HRBPとは? 人事との違いや役割・導入方法をわかりやすく解説

近年、事業環境変化のスピードが加速していることに起因して、人事の組織体制を変更してHRBPを導入する企業が増えています。本記事では導入を検討している担当者や経営者に向け、HRBPの役割や仕事内容、導入方法や企業にもたらす効果などを解説します。

HRBP (HRビジネスパートナー)とは?

HRBP(Human Resources Business Partner)は企業の人事機能に関する用語のひとつで、様々な問題への素早い、的確な対応が必要とされる現代において注目を集めています。HRBPの概要や求められる背景について詳しく解説します。

HRBPの意味

HRBPは、ビジネススクール教授、デーブ・ウルリッチ氏の著書「MBAの人材戦略」(原題:Human Resource Champions)において、人事部門が果たす4つの役割のうちのひとつとしてHRBPを挙げています。彼は、「人事は単なる事務処理部門ではなく、経営者の意思決定に影響を与えるような機能であるべき」としています。デーブ・ウルリッチ氏の概念を基にすると、HRBPは、企業における事業部門の経営者や責任者とともに、事業成長を「人」と「組織」の両面からサポートする役割を担っています。

業種によって企業活動の内容が異なることはあるものの、HRBPの役割は企業の経営課題や目標達成に対する適切なサポートです。具体的には、採用活動やそれぞれの年代別に必要な研修を多角的に設計し実施するなど、「人」と「組織」に関連した部分から企業をサポートします。

HRBPと人事の違い

HRBPと人事部門は、一見その違いが判別しにくいですが、業務内容を確認すると明確な違いがあります。人事部門の業務は、主に人材採用や労務管理などです。「採用」「教育」「労務」など従業員ごとに担当業務が割り振られているのがほとんどです。そのため、経営層のイメージする経営戦略を踏まえた人事戦略を、それぞれの担当を横断して策定するのが難しい状況にあります。

一方で、HRBPでは経営者の視点に立ち、人事マネジメントに経営戦略を組み込みます。従来の人事業務の概念にとらわれることなく、企業の事業成長を目的として「新たな価値」を創造・提供できる点がHRBPと人事部門の大きな違いです。

HRBPが求められる背景

現代社会は、不確実で複雑な状況が渦巻くVUCA(ブーカ)の時代です。IT技術が日々進化し、働き方改革や感染病対策の一環でテレワーク化が大きく進展するなど、人事やHR(人的資源)の領域においても意思決定にスピード感が求められるようになっています。そのため、海外では一般的であった人材の流動が日本でも活発化し始めたことで、年功序列や終身雇用といった日本の伝統的な雇用制度や既存のキャリアパスは崩壊しつつある状況です。

また、日本では今後さらなる少子高齢化が進むことによって、すべての業種において人材確保がますます困難になると予測されます。したがって、企業が優秀な人材を確保し、持続的な成長を遂げるためには、時代の変化に合わせた魅力ある人事制度を整備する必要があります。こういった背景から、注目を浴び始めたのがHRBPの導入です。経営において重要な「資源」である人材を経営戦略と関連付け、HRBPを活用していく企業が増えています。

HRBPの役割

企業におけるHRBPの役割をどう捉え、どう具現化していけば効果を最大化させられるのでしょうか。HRBPは大きく3つの役割を担っていると考えられます。

経営戦略を踏まえた人事戦略を立案する

まずは、「経営戦略を踏まえた人事戦略の立案」を行うことです。人事戦略を立案する上で、経営目標を達成することと人事マネジメントには深い関係性があります。HRBPは、経営層のビジネスパートナーとして、組織作りの側面から人事戦略を立案し、企業の事業成長をサポートします。つまり、経営目標を達成するために必要な人材はどういった経験やスキルを持つべきか、現状の資源(人材や組織体制など)で不足はないかなどを判断していきます。そのためには、企業が目指す方向性や抱える課題などを経営者により近い視点で理解する必要があるのに加え、幅広い視野から客観的に自社を評価することが重要です。

人事制度や人事施策の管理

次に、「人事制度や人事施策の管理」が挙げられます。HRBPは人事戦略の立案に携わるのと同時に、人事・労務管理の専門家として、経営目標の達成に向けて、より生産性の高い人事制度や施策を実施する必要があります。この場合、HRBPは人事・労務の実作業を担当するのではなく、制度の改善や新しい施策の提案、不要な施策の切り捨てなどの整備・管理を担います。

経営層と従業員の仲立ち

HRBPは「経営層と従業員の仲立ち」も行います。経営目標の達成に関連付けた人事戦略を立案しても、その内容が現場で働く従業員の実情に即していなければ意味がありません。特に大企業の場合は、経営層の考え方や意向を現場の従業員にダイレクトに浸透させるのが難しいため、認識のズレが生じないように、HRBPが経営層と従業員の橋渡し役を担うことが求められます。

そのため、HRBPは日常的に現場の情報を収集し、必要に応じて従業員の代表として経営者に現場の声や意見を伝える役割も期待されます。同時に、従業員に経営層の考え方や意向を分かりやすく伝えることも必要です。組織を一体化するためには、こういった役割を担う人材が重要です。

HRBPに必要なスキル

HRBPは企業にとって、時代の流れに対応し持続的に成長するために重要な存在ですが、人事だけではなく経営全般に関する知識やビジネススキルも必要です。ここでは、HRBPに求められるスキルを紹介します。

自社ビジネスに関する知識

当然ですが、「自社ビジネスに関する知識」は必要不可欠です。HRBPは経営層のパートナーとして、人事に関する知識や経験はもちろんのこと、他業種のビジネスに関する知識が必要なこともあります。しかし、まずは自社ビジネスに関する知識や市場の状況などへの理解が最も重要です。さらに、自社ルールや独自の企業文化を加味した現状理解や戦略立案が必要です。したがって、自社ビジネスの現状や独自文化も学び、その知見をベースにして業務を行う能力が求められます。

課題分析能力

「課題分析能力」も重要です。HRBPとして質の高い人事戦略を立案・実行したり、人事制度の改善などを提案したりするには、企業の抱える課題を発見・分析し、最善の解決プロセスを構築するスキルが必須です。特に必要とされるのは、人事戦略の全体像を把握した上でさまざまな観点から物事を考えられるスキルです。そのためには、既存の形にとらわれない柔軟な考え方も必要です。

例えば、製造業の現場部門において、現場リーダーの成り手が不足しているという課題があると仮定します。この場合、適した人材を配置できているか、必要な研修が不足していないか、OJTなどの教育制度に問題はないのかなど、多角的な面から課題解決に向けた分析を行い、その企業に合った解決策とプロセスを提示します。

コミュニケーションスキル

「コミュニケーションスキル」も欠かせません。HRBPは現場で従業員一人ひとりの声を拾い、その内容を経営者や人事担当者にフィードバックを行う役割があるため、プレゼンテーション力や交渉力といったコミュニケーションスキルが必要です。また、従業員と経営者、どちらの立場とも良好な関係を築き信頼を構築しておく必要があります。しかし、一方の立場との距離が近すぎると、他方の不信感につながるリスクもあるため、お互いとの適度なバランスを取るという絶妙な感覚も重要です。

変革できるリーダーシップ

「変革できるリーダーシップ」も求められます。組織変革には、ほぼ必ずそれを牽引するリーダーが登場します。HRBPは、日常的にさまざま部門の関係者と合意形成を図る必要があるため、意見がまとまらない場面が多発することが予想されます。そういった場合には関係者の利害関係を把握し、ほどほどで折り合いをつける必要があります。組織の前線に立って従業員を目標達成に導くリーダーシップも重要ですが、会議や議論の場でバランスを取り、うまく意見をまとめ上げるリーダーシップスキルは、組織変革に必要不可欠です。

人事領域における幅広い知見

「人事領域における幅広い知見」は、経営戦略の視点に立った人事戦略を立案する上で欠かすことのできないものです。基本的な組織論に加え、人的資源の管理論や労働法、労務管理に関する詳しい知識が必要なのはもちろんのこと、組織開発や組織心理学など専門性の高い分野も理解しておく必要があります。

HRBPの導入方法

HRBP導入における注意点と導入の手順を解説します。

導入の目的を明確にする

初めに導入の目的を明確にします。「管理職を希望する従業員が少ない」、「従業員に経営目標が浸透しておらず生産性が向上しない」などの課題を、HRBP導入によって解決するなど、導入目的を明確にします。その際、今後の人事戦略も併せて検討しておくことが重要です。最も危険なのが「他社がやっているから自社でもさっそく導入しよう」といった「目的のない模倣」です。HRBPによって何を実現したいのかを明確にしましょう。

戦略実行の体制を検討する

次に「現行の人事部体制でよいのか、それとも部門にHRBPが必要なのか」を検討します。その結果、人事部へのHRBP導入が決まったら、策定した戦略を実行するための体制を検討します。HRBPを担う従業員(もしくは外部のパートナー)には、問題解決に専念してもらうためにBPO(一部業務の外注)やオペレーション業務を行う部署と切り離すなど、自社に適した方法で工夫しましょう。

部分的に運用する

戦略実行の体制が決まったら実際に運用をスタートしますが、いきなり体制や業務が変更されると多くの従業員が困惑してしまうというリスクがあります。したがって、運用は部分的に実施していき、スタート直後はHRBPの存在を組織全体に浸透させることを優先させます。

従業員にHRBPの存在と意義を少しずつ把握してもらい、信頼関係を構築できてきたら課題解決に向けて動き出すなど、段階を踏んで運用していくことがおすすめです。初めのうちは小さな課題から対応し、徐々に経営目標を達成するための動きに切り替えていくなど、効果的な運用となるよう心がけましょう。

問題解決能力を高める

運用が安定してきたら、HRBPの問題解決能力を高めるための施策を実施していきます。問題解決能力を高めるためには、基礎的な人的資源管理の理論を理解することに加え、労務管理から人材開発に至る幅広い人事に関する専門知識を身につける必要があります。これらの知識やスキルは、担当者が単独で学習するのが難しい場合もあるため、教材を用意したり養成講座や研修に参加させたりするなど、組織全体でバックアップすることが重要です。

HRBP導入のポイント

HRBPがより効果的に企業貢献できるよう、導入時に知っておきたい2つのポイントを紹介します。

専任のHRBPを置く

まずは、「専任のHRBPを置くこと」が大事です。HRBPの業務は人事部門のみならず、経営目標を達成するために様々な部門と密に連携を取りながら進めていく必要があります。そのため、その業務難易度が高く業務量も多いのが特徴です。したがって、人事や労務の管理に関する業務からは切り離し、専任のHRBPを置くのが理想です。

事業に対する理解を深めるための機会を設ける

「事業に対する理解を深めるための機会を設けること」も必要です。ビジネスを取り巻く環境は常に変化しており、スピードも増しています。定期的に事業環境についてアップデートする機会を設け、現状を理解してもらうことが大事です。

特にHRBPは人事領域のみならず、ビジネス領域にも精通する必要があるため、その重要性は計り知れません。そのため、学習教材を用いた座学や研修に参加することに加え、営業に同行してクライアントを訪問したり現場の定例会に参加したりするなど、様々な立場にある方々の声に触れ、事業への理解を深める機会を積極的に作る必要があります。

HRBPと一緒に「ラクテス」で事業成長をサポートしよう

企業の事業成長を目指した人事マネジメントを行うHRBPの導入に伴い、企業のオリジナルのテストが簡単に作成できる「ラクテス」を活用することをおすすめします。

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「ラクテス」の適性チェックテストを用いることで、面接だけでは見極めることのできない適性を可視化でき、企業が実際に必要としている人材の採用に役立てられます。またそれだけでなく、入社後も適材適所の人事配置や効果的な人材育成に活用することができ、HRBPが行う人事マネジメントに役立てることができるでしょう。

無料プランもございますので、まずは以下のURLから新規登録をして、是非お試し下さい。https://rakutesu.com/form/

まとめ

HRBPは、現代社会の不確実で複雑な状況が渦巻くVUCA(ブーカ)の時代において、人事の観点から企業の事業成長を促します。また、経営目標の達成に向けて人事制度や人事施策の管理・運営を行い、さらには人事戦略を立案するなど、様々な役割が期待されています。

HRBPには課題解決能力やリーダーシップ、ビジネスに関する幅広い知見など多くのスキルも求められます。企業は導入目的を明確にした上で、今後の経営戦略や事業成長のために、まずはスモールスタートでHRBPを導入してみてはいかがでしょうか。

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