ITSS(ITスキル標準)とは? 7段階のレベルと11の職種

ITSSは、IT人材のスキルを測る指標として活用できます。また、自社でITのスペシャリストを育成したい際にも、ITSSを評価基準として用いることが可能です。本記事では、ITSSの概要やレベル、設定されている職種などについて解説します。

ITSSとは

ITSSとはITスキル標準のこと

ITSSとは、IT Skill Standardの略であり、日本語ではITスキル標準と訳されます。高度なIT人材の育成を目的として、2002年に経済産業省が策定しました。

ITSSは、IT分野における11の職種と35の専門分野に分類され、7段階のスキルレベルが設定されています。この基準は、マーケティングやセールス、コンサルティングなどのITエンジニアに必要とされるスキルを明確に示しています。ITSSは、企業や教育機関におけるトレーニングの際に指標として活用されています。

ITSS策定の目的と背景

IT産業の発展は著しく、現在では今までに存在しなかった多くのITサービスが普及しています。この進化に伴い、IT関連のビジネスを営む企業は、高度なIT知識とスキルを持つ人材をますます必要としています。

国も、IT人材の確保や育成に積極的な姿勢を見せています。国家戦略の一部としてIT領域で活躍できる人材の育成を掲げており、その一環としてITSSが導入されました。IT人材を効率的に育成するには、その人の現在の知識とスキルを正確に評価することが不可欠です。その役割を果たすのがITSSなのです。

ITSSの職種は11種類

ITSSでは、IT領域の職種を以下の11種類に分類しています。

【1】マーケティング

マーケティングは、商品やサービスを売るための仕組みづくりが主な業務です。IT系エンジニアが他マーケティングを担当する場合、ITツールやデジタル技術を駆使して市場や消費者のニーズを分析し、企画・戦略立案などを行います。

この分野には、以下のような専門分野があります。

  • マーケティングマネジメント:具体的な戦略を組み立てる
  • マーケットコミュニケーション:プロモーションやアプローチの考案
  • 販売チャネル戦略:使用する販売チャネルや販売するアイテムの選定

【2】セールス

セールスは、顧客に商品やサービスを販売する仕事です。顧客の問題を解決する方法をプレゼンテーションし、成約につなげることが目標です。

この分野には、以下のような専門分野があります。どの分野も、顧客分析やマネジメント、プロジェクトマネジメントのスキルが必要です。

  • メディア利用型セールス: メディアを活用して商品やサービスを提案する
  • 訪問型製品セールス: 顧客を訪問し、製品の販売を行う
  • 訪問型コンサルティングセールス: 顧客に対してコンサルティングサービスを提供し、成約に導く

【3】コンサルタント

コンサルタントは、高度なIT知識に基づいてコンサルティングサービスを提供します。たとえば、クライアント企業がITに関する投資を検討する際にアドバイスを行う役割があります。

この分野には、以下のような専門分野が存在します。

  • ビジネス変革(Business Transformation): 企業のビジネスプロセスを改善し、効率化するためのアドバイスを行う
  • パッケージ適合性評価と運用:既存のソフトウェアパッケージが企業のニーズに合っているか評価し、適切に運用する方法を提案
  • IT戦略の策定:クライアントのIT戦略を立案し、実行に向けた計画を作成

これらの職種に共通するスキルには、知的資産の管理と活用、プロジェクトマネジメント、コミュニケーション、コンサルティングなどが挙げられます。

【4】ITアーキテクト

ITアーキテクトは、クライアント企業のビジネス課題を解決し、目的を達成するためのITシステムの設計を担当します。この分野には、以下の専門分野があります。

  • アプリケーションアーキテクチャ: 課題の分析と機能要件の再構築を通じて、ITアプリケーションの設計を行う
  • インテグレーションアーキテクチャ: 複数のシステムを統合し、連携要件を再構築する
  • インフラストラクチャアーキテクチャ:ビジネス課題の分析に基づいて、システムの基盤要件を再構築する

【5】プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトが成功裏に完了するよう、開始から終了までの管理を担当します。品質・納期・コストなどをコントロールし、必要に応じてリソースの追加や再分配などを行います。

システム開発・ネットワークサービス・ソフトウェア製品開発・ITアウトソーシングなど、さまざまな専門分野があります。プロジェクトの各段階に合わせた適切なマネジメントスキルが求められます。

【6】ITスペシャリスト

ITスペシャリストは、高度な専門知識と技術を駆使し、顧客に最適なシステム基盤を構築します。プラットフォーム・データベース・ネットワーク・システム管理・アプリケーション共通基盤・セキュリティの6つの専門分野が存在します。クライアント企業が求める最適なシステム基盤を構築するために、テクノロジーやソフトウェアエンジニアリングなどのスキルだけでなく、コンサルティング能力も必要です。

【7】アプリケーションスペシャリスト

アプリケーションスペシャリストは、アプリケーションの設計から開発、導入、保守まで、全体の流れを管理する職種です。専門分野には、業務環境や業務アプリケーションの設計を担当する業務システム構築や、業務パッケージの適用設計やパフォーマンスチューニングを行う業務パッケージ適用などが含まれます。アプリケーションに関するスペシャリストであるため、高度で専門的で多岐にわたるスキルが必要です。テクノロジー、業務分析、知的資産管理、デザインなど、広範なスキルセットが求められます。

【8】ソフトウェアデベロップメント

ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウェアの企画、設計、開発から戦略立案、コンサルティングまでを担当する職種です。基本ソフト、ミドルソフト、応用ソフトなどの専門分野があります。製品の開発に関わったソフトウェアの実効性、機能性、信頼性に責任を負うため、高度な専門性と広範なスキルが必要です。ソフトウェアエンジニアリング、テクノロジー、プロジェクトマネジメントなどのスキルが求められます。

【9】カスタマーサービス

カスタマーサービスは、ハードウェアやソフトウェアの導入から修理、保守までを担当する職種です。自社製品やサービスを購入した顧客との対応が主要な業務です。専門分野には、ハードウェア、ソフトウェア、ファシリティマネジメントの3つがあります。システムの保守管理、最新のIT市場動向やインターネット技術に関する知識、プロジェクトの成功に向けた能力などが求められます。

【10】ITサービスマネジメント

ITサービスマネジメントは、構築されたシステムが安定して稼働するように管理する職種です。運用管理、システム管理、オペレーション、サービスデスクの4つの専門分野が存在します。サービスレベルの向上を実現するために、情報収集力や分析力が必要です。また、システムの適切な運用、リスクマネジメント能力なども求められます。

【11】エデュケーション

エデュケーションは、IT人材の育成を担当する職業です。企業や実務に必要なスキルを教育するための研修カリキュラム設計や実施を担当します。専門分野には、ニーズに合った研修計画の企画や評価を行う研修企画、研修の開発とインストラクションを担当するインストラクションが含まれます。

ITSS(IT Skill Standard)では、スキルの評価を7つのレベルで行います。これらのレベルは、過去の職務経験、技術の習熟度、情報処理技術者試験の合格などを基に評価されます。

たとえば、レベル1では、情報技術について最低限の基礎知識を持つことが求められます。一方、最高のレベルであるレベル7は、高度な専門知識とプロとしてのスキルを有し、国際的に通用するエキスパートであることを示します。

ITSSのスキルマップ

ITSSのスキルマップは、職種と専門分野を横軸、スキルのレベルを縦軸に配置し、各職種および専門分野でのスキル習熟度を示しています。また、それに関連する認定試験や資格も関連付けられています。このスキルマップは、ITのキャリアパスを計画したり、企業における人材戦略を立案する際に非常に役立ちます。

具体的な評価や認定試験・資格の関連性は、ITSSのキャリアフレームワークとして提供されており、キャリアの成長やスキルの向上に向けたガイドとして利用できます。この情報は、IT分野での職業発展やスキル向上に関心のある個人や企業にとって貴重なリソースとなるでしょう。

参考:ITSSのキャリアフレームワークと認定試験・資格とのマップ Ver12(2022年11月発表)

ITSS+(プラス)とは

ITSS+は「学び直しの指針」

ITSS+は、新たなITスキルの基準であり、「学び直しの指針」として位置づけられています。この枠組みは、データサイエンス、アジャイル開発、IoT、セキュリティなど、第4次産業革命に向けたIT人材の強化と育成を目的として策定されました。急速に変化するテクノロジー環境に適応し、成長し続けるために、データサイエンスやアジャイル開発などの分野を学び直し、スキルを向上させることが重要です。ITSS+を活用することで、将来のIT環境においても成功し続けるITプロフェッショナルとしての成長が期待されます。

データサイエンス領域

データサイエンスは、プログラミング、統計学、数学などを活用してデータを分析し、有用な洞察を得る学問です。ITSS+では、膨大なデータの分析と活用に必要なスキルやタスクが整理されています。インターネットの普及により、企業が扱うデータ量は急増しており、AIやビッグデータの価値と重要性が高まっています。そのため、データサイエンス領域はITSS+に取り入れられ、この分野に必要なスキルや知識を整理し、指針として提供しています。

アジャイル領域

アジャイル開発は、ソフトウェアやシステム開発におけるプロセスを小さなサイクルで繰り返し、効率的にリリースする手法です。現在、アジャイル開発は主流となっており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に不可欠な開発手法とされています。

アジャイル開発の重要性が高まった一方で、正しい理解が進んでいないケースも多く見られます。そのため、ITSS+はアジャイル領域を整理し、この開発手法に必要なスキルと知識に関する指針を提供することで、ITプロフェッショナルがアジャイル開発を効果的に活用できるようにサポートしています。

IoTソリューション領域

もともと、ITSS+におけるIoTソリューション領域は、省力化やコスト削減などの「守り」のITスキルとして定義されていました。しかしIoTの普及により、新たな顧客価値を創出するプロダクト開発など「攻め」のIT領域へと拡大していきました。この変化を受けて、2021年には新たなスキルが追加されました。IoT領域では、デバイスのインターネット接続、データ収集・分析、センサー技術、IoTプラットフォームの選定など、多岐にわたるスキルが求められています。

セキュリティ領域

サイバー攻撃の脅威は年々巧妙化しており、企業や組織はその対象となる可能性が増加しています。このため、企業は従来以上に堅牢なセキュリティ環境を構築する必要があり、セキュリティ関連の業務とスキルについて整理されました。セキュリティ領域では、脆弱性管理、侵入検知、セキュリティポリシーの策定、リスク評価などが重要なスキルとなります。

さらに、他部門から学び直しを通じてセキュリティ領域の知識とスキルを習得し、セキュリティの専門家として活躍することが期待されています。セキュリティ領域はますます重要性が高まっており、企業や組織はセキュリティ対策に注力しています。

ITSSやITSS+を企業に導入するときの注意点

ITSSやITSS+は、人材採用や育成に有効な指標であるものの、ただ導入するだけでは効果が得られません。成功するためには、具体的な目標を設定し、計画的で持続可能な運用がポイントです。

導入の目的を明確化する

ITSSやITSS+を、何のために導入するのか目的を明確にしましょう。ITSSは、従業員の評価やスキル向上のために使用されることがあります。そのため組織内で目的を明確にし、従業員に周知徹底することが重要です。

ITSSを活用するには、従業員の協力が必要です。従業員が目的や重要性を理解し、協力してくれるようになるためには、明確な目標の設定が不可欠です。目的がはっきりしていなければ、ITSSの導入は効果的ではありません。

計画的、継続的に運用する

ITSSやITSS+を導入しても、短期的なプロジェクトとして終わらせてしまうと、望む成果を得ることが難しいです。これらの指標は、計画的で持続可能な運用が成功の鍵です。

持続的な運用を実現するために、運用フローを明確に計画しましょう。これにより、中長期的に従業員のスキルや成長を正確に評価できます。また、人材育成に活用する場合は、育成方針を策定し、経営戦略に基づいて実施しましょう。理想と現状のギャップを把握でき、従業員の成長に役立ちます。

従業員のスキルを測るには、ラクテスの活用がおすすめ

従業員のスキルを簡単に評価したい場合、オンラインテスト作成ツール「ラクテス」の活用がおすすめです。ラクテスは、人材のスキルを可視化するためのツールで、スキルチェックテストを簡単に作成・実施できます。欲しいスキルが明確であれば、ラクテスのスキルチェックテストを活用してみてください。

たとえば、ITSSに基づいて求めるスキルを明示し、それに基づいた研修を行います。しかし、研修だけでは従業員が実際の業務でスキルをどれだけ活かせるかは分かりません。ここでラクテスのスキルチェックテストが役立ちます。研修で学んだ知識やスキルの定着度を確認でき、さらにスキルの可視化も可能です。

ラクテスを使えば、研修の振り返りやスキルの定着度を測定するテストを簡単に作成できます。用意されているテンプレートを利用することで手間を減らし、テストを受けるためのURLを対象者に提供するだけで測定ができます。職種適性チェックテスト、論理的思考、プログラミング、ビジネス基礎など、多彩なテストが用意されており、幅広いスキル領域を評価できるのが特長です。

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まとめ

高度IT人材の育成を目的に策定されたITSSは、11の職種と35の専門分野に分類され、それぞれ必要なスキルが整理されています。導入し成果を得るには、あらかじめ目的を明確にし、計画的かつ継続的に運用しなくてはなりません。

計測したいスキルが明確になっているのなら、「ラクテス」の活用がおすすめです。手軽に有用なスキルチェックテストを作成、実施できるため、ぜひ活用してみましょう。

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