「筆記試験を導入すると候補者の辞退率が上がってしまうのではないか…」多くの採用担当者が抱えるこの懸念は、一方で「面接だけでは基礎力や適性を正しく見極めにくい」という課題とも表裏一体です。そこでカギになるのが、辞退を招かないためのテスト設計や実施タイミングの工夫です。ここでは、基礎力を重視する新卒採用や、専門性を問う中途採用のケースなどを交えながら、候補者の心理に配慮した筆記試験の方法を紹介します。
目次
質と量のバランスが崩れる理由と、辞退リスクの背景
「筆記試験を課すと離脱者が増える」といわれる主な理由には、試験が長時間にわたることや、難易度の高さへの不安、そして“何を測っているのかよく分からない”という評価基準の不透明さが挙げられます。特に新卒では他社との併願で忙しいため、負担感のある選考フローを敬遠しがちです。一方で、中途採用の専門職では「これまでの実務経験で評価してほしいのに、いまさら筆記試験?」と思われるケースもあるでしょう。
しかし、面接だけで採用を進めると面接官の主観に頼ることになり、入社後のミスマッチや早期離職につながりやすいです。筆記試験は、客観的な指標を導入するうえで有効な手段ですが、導入によって母集団が減少してしまう可能性もあるため、テストの内容・形式・タイミングを最適化し、辞退リスクを最小限に抑えることが欠かせません。
候補者数を維持しながら筆記試験での辞退を防ぐ方法
テスト設計で心理的ハードルを下げる
ビジネスに近い範囲・難易度に絞る
大学受験レベルの問題や過度な知識を問う問題は、候補者の負担感を高め、離脱を誘発しがちです。社会人が日常的に使う数的処理や論理思考、あるいは業務に直結しやすいリテラシーにフォーカスすることで、候補者が問題を見たときに「これは実務に関係がある」「意味のあるテストだ」と感じてもらえるような設計にすることが必要です。
また、新卒採用では基礎力やポテンシャル重視の問題を中心として、中途・専門職では実務に近い専門知識を確認するための応用問題に比重を置くなど、候補者に求める経験やスキルに応じて難易度を調整するのがポイントです。
問題数を抑えることやオンライン化で負担を軽減
出題を10~20問程度にして、所要時間を20~30分など、候補者の負荷を減らすためにコンパクトにするだけでも辞退リスクは下がります。また、自宅からも受験できるようにすれば、移動や日程調整の手間を減らせるため、候補者が「やってみよう」と思いやすくなるでしょう。
テストの所要時間、制限時間の考え方は以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
採用試験(筆記)における制限時間の設定方法 目安の分数と考え方
サンプル問題や出題範囲の開示で不安を取り除く
「どんな問題が出るか分からない」ことが筆記試験への大きなハードルになります。事前にサンプル問題もしくは出題範囲を提示し、レベル感や形式がわかるようにすると、敷居が下がって辞退を防ぎやすくなります。
絞り込みのためのテストとワークサンプルテスト:タイミングと所要時間
絞り込みのテストは一次面接の前後で
まず候補者を絞り込むための基礎能力などのテストを行う場合、実施のタイミングとしては一次面接前か後のどちらかが一般的です。一次面接前に行えば、応募者数が多い場合に面接に入る前に効率よく絞り込みでき、面接の数を減らすことに繋がります。
一方で、一次面接の直後にあわせて実施する方法もあります。辞退する人が減るというメリットがあります。面接とまとめて実施することで候補者の手間や負担は減る反面、採用担当者の業務負荷が増えるデメリットもあります。
ワークサンプルは最終面接前に行うのが一般的
専門性や実務力をチェックするためのワークサンプルテストは、マーケティング戦略のプレゼンテーションやエンジニア向けの設計についての課題など、実際の業務に近い課題を与える形式をとります。
会社によっては準備や作業に4~8時間程度かかるようなボリュームで実施することもあります。負担が大きいため、事前に面接でしっかり働く場としての魅力を伝えておき、候補者が「ここで働きたいから、このテストをやってみよう」と納得できる状態にしておくことが必要です。
もし離脱されてしまったとしても、高度な専門性を要するポジションならある程度仕方ないと考え、むしろ「そこまでコミットできる人」かどうかの見極めができたと前向きに捉えられるくらい丁寧にワークサンプルの設計や候補者への説明をしましょう。なぜワークサンプルを実施するのかという意味付けをしっかり伝えるのがポイントです。
テスト時間と難易度の目安
筆記試験は上限60分が基準
基礎力重視のテストや足切り目的のテストなら、10~20問で20~30分程度、長めでも30問・60分以内に収めることが多いようです。試験がこれ以上長くなると候補者に大きなプレッシャーを与えやすく、併願している他社との比較で回避される可能性が高まります。
ワークサンプルは面接時に実施するタイプと締切日までに提出してもらうタイプがある
レポート執筆や資料作成のテストなどは、どうしても長時間を要します。特に管理職や上級ポジションを想定するほど、課題の範囲が広がるため、締切日時だけ設けて、自由に時間を使ってもらって作業する形式になります。日中現職で働いている人に4~8時間ほどかかるような重めの課題を出すことはかなりハードルが高いですが、高度なスキルや考え方を見るのに効果的です。
一方で、面接と同時に30分~60分程度時間をとり、その場で作業してもらい、その後ディスカッションするような形式のワークサンプルの実施方法もあります。
事前に「重めのワークサンプルテストがある」ことを伝え、締切の日程を柔軟に相談できる形にすると、離脱が幾分抑えられるでしょう。
企業規模と母集団形成による選択
母集団が多い場合:早期に基礎力テストを導入
知名度の高い人気企業など、採用予定数に対して応募がはるかに多い場合は、一次面接前後に絞り込みテストを入れて、候補者を減らすことが多いです。面接時間を圧縮できるうえ、専門性まで求めない範囲の“実務的な基礎力”を確認できるため、効率よく選考を進められます。
母集団が少ない場合:後半で精度を上げるテストを実施
逆に応募数が十分に集まっていない場合や希少な専門人材を探している場合には、早期に筆記試験を入れると貴重な候補者が離脱する恐れがあります。そのため、ある程度面接で人柄やモチベーションを確認したうえで、中盤~最終段階でミスマッチを減らすためにテストを行う形が効果的です。
データとPDCAでテストを最適化
点数で合否を明確に決めるパターンと参考情報にとどめるパターン
筆記テストの結果を基準点で切るやり方は、客観性や公平感がある反面、面接前に落とす候補者が増えやすいリスクもあります。逆に「スコアはあくまで参考で、面接とあわせて総合判断する」方法は柔軟さがある半面、線引きが曖昧になりがちです。どちらの方法でも、入社後の活躍や早期離職率をチェックしつつ、テスト内容・難易度を調整するPDCAサイクルを回すことが欠かせません。
ゲーミフィケーションやAIを活用した新しい形
近年、ゲーム感覚で楽しめる適性検査やAIスコアリングが脚光を浴びています。こうした取り組みは「面白そう」「先進的」と感じる候補者を呼び込み、母集団が増える効果も期待できます。と同時に、ゲーム型テストは心理的ハードルを下げる利点があるため、従来の筆記試験よりも離脱率が低くなる可能性もあります。
筆記試験実施後のフォローとブラッシュアップ
所要時間・難易度の定期的な検証
実際にテストを導入してみたら、辞退率が思った以上に高かった、あるいは合格率が極端に低かった、といった事象が起こるかもしれません。その場合は、設問数や試験時間を減らす、難易度を下げるなどの対策を講じ、どの程度改善したかをデータで追う必要があります。
入社後の活躍とテスト結果の相関を見る
仮に合格率が高くなっていても、入社後のパフォーマンスや定着率が低いという現象も起こり得ます。テストのスコアと入社後の実績を照合し、「どの問題・評価軸が活躍度と相関しているのか」を分析することで、翌年度以降の問題形式や評価基準をさらに最適化できます。
受験者体験の向上
筆記試験を「面倒」「高い負担」と感じさせるか、「必要性が納得でき、効率的に受験できる」と感じさせるかで離脱率は大きく変わります。サンプル問題やガイドブックの提供、画面の操作性に対する配慮など、受験者のストレス要因を減らす工夫は小さな積み重ねが効いてきます。
まとめ:テスト内容・時間・実施時期を最適化し、辞退リスクを抑えながら採用精度を上げる
筆記試験がもたらす候補者離脱を防ぐには、「求めるスキルに応じた難易度調整」と「適切な実施タイミング」の工夫が欠かせません。新卒・中途、それぞれで求める能力は異なるため、絞り込み目的の基礎力テストを一次面接の前後どちらかで行い、高度なワークサンプルテストは最終面接手前で実施する、という二段構えが一般的です。さらに、オンライン化やサンプル問題の提示などでハードルを下げ、面接時に企業の魅力づけをしっかり行うことで、長時間のワークサンプルテストも「やってみる価値がある」と感じてもらえる可能性が高まります。
テスト導入後も、辞退率や合格率、入社後の活躍度合いなどの指標を追いながら問題の難易度や設問数を柔軟に調整していけば、母集団を減らさずに選考の質を維持できるでしょう。最終的には、テスト後のデータを分析しながら定期的に内容をアップデートし、合格ラインや所要時間を微調整するPDCAサイクルを回すことが、辞退を最小限に抑えつつ、高い選考精度を実現するうえでの重要なステップです。
ラクテスを活用すれば、“負担の少ないテスト設計”もかんたんに
筆記試験やワークサンプルテストを導入したいけれど、問題作成やオンラインシステムの構築に時間をかけられない、という企業も少なくありません。そこで、「かんたんに筆記試験を作成・運用できるシステム」として生まれたのがラクテスです。数多くの企業事例から蓄積されたノウハウをもとに、さまざまなサンプルテストを用意しているため、自社にあった基礎能力や専門性などをしっかり測れるテストをスピーディーに作成・運用できます。
複数の評価基準を一括管理
新卒向けの基礎力テストや、中途・専門職向けの高度な応用問題まで、一つのシステム上で組み合わせや難易度調整が可能です。
オンライン受験とフィードバック機能
候補者は好きな場所・時間で受験でき、テスト終了後には簡易レポートなどを返すことも可能。離脱リスクの低減につながります。
導入後のPDCAサイクルを回しやすい設計
問題を簡単に差し替えすることができるため、データに基づいて試験内容を手軽に改善できます。スコアや合格率などのデータはクラウドに蓄積されていくため、それらを分析することで問題や評価基準をアップデートしやすい仕組みが整っています。
もし「採用試験の導入による辞退リスク」を懸念されているなら、ぜひラクテスの機能や事例をチェックし、候補者にやさしい試験設計と企業の選考精度アップを同時に目指してみてはいかがでしょうか。面接だけでは拾いきれない“基礎力”や“適性”を可視化しながら、母集団を減らさずに採用の質を高められる可能性が広がります。