へのヒアリングなどを行う必要があります。そして実務を正しく理解し、役立つ研修内容にブラッシュアップしなくてはなりません。

レベル2:学習

レベル2の学習は、受講者の理解度を評価する段階です。研修そのものに満足していても、内容を正しく理解しているとは限りません。内容を理解していなければ実務にも役立てられず、研修に費やした時間やコストも無駄になってしまいます。

レベル2に到達しているかどうかの判断基準は、知識が定着しているかどうかです。学んだ内容をきちんとアウトプットできるのであれば、知識として定着していると判断できます。

測定手法は、理解度テストやロールプレイングなどが一般的です。
理解度テストについては、企業や研修によりテストの回数は異なるものの、研修前のレベルチェック、研修直後の理解度確認、数ヶ月後の定着度確認と3回に渡って行われるケースが多く見受けられます。
また、ロールプレイングについては、研修で学んだ知識に基づき、実際の業務を想定して行うことで理解度を測定できます。

レベル3:行動

レベル3の行動は、受講者の実践度を評価します。研修の内容を頭で理解できていても、実務に活かせるとは限りません。学んだことが正しく実務に活かせているか、どの程度活かされているかを測る必要があります。研修で学んだことを実務のなかできちんと活かせている状態であれば、レベル3に達していると評価できます。

レベル3の測定によく用いられるのは、回顧調査です。本人に対してだけではなく、受講者の同僚や上司、部下などに対しても行う調査であり、インタビューやアンケートを用います。

学んだ内容を業務へ活かせているかどうか、受講者本人に客観的な判断はできません。自分ではできていると感じていても、実際にはできていないケースも考えられます。客観的な評価を行うため、受講者の身近な存在である上司や同僚にもヒアリングし、状況を伝えてもらいましょう。

レベル4:結果

レベル4の結果は、受講者が学んだことを実務に活かし、結果へと反映されているかどうかを評価する段階です。たとえば、研修の目的が「新入社員のビジネスマナー習得」であれば、社員が正しいマナーを身につけ、ビジネスの現場で実践できていればレベル4へ到達したと判断できます。

結果の評価項目は多々考えられるものの、生産性や利益、売上、サービス品質、顧客満足度などを設定するのが一般的です。研修の目的が利益の拡大であれば、実施により利益が増加したことでレベル4へ到達したと評価できます。

研修の効果測定ツール

研修の効果測定ツールとしては、学んだ内容をどの程度理解したかを測る理解度テストをはじめ、社員を対象としたインタビューやアンケート、職場での行動観察、ROI分析などが挙げられます。

理解度テスト

理解度テストは、研修の前後で理解度がどう変化したかを測定するテストです。素晴らしい内容の研修であっても、すべての社員が求める理解度をクリアできるとは限りません。理解度によっては、研修の内容や講師の質などを見直す必要も生じます。

テストは数回に分けるケースが一般的です。研修の前と後、数ヶ月後といった具合です。数回に渡るテストにより、研修前と後でどれくらい理解度が変化しているのか、きちんと学んだ内容が定着しているか、といったことを把握できます。

理解度テスト作成時には、受講者の内容理解と知識定着を確認できるよう工夫しましょう。重要なキーワードを問題文に盛り込む、理解していることを前提とした問題を作成するなどの方法が有効です。

また、受講者へテスト結果をフィードバックするのもよいでしょう。受講者は、学んだ内容をどれくらい理解できているのか客観的に把握でき、モチベーションの維持や向上にもつながります。

インタビュー・アンケート

インタビューやアンケートも、研修の効果測定に有効です。直接本人へ行うインタビューであれば、研修で得られたことや気づいたことを細かくチェックできるメリットがあります。一方で、学んだことを実務に活かせているかどうかは、本人が客観的な評価を行えない可能性があるため、上司や同僚などへのインタビューが有効です。

ただ、インタビューは本人や上司、同僚などと対面形式で行うため、スケジュールの調整が難しい、時間がかかるなどのデメリットが生じます。得られる情報が多く有効性も高いものの、実施が難しい場合にはアンケートで代用するのもひとつの手です。

特にオンラインで実施するアンケートであれば、時間や手間をより削減できます。スケジュール調整も必要なく、期限までに送信してもらえばよいため手軽です。

職場での行動観察

職場での行動観察は、受講者の周りにいる方に受講者の行動を観察してもらい、学んだ内容を実践できているかどうか測定する手法です。受講者を観察するのは、同じ部署で働く上司や同僚、部下などです。

これは受講者の客観的な評価に適した方法です。受講者本人は学んだことを業務へ活かせているつもりでも、実際にはできていないケースもあるでしょう。そこで上司や同僚、部下などが職場における受講者の行動をチェックし、研修内容を活かせているか評価しなければなりません。

観察の結果は、対面や電話によるヒアリングをはじめ、アンケートなどで取得します。上司や同僚から直接ヒアリングすると、具体的かつわかりやすい評価を得られるでしょう。ただ、近くに受講者本人がいると、率直な意見や評価を口に出しにくいため、別の部屋で聴き取るなどの配慮をする必要があります。

ROI分析

ROI分析は、施策の費用対効果を見極める分析手法です。研修に要したコストに対し、どれくらいのリターンを得られたのかを測定します。

多額のコストを費やしたにもかかわらず、ほとんどリターンが得られないとなると、研修の意義が薄れてしまいます。コストを無駄にし続けるおそれもあるため、分析により研修の費用対効果を見極める必要があります。

費用対効果の算出は、「利益÷投資額×100」という計算式を用います。利益の部分は、売上や回数、コストなど数値化できるデータに入れ替えて計算しましょう。また投資額に含まれるものとしては、講師への依頼料や会場の利用料金、会場までの交通費、テキスト代などが挙げられます。

研修の効果測定を行う際の6つのポイント

研修の効果測定を行う際には、目的と評価基準の明確化が大切です。また、測定するタイミングにより結果が大きく変わる可能性があるため、いつ実施するかにも留意しましょう。適切な調査方法を選択する、費用対効果を考慮といったことも覚えておくべきポイントです。

1. 研修の効果測定をする目的を明確にする

研修の効果測定は、設定した目的や目標を達成できたかどうかを判断するために行います。測定の目的が「評価すること」になってしまうと、正確なデータを取得できません。そのため、研修前には目的の設定と明確化を済ませておきましょう。

たとえば、「研修の実施に伴い受講者の行動が変化したか」「研修内容の課題抽出と修正」などの目的が考えられます。いくつも目的や目標を設定すると、正確なデータの取得が難しくなるため、できるだけひとつに絞りましょう。

2. 評価の基準を明確にする

評価基準や項目も明確化しましょう。研修の目的に基づき評価基準を設定することで、より適切な評価を実現できます。

評価項目の設定は、業務評価と能力評価、姿勢評価の3つに分類したうえで行うとよいでしょう。業務評価では、受講者が研修で学んだ内容を活かし、業務でどのような成果を生み出したかを評価します。役立つのは、研修前後における成果を比較する業務目標達成度や、課題を解決できたかどうかを評価する課題目標達成度などの指標です。
能力評価では、受講者の能力を評価します。自らプロジェクトの運営、実行をできるスキルの有無や企画力、課題解決力、リーダーシップなどが代表的な指標です。
姿勢評価では、業務への取り組み方や姿勢などを評価します。規律性や協調性、責任感などの項目が該当します。優れた能力を有する社員であっても、協調性や責任感に欠けコミュニケーション能力も乏しいとなると、組織に不利益をもたらしかねません。そのため、能力以外の部分に関する評価も必要です。

3. 測定のタイミングに注意する

研修の効果を正確に測定するには、実施するタイミングも重要です。研修で学んだ内容を、即座に業務へ活かし結果を出すのは困難です。そのため、基本的には研修から一定の時間を置いて測定を実施します。

また、研修直後のみの測定ではいけません。研修直後は学んだことを覚えている可能性が高く、知識を問うような測定では多くの受講者が学んだ内容をアウトプットできると考えられます。時間の経過とともに覚えた知識も薄れる確率が高いため、研修直後だけでなく一定期間を空けたうえでの測定も必要です。

基本的には、2~3回に分けた実施をおすすめします。たとえば、研修の前と後、2~3ヶ月空けてからの実施といった具合です。研修前後の測定により、受講者がどの程度変化したのかを把握でき、2~3ヶ月後の実施で定着率を把握できます。

学んだ内容を実務に活かせるようになる期間は、人によって大きく異なります。研修内容によっても変化が生じる期間は変わるため、2~3回という回数に固執せず、3ヶ月ごと定期的に実施するなど柔軟な対応が求められます。

4. コントロールグループ(非参加者)との比較を行う

受講者の行動変化が、必ずしも研修のおかげとは限りません。3ヶ月後に行った測定で大きな行動変化が見られたとしても、通常業務のなかで知識や技術を身につけた可能性があります。

仮にそうであれば、研修の意味が見出せません。そのため、受講者本人を評価するだけでなく、研修に参加していない社員との比較も行う必要があります。時間とコストをかけて研修を実施したにもかかわらず、受講者と非参加者のあいだに大きな差異がなければ、研修の内容自体を見直す必要性も生じます。
また、受講者と非参加者とのあいだにどの程度の差異が生じるのかも把握でき、研修の有用性の再確認につながります。

5. 適切な調査方法を選択する

調査方法は、大きく分けて全数調査とサンプリング調査があります。全数調査は、研修の受講者全員を対象に調査する方法であり、サンプリング調査は一部の受講者を対象に行う手法です。

すべての受講者を対象に実施する全数調査は、高精度なデータの取得に有効です。そのため、信頼性の高い調査結果を求めるのなら全数調査が適切と考えられます。一方で、すべての受講者が対象であるため、調査に時間がかかるのがデメリットです。大勢の社員を抱える企業であれば、実施は現実的でないかもしれません。

サンプリング調査は、受講者のなかからランダムに調査対象を抽出し行う手法です。一部の受講者が対象となるため調査に多大な時間を費やす必要がなく、コストも削減できます。できるだけコストをかけたくない、調査対象が多すぎるため全数調査が困難、といったケースで有効です。ただし、あくまで一部のサンプルを対象とする調査であるため、データの正確性は高くありません。

求める結果の精度と調査のコストを秤にかけて、適切な方法を選ぶようにしましょう。

6. 調査の費用対効果を考慮する

調査の実施にあたっては、さまざまなリソースを消費します。自社で実施するのであれば、アンケートの作成やインタビューなどの手間が発生し、外部へ委託するのならアウトソース費用もかかります。

こうした多大なコストと時間、労力を費やしたにもかかわらず、見合った成果を得られない可能性もあるでしょう。そのため、費やすコストに見合ったリターンを得られるのかどうかを、実施前にしっかりと考えなくてはなりません。

まずは調査の実施にあたり、どのようなコストが発生するのか正確に把握する必要があります。スタッフの人件費やテキスト代など、できるだけ細かくピックアップして整理しましょう。

費用対効果が見合わないときは、費用を抑えられないかどうか検討します。たとえば、インタビューではなくオンラインのアンケートにすれば、コストを大幅に削減できるかもしれません。ツールなども活用しつつ、さまざまな工夫をしてみることが大切です。

まとめ

研修の効果測定を行わなければ、研修の成果をきちんと得られているのかどうかわからず、無駄なコストと時間を消費してしまうかもしれません。このようなことが生じないよう、正しい方法で効果測定を実施しましょう。研修の効果測定には、理解度テストやインタビュー・アンケート、職場での行動観察などが有効です。

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