複線型人事制度とは? メリットやデメリット、事例についても紹介

「複線型人事制度」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。企業内に複数のキャリアパスを設けることのできる人事制度です。働き方が多様化するなかで、実際に導入する企業が増えています。本記事では、一体どういった制度であるのかについて、具体的なメリットやデメリットなども紹介しながら解説します。

複線型人事制度とは

働く人々のキャリアに対する考え方や価値観が多様化するなかで、企業における社員の働き方も変化してきました。変化に伴い、複数のなかから自らの意思でキャリアコースを選択することのできる人材マネジメントシステム「複線型人事制度」の必要性が注目されています。
社員はより主体的にキャリア形成を行え、企業にとっても多様な人材を育成できるなどの特徴があります。

複線型人事制度のほかに、単線型人事制度という人材マネジメントシステムも存在します。
単線型人事制度では、昇進や昇格などのキャリアアップの道がひとつのみ、つまり単一である人事制度のことを指します。

係長から課長、課長から部長などのように管理職としてキャリアがアップしていきます。
そのため、単線型人事制度を採用している場合、基本的に他のキャリアパスを選択することはできません。

このような従来の単線型人事制度の場合、多様化する価値観やキャリア観に対応できず、不満を持つ社員が増えてしまいます。
一方、複線型人事制度であれば、社員が自分に適したキャリアコースを選択できるので、主体的なキャリア形成が可能なのです。

企業が事業を行う上で、競合優位性を獲得するためには、企業に貢献できる人材を確保する必要があります。しかし、従来の単線型人事制度ではポストの数が限られているので、昇格しなければ給与がアップしないといった問題が生じます。複線型人事制度では管理職への昇格などのほかにも、高度な能力やスキルを持っている人材を評価できます。複線型の場合、より多様なキャリア形成を受容するので、能力やスキルベースでの評価と親和性が高いからです。
優れた人材の確保や定着を促すためにも、複線型人事制度の導入が重要です。

複線型人事制度のパターン

複線型人事制度のキャリアコースを設定する際には、主に以下の3つのパターンによって分類されます。

・キャリア志向
・職種
・キャリア適正

ここでは、それぞれのパターンの特徴や具体的にどのように分類されているのかを詳しく紹介します。実際にキャリアコースを設定する際の参考にしてみてください。

キャリア志向によるパターン

まずは社員のキャリア志向や意思にもとづいて、コースを設定するケースが挙げられます。
企業に必要な人材の能力や職務を調査し、その目的に合ったキャリア別にコースを設定します。
具体的には勤務地や職務を問わず、幹部を目指す「総合職」や、反対に勤務地や職務を限定する「一般職」、専門的な職務を行う「専能職」などのように分けられます。
このパターンの場合、今後の企業の方向性や成長度合いが左右される可能性が大きいので、慎重に協議をしながら進めます。

職種によるパターン

職種によってコースを設定するケースもあります。このパターンの場合、ひとつの職種や業務に特化した人材を育成可能です。具体的には「マーケティング」「法務」「研究」「企画」などのように扱う分野によって分類します。
ただし、職種を軸に分類した場合、その職種に関するスペシャリストを育成できる一方で、キャリアの転換が難しいといった特徴があります。柔軟性を確保するためには、あらかじめ他のキャリアへの転換もできる方法を設定しておくと良いでしょう。

キャリア適性によるパターン

社員の能力や適性に応じてコースを分類するケースもあります。社員には、業務の内容によって得意不得意があります。そういったことを考慮し、個人の特性を活かせるよう分類します。社員がスキルを発揮しやすく、業務に対するモチベーションを維持しやすい方法です。具体的には、ジェネラリストと呼ばれマネジメントを主に行う「管理職」や、別名スペシャリストであり特定の分野の職務を担う「専門職」、エキスパートとして特定の分野の知識や技術を現場で運用する「専任職」などがあります。

複線型人事制度のメリット

社員の働き方や価値観が多様化するなかで、複線型人事制度はより重要性を増しつつあるマネジメントシステムです。
ここからは、複線型人事制度を採用することで期待できる具体的な効果、メリットについて紹介します。

主には以下の2つが挙げられます。
・社員のモチベーションアップ
・高い専門性を持つ社員の育成が可能

社員のモチベーションアップ

まずは、社員の業務に対するモチベーションが上がる点が挙げられます。
複線型人事制度を導入している場合、社員が自身のキャリアプランやライフスタイルに合わせてコースを選べます。主体的に考え、自身が希望する働き方を実現できれば、業務に対する意欲も上がるでしょう。
また、ライフスタイルを考慮できるキャリアコースであれば、社員の離職率も下がる可能性があります。
社員一人ひとりの意識が高まることで、業務効率がアップし、組織全体の生産性向上にも繋がります。

なお、従来の単線型人事制度の場合、ポジションの数が限定されていました。つまり、企業に対して貢献度の高い人材の数が十分に確保できないという問題が生じやすいのです。
しかし、複線型人事制度では組織への貢献度が高い社員を評価し、登用できる仕組みを設けられます。
その結果、ポスト不足の問題を解消できるほか、従業員の業務へのモチベーション向上を期待できるのです。

高い専門性を持つ社員の育成

専門職や専任職などに分類してキャリア形成を行うことで、社員はその分野に特化したスキルを効率的に習得できます。複線型人事制度を導入しキャリアパスが多くなれば、今まで実現できなかった人材の成長も期待できるでしょう。
社員は自身の価値をより効率よく高められる上、会社としても質の高いスキルを持った人材を育成できるといったメリットがあります。

複線型人事制度のデメリット

新しいシステムを採用するにあたり、注意点を押さえておきたい方もいらっしゃるでしょう。
複線型人事制度のデメリットには以下の2つが挙げられます。

・導入コストがかかる
・評価制度が複雑化する

導入コスト

新しい人事制度を導入することになるため、コースの設定やコースごとの給与体系、評価システム、業務プロセスなどを従来の制度から変更しなければなりません。そのため一定の導入コストや業務が発生するでしょう。
それに伴い、必要となる人材の人件費やシステムの導入費用がかかってしまいます。

また、新しい人事制度を導入する際には、会社内で定着するまでに時間や手間がかかります。
そのため、定着するまでの時間を考慮してスケジュールの調整などを行う必要があります。
必要に応じて、段階ごとに実施範囲を広げる方法を取ることも有効です。
実際に施行することで新たな課題が明確になる場合もあるため、段階ごとに効果を検証し、次の段階に至る際に検証した結果を反映させ、ブラッシュアップしていきましょう。

評価制度の複雑化

複線型人事制度に変更することによって、業務の評価対象が増えるといったデメリットも挙げられます。
従来の単一的な人事制度の場合には、給与基準は基本的に一定ですが、複線型人事制度に変更すると、報酬を与えるタイミングが増加する可能性があります。その結果、人事部門の業務が増えるため、人件費などもそれに比例して増加する恐れがあります。
また、複線型人事制度ではコースによって求められる能力や知識が異なるため、評価制度が画一化できず、従来の評価手法のままでは公平性を保ちにくくなります。それにより社員からの不満の声が上がる可能性もあります。公平かつ公正な評価制度を別途定め、必要に応じて社員へ適切な説明を行う必要があります。

導入方法

つづいて、実際に複線型人事制度を導入する際の流れを確認しておきましょう。自社へ導入する前には、求められる時期に期待される効果が発揮できるよう、おおまかな手順を押さえておくことをおすすめします。
主には以下の流れで導入します。
1.キャリアコースの設定
2.評価制度の設定
3.社員の配置

キャリアコースの設定

まずは社内で必要な人材やポジション、社員の適性などを確認し、適切なコースの設定を行います。

具体的には以下の手順で進めましょう。

1.中長期の事業計画を参考に、人材が必要と思われる事業領域を明確化する
2.その事業領域で必要となる成果や役割を確認し、それに応じてポジションを設定する
3.設定したポジションにおいて、成果を上げるために必要なスキルや専門性、能力などを考える
4.必要と考えられるスキルや専門性、能力などを参考に、最適なキャリアコースを設置する

ここで気をつけたいのは、成果を上げるために必要と考えられるスキルや専門性、能力などを決める際には、社内の有識者を巻き込んで協議することです。
設定したキャリアコースによって会社の方向性が左右されるので、社内の様々な意見を取り入れて決めることが重要だからです。

評価制度の設定

キャリアコースの設定ができたら、それに応じた評価制度や反映先となる給与・賞与を決定しましょう。
まずはコースごとに求められる能力や目標、果たすべき職務内容を確認します。

ここで気をつけておきたいのは、複線型人事制度の場合、コースごとに必要となる要素が異なるため、評価制度もコースごとに柔軟に組み立てる必要がある点です。
業績評価、行動評価、能力評価などを組み合わせ、多角的に処遇を決めましょう。

たとえば、成果に差が出やすいコースである場合、出にくいコースと比較して、賞与の変動を大きくするなどの工夫が必要となります。

企業の処遇についてのメッセージを発信することにもつながるため、柔軟かつ慎重に設定しましょう。

社員の配置

評価制度の設定ができたら、実際に社員を配置していきます。
その際には、社員の希望をしっかりとヒアリングしながら決めていく必要があります。
その他、社員の適性や能力も考慮して、最終的な配置を決定しましょう。

面談などを通して、配置する職種への納得を得ることも重要です。
万が一社員の理解を得られず、希望していない職種へ無理に配置することになれば、業務に対する社員のモチベーションも下がってしまうでしょう。
企業の成長のためには社員の理解や納得を得ることが重要です。社員を配置する段階では、社員にヒアリングをするなどして意見をくみ上げることが求められます。また、組織の要求により意に反した配置が避けられない場合には、報酬面で優遇することなどを含めて検討し、環境を整えるように努めましょう。

複線型人事制度の導入事例

実際に複線型人事制度を導入して成功を収めている企業の具体的な事例について、りそな銀行とJR東日本を取り上げてご紹介します。

りそな銀行の事例

りそな銀行は2021年に複線型人事制度を導入しました。この際、従来の制度では、4つの分野からキャリアコースを選択するという形でした。新たに導入された制度では、19もの分野に分類されており、キャリアコースの選択肢が大幅に広がりました。
分野別のプロ人材の育成やダイバーシティマネジメントの促進が新制度設立の最大の目的とされています。
さらに、りそな銀行では同時に60歳の定年制度を廃止しました。現在では65歳まで自由に退職時期を選ぶことが可能となっており、この施策は複線型人事制度のキャリアコース選択に、より高い自由度を与えられるものであるため、大きな相乗効果を生み出せるものです。

参照:「持続可能な社会の実現に向けて【人事制度】」りそなホールディングス

JR東日本の事例

JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)では女性社員の積極的な採用を行うため、2012年に「グループ経営構想V」を策定しました。
この経営構想のひとつとして、複線型人事制度の導入が行われました。
具体的には、従来の等級制度を廃止したり、人材育成のプロフェッショナルとしての技術専任職、管理職を補佐する主務職が新設されたりしました。これらはいずれも、キャリアコース選択の自由度を拡大するものです。
この新たな経営構想の実践と成功により、2015年にはダイバーシティ経営100選のうちの一社に選ばれるまでになりました。

参照:「 平成26年度ダイバーシティ経営企業100選【東日本旅客鉄道株式会社】」経済産業省

複線型人事制度をサポートする「ラクテス」

複線型人事制度のキャリアコースの分類には「ラクテス」がおすすめです。

「ラクテス」では自社独自の質問項目を設定し、オンライン上で簡単にテストを実施することが可能です。また「ラクテス」の適性チェックテストを活用すれば人材の特性やスキルが定量化されたデータから理解することができ、的確なキャリアコースの分類につなげることができます。

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まとめ

今後多様化する企業のあり方を考えた際に、重要となるのが「複線型人事制度」です。
複線型人事制度を導入すれば、社員自身がキャリアを主体的に築けるため、より効率的に有益な人材を育成できます。実際に複線型人事制度を導入する際には、社員のキャリア志向や能力をしっかり見極め、慎重にキャリアコースを設定する必要があります。ラクテスではキャリアコースごとにテストを作成できるので、実際に社員を配置する際に活用すれば、心強いサポートが得られます。

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