ストレスチェックの項目数とは? 23・57・80・120項目版の違いを解説

平成27年12月施行の改正労働安全法により、50人以上の従業員を擁する事業場では、ストレスチェックの実施が義務付けられています。この規定に従い、多くの企業がストレスチェックを導入しています。ストレスチェックには、23項目、57項目、80項目、および120項目の4つの種類があります。この記事では、各項目数の特徴や実施のポイントなどについて詳しく解説します。ストレスチェックの実施を検討している企業の皆様は参考にしてください。

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、従業員の現在のストレスレベルを評価するために行われる調査です。従業員は選択式のストレスチェックシートに回答し、その回答をまとめ、分析することによって、ストレスの程度を評価します。

厚生労働省が発表した「令和3年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によれば、令和2年11月1日から令和3年10月31日までの1年間において、メンタルヘルスの不調により1か月以上の休業や退職が発生した労働者の割合は、全体の10.1%にのぼりました。これは、前年度の9.2%から上昇した数字であり、メンタルヘルスの課題が一層顕在化していることを示しています。

参照:「令和3年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」

従業員のメンタルヘルスは、企業の業績に大きな影響を及ぼします。独立行政法人経済産業研究所が公表した論文によれば、メンタル不調で休職や退職をした従業員の割合と、ROS(売上高利益率)との相関関係を調査した結果、メンタル不調を抱える従業員が多い事業場ほど、業績が低下する傾向があります。この研究から、従業員のメンタルヘルスを管理することは、企業の安定性を維持するためにも極めて重要であることが明らかです。

参照:「労働者のメンタル不調は企業業績を悪化させるか? ― 企業パネルデータを用いた検証 ―」

ストレスチェックの目的

事業場のメンタルヘルス対策は「未然防止と健康推進」「早期発見と対処」「治療・復帰・再発予防」の3つの段階に分かれています。このうちストレスチェックは一次予防の未然防止を目的としています。

ストレスチェックは従業員が抱えるストレスを企業側が把握するだけでなく、従業員自身が気付くためにも非常に有効です。早期に対策を行えば、うつ病などのメンタル不調を予防できる可能性が高くなります。

さらに仕事量や就業時間、組織形態の改善などにより働きやすい環境を作ることは、離職率を低下させ、最終的には生産性の向上にもつながります。

ストレスチェック調査票の種類

ストレス調査票は、質問項目数によって23項目版、57項目版、80項目版、120項目版の4種類に分かれています。以下にそれぞれの特徴について詳しく紹介します。

23項目版

厚生労働省が推奨しているのは57項目版ですが、それを簡略化したものが23項目版です。質問数は少ないものの、従業員のストレス状況に関する最低限の把握は可能です。

チェックに時間がかからないため、回答を得られやすいのがメリットですが、労働環境改善に役立てるには項目数が不十分かもしれません。50人以下の小規模事業場で試しに利用する場合や、複数の改善案の効果を比較するために簡易でチェックしたい場合などに適しています。

23項目版の内容は、以下のURLから閲覧できます。

職業性ストレス簡易調査票(簡略版23項目):厚生労働省

57項目版

57項目版は厚生労働省が推奨している調査票で、「職業性ストレス簡易調査票」とも呼ばれています。所要時間が5~10分程度と短いので従業員からの回答も得やすく、新たにストレスチェックの導入を検討している企業にはおすすめです。

採用している企業が多いため統計情報も充実しており、同業他社との比較も行いやすいでしょう。ただ、個人のストレス状況の把握が目的なので職場環境に関する質問はなく、職場で改善すべき点が分かりづらいのがデメリットです。

57項目では、個人ごとの点数を算出することで「高ストレス者」を選定することが可能です。算定方法は、以下のサイトを参考にしてください。

数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法:厚生労働省

ここで高ストレス者と判定された場合、医師と面接して、適切な指導や措置につなげることが望ましいとされています。

また、より詳しくストレス状況を把握するには、57項目版をベースに事業場に合わせた質問項目を追加するとよいでしょう。57項目版の内容については、以下のサイトで閲覧できます。

職業性ストレス簡易調査票(57項目):厚生労働省

80項目版

57項目版に、東京大学大学院医学系研究科・川上教授のチームが作成した「新職業性ストレス簡易調査票」の「推奨尺度セット短縮版(23項目)」を追加した調査票です。追加の23項目は、仕事の負担や上司・経営層との関係などを問うものです。

回答の所要時間は10~15分程度で、23項版や57項目版よりは時間がかかりますが、職場環境に関する質問が豊富なため、職場で従業員がどのようなストレスを抱えているか把握しやすくなっています。職場環境改善に積極的に取り組みたいと考える企業に適しています。

80項目版の内容については、以下のURLから閲覧できます。

職業性ストレス簡易調査票(80項目版):厚生労働省

120項目版

57項目版に「推奨尺度セット標準版(63項目)」を加えた完全版です。回答には時間がかかりますが、より詳細に職場環境のストレス状況を把握したい場合に120項目版は適しています。特に部署単位や企業単位でメンタルヘルスの状況を把握・分析したい場合は、この120項目版がおすすめです。

120項目版の内容は、以下で公開されています。

新職業性ストレス簡易調査票について(PDF):厚生労働科学研究成果データベース (MHLW GRANTS SYSTEM)

ストレスチェック調査票の選び方

ストレスチェックの調査票を選ぶにあたっては、従業員のストレス状況についてどの程度詳しく知りたいか、また職場環境の改善にどの程度積極的に取り組んでいきたいかの2点について、明確にすることが重要です。

とりあえずお試しで調査を導入したい場合は、23項目版から始めてもよいでしょう。一方、職場環境を改善するため、課題を明確に把握したいなら57項目以上の版を選ぶ必要があります。

以下は、ストレスチェック調査票の項目数ごとの特徴をまとめた一覧表です。

23項目57項目80項目120項目
事業規模従業員50人未満従業員50人~100人前後従業員100~300人前後従業員300人以上
計測目的法令への最低限の対応・お試しでの導入ストレスの原因となる職場環境の要因を把握し、改善につなげるネガティブな要因を取り除くだけでなく、モチベーションの高いチームを把握し、職場環境の向上につなげる従業員のストレスや仕事へのポジティブな関わりについて、部署や事業所レベルで把握する
回答に要する
時間(目安)
5分未満5~10分10~15分20分
集団分析不可

集団分析とは、部署やチームごとに結果を集計・分析し、集団ごとのストレス状況の傾向を明らかにするものです。職場環境の改善に取り組みたいなら、集団分析に対応しているものを選ぶとよいでしょう。

従業員のメンタル不調の深刻化を防ぐには、高ストレス者を早期に医師の面談につなげることが重要です。同時に職場環境の改善に取り組み、ストレス軽減に努める必要もあります。そのためには自社に合った調査票を用いて、従業員のストレス状況を正確に把握しましょう。

ストレスチェック項目に含めるべき3領域

ストレスチェックの項目には、法に基づき、「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」の3つの領域を含める必要があります。以下にそれぞれの領域について詳しく解説します。

仕事のストレス要因について

職場で心理的負担となっている原因について問う項目です。「非常にたくさんの仕事をしなければならない」といった仕事量を問う質問や、「からだを大変よく使う仕事だ」といった身体的負荷を問う質問、 「私の職場の雰囲気は友好的である」といった人間関係に関する質問などが並びます。照明の明るさや適切な換気などの物理的な環境に関する質問も含まれます。

参照:職業性ストレス簡易調査票(57項目):厚生労働省

心身のストレス反応について

職場でのストレスが原因で心身にどのような影響が出ているか、自覚症状を問います。

57項目版では「最近 1 か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください」という質問があり、「元気がいっぱいだ」「イライラしている」などの各項目に回答していきます。回答は「ほとんどなかった」や「ときどきあった」など4段階に分かれているので、現在の状態に一番近いものにチェックを入れます。

参照:職業性ストレス簡易調査票(57項目):厚生労働省

周囲のサポートについて

3つ目の領域では、上司や同僚といった周囲の人からどのぐらい支援を受けられているかを調査します。

57項目版では「上司や同僚、家族や友人とどのくらい気軽に話ができるか」、「困った時に、上司や同僚、家族や友人はどのくらい頼りになるか」といった質問が並びます。

参照:職業性ストレス簡易調査票(57項目):厚生労働省

チェック項目に含めるべきではない項目

ストレスチェックはあくまで従業員のストレス状況を把握するためのものです。ストレス以外のことを評価する項目は含めるべきではありません。特に自社で独自の項目を追加する場合、質問の目的とずれていないか留意する必要があるでしょう。

ここからは、どのような質問がストレスチェックの項目としてふさわしくないか、詳しく解説します。

性格検査のための項目

ストレスチェックは性格検査や適性検査を目的としたものではありません。最近、適性検査でストレス耐性を測る企業もありますが、そうした質問になっていないか注意しましょう。

例えば「ストレスに耐えきれないと感じたことはあったか」、「ストレス解消方法を持っているか」などは、ストレス状況ではなく、本人のストレス耐性を測る質問になります。労働安全衛生法に基づいたストレスチェックと言いながら、実際は性格検査や適性検査になっていないか、充分確認した上で調査を進めましょう。

希死念慮・ 自傷行為に関する項目

「死にたいと思うことがある」、「自傷行為を行っている」といった、希死念慮・自傷行為に関する質問も項目には含めないようにしましょう。

ストレスチェックの目的はどちらかと言えば個人のストレス軽減より、集団分析によって職場環境のストレス要因を抽出し、改善することにあります。

希死念慮や自傷行為などデリケートな精神状態に対しては、専門的かつ早急な対応が求められます。カウンセラーがいるなど整った環境がある企業なら別ですが、ストレスチェックを始めたばかりのような、体制の整っていない企業が自殺のリスクを把握したとしても、適切な対応ができる可能性は低いでしょう。

また、プライバシーの観点からも踏み込みすぎと捉えられる可能性があり、回答に拒否反応を示す従業員が増える懸念もあります。

うつ病検査のための項目

ストレスチェックは、うつ病などの精神疾患をスクリーニングするための検査ではありません。寝つきや食欲、体重の増減や死について詳しく問うような項目は、うつ病のチェックになってしまうので注意しましょう。

ストレスチェックでは本人の不調の内容について詳しく問うのではなく、職場の環境について詳しく問う項目を設定することが重要です。

ストレスチェックを実施する際のポイント

最後に自社でスムーズにストレスチェックを行うために、留意したいポイントについて説明します。

回答・分析がしやすいツールを利用する

改正労働安全衛生法では、事業場へのストレスチェックが義務付けられている一方、従業員の受験・回答は義務付けられていません。たとえ受験を拒否したとしても、人事評価で不利益を被ることがあってはならないとされています。

しかし、ストレスチェックではなるべく多くの従業員から回答を得て、結果を分析することが重要です。分析により職場環境の改善すべき点を洗い出すことで、従業員全体のメンタルヘルス向上につながります。

そのためにはストレスチェックの実施方法も、できるだけ従業員の負担にならないやり方で行うべきです。従業員の手間と回答から得られる効果のバランスを考えた上で、各事業場に適した項目数を選びましょう。

また、得られた結果から迅速に職場環境の改善につなげるためには、結果を分析しやすいツールを選ぶことも重要です。

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また、得られた回答はExcel形式でエクスポートできるので、集計や分析もスムーズです。本格的にストレスチェックテストの導入を検討している企業の方は、ぜひラクテスをご活用ください。

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まとめ

社内のストレス状況を把握し、適切な職場環境の改善につなげるためには、自社に合ったストレスチェックの実施が有効です。ストレスチェックや車内アンケートの作成・実施には、結果をエクセルデータでダウンロードできる「ラクテス」がおすすめです。ストレスチェックで健全な職場環境作りに取り組みたい企業の方は、ぜひ導入をご検討ください。

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