円滑な組織経営のためには、幹部候補の確保や育成が急務です。早い段階から幹部候補生を選抜するうえで、どのような判断基準を設ければよいでしょうか。幹部候補となるべき人材を見極めるために重要なポイントやツールを確認しましょう。
目次
幹部候補とは?
幹部候補とは、組織における幹部の候補となる人です。幹部候補は、将来的に組織の中核に近いポジションに就き、トップに近い立場から重要な意思決定や経営に関わることが期待されます。
企業や組織によって幹部を指す役職は異なり、幹部に求められる人物像やスキルも変わります。一般的には、幹部候補が就くポジションは経営者や中級・上級管理職です。
マネージャーとの違いは経営視点
似ていると思われがちな幹部とマネージャーですが、その業務内容には違いがあります。組織におけるマネージャーが担うのはマネジメントです。業務の管理・維持や、メンバーの業務や意欲のサポートといった仕事に携わります。
幹部が担う仕事は、経営視点から事業の全体像を把握し、戦略や計画を立てることです。幹部は企業を運営し、利益をより大きくするための取り組みをします。
このように、幹部とマネージャーが担う仕事や、求められる資質は異なります。
幹部候補の確保はなぜ必要?
近年は少子高齢化や人手不足が深刻化し、企業において有用な人材を確保することが難しくなりました。
企業では、経営者以外にも経営や経営のサポートを行える人材が必要です。後継者不足で倒産する企業も多くあり、いざという時に経営者に代わって決断できる幹部の存在は欠かせません。しかし、幹部候補の育成や教育はすぐに終わらないため、幹部になり得る幹部候補をできるだけ早く確保し、育成する必要があります。
幹部候補の選定や育成は、組織力の強化や企業の発展に大きな影響を及ぼします。幹部候補を育成すれば企業が直面する課題や不測の事態、後継者不足を解決でき、業績も向上させられるでしょう。
幹部候補を選抜する4つの方法
幹部候補は、さまざまな方法で選抜可能です。大きく分けて、社内から選抜する方法と社外から選抜する方法がありますが、それ以外にも多くの方法があります。企業や状況を鑑みて、選抜方法を選びましょう。代表的な4つの選抜方法の特徴やメリット、注意すべき点について紹介します。
1 . 社内公募
社内公募を通して、幹部となることを希望する人材を会社内部から選べます。
社内公募のメリットのひとつは、自社の要求に沿った人材を見出しやすいことです。社内の人材が応募するため、すでに習得している自社のメソッドや経験、知識を生かしやすい点も特徴です。社員が内部で一定の実績を上げている場合は、選抜の判断材料にできます。
公募に応募する社員は、組織や企業に対する帰属意識や愛社精神も高いでしょう。自ら進んで応募しているために仕事へのモチベーションや向上心が高く、育成しやすい点もメリットとして挙げられます。
社内公募では、求める人材像のほか、必要な能力やスキルといった条件の詳細を記載しましょう。基準を明記すれば、幹部候補になるにはどのような力を伸ばせばよいのかがわかります。昇進への道を示すことによって、現在は公募の水準に達していない社員の意欲も増すでしょう。
2 . 中途採用
中途採用で幹部候補を選抜する企業も多くあります。
中途採用のメリットは、すでに他社で幹部として経験・キャリアを積んでいる人材や、即戦力となる人材を選抜できる点です。
他業種や他企業からの人材を登用することで、自社の社員にはない視点やノウハウを取り入れられます。社員にとっても良い刺激となり、モチベーションの向上にもつながるはずです。
中途採用した幹部候補は、育成にかかる時間を短縮化できます。ただし、入社させた相手が企業独自のやり方になじめない場合、かえって時間がかかります。影響が人間関係に及べば、内部で不和が生じかねません。
幹部として力を発揮するには、知識やスキルだけでなく、その企業の社風や方針に合致した人材を選ぶ必要があります。その人が持つ能力を自社で本当に生かせるのか、採用前にしっかり確認しましょう。
3 . 新卒採用
新卒採用において、幹部候補を見出すことも可能です。「幹部候補採用枠」などで募集することにより、幹部の見込みがある社員を早期に選抜できます。
新卒の幹部候補は、まだどの社風にも染まっていないため、入社した企業になじみやすい点も利点です。通常は入社してキャリアを重ねるうちに幹部候補への道が開けていきますが、幹部候補採用枠を通して採用されることで、早い段階から幹部候補としての教育が可能になります。
人手不足が深刻化する中で、実力主義・成果主義の企業が増えてきました。実力主義とは、年齢や勤続年数ではなく、本人の実績や能力を評価する制度であり、自分が出した成果が収入や評価に反映されます。能力があれば若くとも重要なポジションに就ける、認めてもらえる企業は、有能な人材にとって魅力的に映るでしょう。
うまくいけば有能な人材を他企業に先んじて登用できますが、注意すべき点もあります。募集をかける際には、企業が求める具体的な人物像を提示することです。また、入社後に幹部候補がこなすプログラムや仕事は一般の社員とは異なるため、どのようなスケジュールで行うべきか、事前にしっかりと計画も立てておきましょう。
4 . リファラル採用
近年は、リファラル採用による採用も増えてきました。リファラル採用とは、自社の社員に人材を紹介してもらうシステムです。自社に合いそうな有能な人材を勧誘できれば、知識やノウハウを備えた幹部候補の採用につながります。
リファラル採用の利点は、自社の社員からの推薦であるために企業の社風や方針に合致した人材を選抜できることです。採用される幹部候補としても、入社前から内部に知人がいる状況は心強く感じるでしょう。
さらに、求人広告や転職サイトなどを利用する必要がないため、コストが発生しない点もメリットです。SNSなどのツールを駆使すれば、よりスムーズに紹介できるはずです。
しかし、入社後に事前に抱いていたイメージとのギャップを埋められなかったり、なじめなかったりする場合も考えられます。採用後にもケアやフォローを行う必要があるでしょう。
幹部候補に必要とされるスキルとは?
企業や組織の将来を担う幹部候補は、多様な課題やトラブルに対応して企業を運営し、さらに事業を発展させなければなりません。
幹部候補には他の社員よりも高いレベルが求められ、さまざまなスキルや能力を備えることが要求されます。中でも重要な5つのスキルについて解説します。
課題発見・解決スキル
幹部候補が備えるべきスキルのひとつとして、課題を発見し、解決する力が挙げられます。
課題には、事業や経営において顕在化している問題やトラブルに加えて、現在は明らかになっていない潜在的な問題も含まれます。物事を俯瞰的に見て、企業の発展・成長を妨げている問題を可視化しましょう。
幹部候補には、膨大な情報から必要なものを精査・分析して課題を明らかにする能力が重要です。課題の発見や判断のためには、豊富な知識や情報が必要になります。日々更新される膨大な情報を収集したり、さまざまな分野の知見を得たりして、積極的に学ぶ人材を選びましょう。
幹部になるうえでは、課題を発見する力だけでなく、解決に導く力も必要です。現状を正しく把握し、多面的な角度から問題を考察できる人が向いています。考察を深めて、有効な打開策を生み出し、施策として実行できる能力を備えていることが大切です。
論理的思考力(ロジカルシンキング)
論理的思考力(ロジカルシンキング)もまた、幹部候補にとって重要なスキルのひとつです。
収集した情報を整理して適切なものを選び、論理を組み立てます。論理的思考によって導き出された考えは、前述した課題の解決にも活用できるはずです。
筋道を立てて論理的に思考した情報を明確に提示したり、相手に分かりやすく説明したりする力も必要になります。どのように仕事を進めればよいのか、なぜその仕事が必要なのかについて説得力のある指示や方針を示さなければ、社員は従いません。論理的思考力を高めて誰もが納得できる意見を示すことは、メンバーからの信頼にもつながります。
論理的思考力を鍛えた人材は、幹部候補としてビジネスのあらゆる場面で役立つでしょう。
リーダーシップ
将来、幹部として力を発揮するにはリーダーシップも必須でしょう。メンバーの先頭に立って企業を力強く牽引する力は、リーダーになるうえでとても大切です。
必要とされる指導者の在り方は、企業によってさまざまです。幹部は企業が求めるリーダー像に合った指導者像を目標に掲げて、メンバーとともにさまざまな取り組みや事業を行います。
リーダーシップを発揮するうえで、頼りがいや協調性、諦めない心といった要素も必要です。
メンバーがついていこうと思える、頼もしい人物を幹部候補として育成できれば、互いに信頼し合い、結束できるため、企業としての力も強まるでしょう。
コミュニケーションスキル
ビジネス一般においてのみならず、特に幹部にとって重要なのがコミュニケーションスキルです。社内のメンバーだけでなく、取引先や顧問先の幹部など、さまざまな立場や所属の相手とコミュニケーションをとる必要があります。
それぞれの立場を鑑みながら、問題を解決したり応対したりしなければなりません。相手に応じて柔軟に対応を変えていく力、相手の気持ちを汲み取る力が重要です。
時には自社社員と取引先、現場と経営陣などの間に立ち、意見をヒアリングして双方が納得できる合意を形成することも必要になるでしょう。
業務において能力を発揮することはもちろん、高いコミュニケーションスキルによって円滑な人間関係を築くことは、働きやすい環境づくりにもつながります。働きやすく心地よい職場環境を作ることが、人材の流用を防ぎ、定着率の向上をもたらすための第一歩です。
起業家的精神(アントレプレナーシップ)
幹部候補には、起業家的精神(アントレプレナーシップ)も必要です。
経営陣は、事業が停滞した時、危機に陥った時には重要な決断を迫られます。場合によってはリスクのある選択をしなければなりません。リスクが生じた際に自分が責任を負う覚悟を持ち、新しいことに挑戦する姿勢も大切です。
危機が迫った時に動揺せず、大局を見据えて冷静に判断できる精神面の強靭さも必要でしょう。指示を受けてから動くのではなく、幹部候補には自ら状況を判断して適切な対応をする力、行動力が求められます。
さらに、停滞する状況の突破口となり得る、画期的なイノベーションをもたらす発想力や創造性も重要です。考え付いたことを実現可能な案に落とし込み、具体的な計画を立てて実行する力に優れている人は、良い幹部になるでしょう。
幹部候補を見極めるときのポイント
幹部候補は、多くの資質や適性が要求されるポジションです。幹部候補の見極めにあたり、どのようなポイントに目を向ければよいのでしょうか。
ロールモデルを基準にする
ポイントのひとつは、ロールモデルを基準にすることです。ロールモデルとは、考え方や行動の指標・模範となる人物を指します。企業におけるロールモデルは、メンバーの理想像、手本となるべき人物と考えられます。
まずは、企業においてどのような人物が幹部にふさわしいのかを明らかにしましょう。必ずしもすべての能力やスキルを備える必要はなく、企業にとって、もっとも備えてほしい資質や適性は何かという視点から考えるのが妥当です。どのような仕事やキャリアを望むのか、細部に至るまで具体的に決めましょう。
企業の方針や特徴、特色が反映されたロールモデルを設定することで、多くの社員が目標にしやすくなり、モチベーションも向上するはずです。
幹部候補を選抜する際は、設定したロールモデルに合う人物かどうかを判断基準に据えましょう。
まずは社内公募から行う
幹部候補を選抜するにあたり、社内公募は行いやすい方法でしょう。社内公募では社員が自主的に応募するため、高い意欲を保つことができ、育成もしやすいからです。さらに、普段の業務への姿勢や仕事の出来、人間性やキャリアへの考え方など、多くの判断材料を用いて評価できます。
これは中途採用、新卒採用の人材を幹部候補として見極める場合と異なる、社内公募ならではの利点と捉えられます。
勉強会や交流会など人材発掘の機会を設ける
幹部候補を見つける方法として、人材を発掘する機会を利用するのも有効です。勉強会やセミナーには、特定のトピックスや領域に興味・関心がある人が参加します。勉強会や交流会、セミナーなどを開催すれば、他社や他領域の有能な人材を見つけられるかもしれません。
交流するうちに親しくなれば、自社の幹部候補として勧誘できる可能性が生じます。目当ての人物が現在転職を考えていなくとも、勧誘を重ねるうちに考えが変わるかもしれません。
ただ、人材確保の機会を設けたとしても、すぐに幹部候補の確保や採用につながるわけでない点は押さえておきましょう。さまざまな角度からその人物が幹部としてふさわしいかを評価し、勧誘には長期的に取り組むことをおすすめします。
幹部候補選抜後の育成はどう行う?
幹部候補を選抜した後は、長い時間や労力をかけて幹部を育成しなければなりません。多くの企業が幹部候補の育成に取り組んでいますが、必ずしも成功するわけではありません。
幹部候補の育成のためには、どのようなポイントを押さえたり、取り組みをしたりすればよいのでしょうか。
まずは将来像を示す
幹部候補として選抜されたものの、目指すべき将来像が明確でなければ意味がありません。
まずは、企業側が幹部候補にロールモデルなどの将来像を示しましょう。そのうえで、成長して自分がどうなりたいのか、何をしたいのかについて明確なビジョンを持つことが大切です。
幹部候補の育成には長い時間が必要です。幹部候補本人のモチベーション維持のためにも、将来像に食い違いが生じないように、適宜すり合わせを行いましょう。幹部と幹部候補が交流する機会を設けるといった方法も有効です。幹部候補が自分のレベルを自覚でき、目指すべき姿をより具体的にイメージできます。
フォロー体制を構築する
幹部候補がストレスなく取り組めるような環境も必要です。幹部候補には大きな期待がかけられますが、それはプレッシャーの増大につながります。幹部候補としての取り組みは長期にわたるため、すぐに成果が出ない場合もあるでしょう。短期的な成果を出せないことを重く受け止めたり、無理をしたりしないような体制を整える必要があります。
具体的には、定期的にストレスチェックやカウンセリングを実施することが考えられます。気軽に社員が相談できる部門や窓口を設けることも効果的です。企業側が配慮して、精神面、健康面のケアを怠らないことが重要になるでしょう。
定期的なフィードバック面談を行う
幹部候補生に学ばせるだけでなく、定期的にフィードバック面談を行うなどして状況を確認しましょう。トレーニングや研修の結果、幹部候補生がどこまで目標を達成できているのか、何が不足しているのかを明らかにすることが大切です。
進捗状況や成果が適切に評価されれば、モチベーションを向上させられますし、やりがいにもつながります。
こまめにフィードバック面談を行うことで精神的にも安定し、モチベーションを維持できます。
まとめ
幹部候補は社内公募や中途・新卒採用、リファラル採用などを通して選抜できます。
幹部候補には課題の発見スキル、論理的思考力やリーダーシップをはじめとする資質が必要であり、社内公募や勉強会などを通して人材を見出しましょう。幹部候補を育成するためには、定期的な面談やフォロー体制の構築なども必要です。
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