人材育成のフレームワークとその効果的な活用方法について紹介

業務の効率化によく用いられるフレームワークは、人材育成にも活用できます。フレームワークは様々な種類があるため、それぞれの特徴を理解して取り入れることで高い効果を発揮します。一方で使い方を誤るとかえって非効率になるなど、注意すべき点もあります。
本記事では、フレームワークの概要や種類をはじめ、利用するメリットや導入する際の注意点について詳しく解説するので、ぜひ参考にして下さい。

人材育成におけるフレームワークの必要性

フレームワークとは、業務の手順や考え方について、決まった枠組みを意味する言葉です。様々な種類のフレームワークが考案されていて、代表例としては「5W1H」や「PDCAサイクル」があります。
フレームワークは、数々の事業者や研究者によって培われてきたノウハウを一般化した手法であり、適切に当てはめればゼロベースで方法論を検討するよりも手間が少なく、かつ高い確率で事業を成功に導けます。

直接的に事業へかかわる活動だけでなく、人材育成の分野においてもフレームワークは有効です。人材育成では、企業にとって望ましい能力を持つ人材を育てることが求められます。どのような人材がふさわしいか、ある人材に対してどのような教育が有効か、といった議論をする段階から、フレームワークの活用を検討しましょう。

そもそも人材育成の目的とは

そもそも企業という組織体が持つ本来の目的は継続的な利益の創出です。組織は人によって成り立つため、人材育成は企業の目的実現に密接なかかわりがあります。
人材育成の目的としては、主に「中長期的な経営目標の達成」、「社員のスキルとモチベーションアップ」の2つが挙げられます。
長期的・継続的に企業が成長するためには、利益の向上はもちろん、社員のモチベーション維持も重要な要素です。

中長期的な経営目標の達成

企業が経営目標を策定し、それに向けた事業活動を行う際には、人的リソースの考慮が欠かせません。人材育成を通じて企業が求めるスキルを従業員が身に付けることは、経営目標の達成のために重要な要素です。

例えば、経営目標として期間内での店舗数拡大を設定した場合、単純にリソースが不足していると達成できません。一方で、決められた店舗数で一軒につき既定の管理能力を持つ人材を必ず一人以上配置する必要があるならば、開店までの期間でどのような人材を何名確保すればよいかは明確です。
フレームワークによって精度の高い人材育成を前提とする戦略を遂行できれば、現状では達成不可能な高い目標でも、高確率で実現が見込めます。なお、人材の必要数と確保する数が同一であるなど、冗長性に欠けた計画は想定外の状況で破綻しやすいため、過信は禁物です。
また、人材育成を目標達成の手段とするためには、十分な育成期間を確保する必要があります。そのため、中長期的な目標において効果を発揮する手法です。

社員のスキルとモチベーションアップ

人材育成は目標達成だけでなく、社員のスキルとモチベーションの向上につなげることも目的として意識しましょう。
育成を通じて社員一人ひとりが新たなスキルを習得して一人当たりの生産性が向上すれば、組織全体の生産性が向上し、ひいては企業の成長に繋がります。

社員のスキルが向上すると、業務で新しい着眼点を見つけたり、フローの改善ができるようになります。また、自社の業務内容について幅広く教育することで、自身の役割が全体の中でどう機能しているかを体系的に理解できます。これにより、ほかの役割との連携を自発的に行えるようになるなど、業務の改善が進みます。
また、スキルの獲得やそれによる生産性の向上を上司や経営者が認め、高い評価を与えることで、さらなるスキルの研鑽や業務改善へのモチベーションが高まるでしょう。

人材育成におけるフレームワーク

人材育成で有効なフレームワークとしては、「70:20:10フレームワーク」、「カッツ理論」、「SMARTの法則」、「カークパトリックモデル」、「思考の6段階モデル」が挙げられます。
それぞれの特長を理解し、教育の目的や各社員の特性にあった手法を選定しましょう。

70:20:10フレームワーク

70:20:10フレームワークとは、アメリカのミロンガー社が唱えた手法です。
ミロンガー社はアンケート調査を実施して、リーダーシップを発揮するためには何が必要かを聞き取りました。結果は以下の通りです。

仕事の経験:70%
他社からの薫陶:20%
研修:10%

ここから、上記3つの要素がリーダーシップに不可欠であり、またその中でも優劣があることが提示されています。
人材育成においては、日々の仕事にコミットすることが最重要であり、その上で同僚や上司、部下との良好な関係性を築き、スキルや知識を身に付けるための研修が効果を発揮することが分かります。
経験を重視する点から、先輩や上司とともに実際の業務に就いて指導するOJT(On the Job Training)を実施する企業において有効なフレームワークです。

カッツ理論

カッツ理論とは、1955年にロバート・カッツによって提唱されたモデルです。このモデルでは、職種にかかわらず「テクニカルスキル(専門能力)」「ヒューマンスキル(対人能力)」「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」という3つのスキルが重要であることが提示されています。
また、「ロワーマネジメント(下級管理職)」「ミドルマネジメント(中間管理職)」「トップマネジメント(経営職層)」の3つの階層でそれぞれ重視すべきスキルの比率が異なるとされます。
一般社員や下級管理職は実務的な専門能力が必要とされますが、職層が上がるごとに対人能力や概念化能力の重要度が増していきます。
人材に応じてどのスキルを磨くべきかを検討する際に有効なフレームワークです。

SMARTの法則

SMARTの法則は、1981年にジョージ・T・ドランが提唱した目標設定法です。
SMARTとは、以下の言葉の頭文字から取られています。

Specific(明確性)
Measurable(計量性)
Achievable(達成可能性)
Realistic(関連性)
Time-bound(期限設定)

目標設定において、これらの要素がひとつでも欠けると精度が損なわれます。各項目が具体的で分かりやすく、多くの状況で取り入れやすいため、目標の妥当性を検討する際に広く用いられています。
人材育成においては、対象者に応じて細かく項目を設定することで、スキル向上の達成目標を明確化できます。

カークパトリックモデル

カークパトリックモデルとは、アメリカのカークパトリックが発表した理論です。このモデルは教育を以下の4つの段階に分け、その効果を測定します。

レベル1:反応
レベル2:学習
レベル3:行動
レベル4:結果

レベル1では、行った研修に対する満足度を測定します。レベル2では研修に対する理解度を、レベル3では研修を受けた結果行動がどう変わるか、レベル4では最終的に業績へどう影響したか図っていきます。
このモデルの利点は、研修の費用対効果を定量的に算出できるという点にあります。

思考の6段階モデル

思考の6段階モデルは、ベンジャミン・ブルーム博士が提唱したモデルです。思考を6つの段階に分け、段階ごとに思考力を高める訓練を行うことを目的としています。
段階はそれぞれ、「知識」「理解」「応用」「分析」「結合」「評価」に分けられます。ビジネスのみならず人間の成長にはこの段階に沿って学ぶことが必要とされ、人材育成に当てはめることで、効率的な成長が期待できるでしょう。

HPI (Human Performance Improvement)

HPIとは、Human Performance Improvementの略称で、人材のパフォーマンス改善と訳されます。
このモデルは、人材の理想的な姿と現状のパフォーマンスとの差を見つけ出し、その差を生み出す原因を探ります。さらに改善に向けて打ち出すべき施策を検討・選択・実行し、最終的に結果を評価するまでを包括的に実行する方法です。

人材育成のフレームワークを活用するメリット

フレームワークを導入するメリットとしては、主に「効率的な人材育成が可能」「一定の質の人材育成が可能」の2点が挙げられます。

効率的な人材育成が可能

人材育成は、ゼロベースで検討すると自由度が高く、そのせいで何から着手すべきかが判断しにくくなります。まず型を決めるフレームワークであれば、手法の妥当性を検討しやすく、計画立案がスムーズです。
また実際に取り組む際にも、手順に従って効率よく進められるメリットがあります。

一定の質の人材育成が可能

前述の通り、フレームワークは導入から最終的な評価に至るまでの手順化が可能です。やむを得ず育成担当者が変更になった場合でも、採用した手順通りであれば状況が把握しやすく、最終目標を見失うことがありません。
また、上司が個人の裁量で育成する場合と比べ、フレームワークを活用した人材育成は再現性を確保でき、一貫した品質で対象者それぞれに適切な教育を施すことができます。
このような一貫性は、マネジメント層だけでなく、研修を受ける従業員にとってもメリットです。研修の目標や、そのために何を学ぶべきかを常に意識できるので、学習効率が向上し、組織への信頼も得られます。

人材育成におけるフレームワークの効果的な活用方法


フレームワークを導入する際には、人材育成で目指す目標に適した手法を選定する必要があります。また、実践とフィードバックを繰り返すことで、より効果的な活用が可能です。

目標に適したフレームワークを選定する

フレームワークを活用するためには、まず適切な手法を選ぶことが重要です。設定した目標に対し用いるフレームワークを誤れば、満足な結果は得られません。

フレームワークを選ぶ前に「中長期的な企業の成長にとって理想的な人材像」を明確に定めましょう。前述の通り、人材育成の目的は会社の将来的な成長を達成することであり、フレームワークは効率的な人材育成を行うための手段です。
このポイントを意識せず実験的にフレームワークを実践しても、育成の品質が安定せず、かえって現場の混乱を招く恐れがあります。まずは会社の目指す姿から望ましい人材層を逆算し、育成に適切なフレームワークを選択しましょう。

実践とフィードバックを繰り返す

フレームワークを選択したらそれで終わりではありません。フレームワークはあくまで手法を参考にするための大枠であり、企業にとって最適なものにするためには継続的に実践と改善を繰り返していく必要があります。

十分なプランを練ってフレームワークを導入しても、十全に望んだ効果が得られることはまれです。計画と実践を比較すれば、必ず想定外の不具合や副次的な効果が生じます。そのため、導入後には効果を検証して不具合を見つけ出し、素早く改善することが必要です。また、思いがけず良好な結果が得られた場合には、再現できるようフィードバックを得て把握し、手法としての確立に努めましょう。

フレームワークは一般化された手法という性質上、組織ごとに抱える限定的で特殊な状況に対応できません。最初から正解を狙うのではなく実践の中で経験を集積し、対応力を強化しましょう。

自社の傾向に合わせてアレンジする

フレームワークは必ずしも既存の型どおりに使う必要はありません。前述のようにフレームワークを導入したら、何度も実践と修正を繰り返すことが大切です。その過程で、自社に適した手法の発見を目指しましょう。

そのためには「Why」「What」「How」を意識すると良いでしょう。これに沿って「導入の理由」「何を達成するのか」「方法や手順は適切か」の観点から手順を修正します。フレームワーク自体が目的と化していないか、企業の中長期的な成長を見据えた方法になっているかを常にチェックしましょう。

人材育成のフレームワークを活用する際の注意点

人材育成においてフレームワークを活用する際には、「短期的な効果を求めすぎない」「フレームワークにこだわりすぎない」の2点に注意が必要です。

短期的な効果を求めすぎない

人材育成に短期的な効果を求めてはいけません。フレームワークを導入しても、スキルを獲得し、さらに業務で効果を発揮するまでには長い期間がかかります。
例えば、一定の業績向上を年間目標で掲げた場合、その達成手段として人材育成を適切に評価するのは困難です。基本的に教育コストがかかる一方で育成担当者の生産性が低下するなど、短いスパンで業績へのプラスの影響は見られません。そのため、人材教育を新たに開始して前年比のみでコスト管理した場合、教育コストの多くが無駄とみなされる恐れがあります。
業績面で適切に評価するためには、前述した中長期的な目標として数年スパンで影響の推移を分析する必要があるでしょう。コストや業績だけでなく、短期間ごとで各人の育成目標における達成度合いや育成効果を測定できるフレームワークを育成プロセスに組み込み、スキルを身につけた人材やその育成担当者が相応の評価を得られる環境を整えることが大切です。

フレームワークにこだわりすぎない

フレームワークに固執しすぎないことも重要です。フレームワークはあくまで手段に過ぎないため、必ずしも育成担当者や育成する人材の考え方や、企業の方針と一致するとは限りません。
例えば、研修を受ける人材にとっては、凝り固まった考え方を押し付けられることはマイナス効果をもたらすことがあります。また、育成担当者が漠然と枠組みに従うだけでは高い効果的が得られず、非効率的な手順を経由することで手間や労力をかける結果となる可能性も否めません。
企業が求める柔軟な思考力・対応力を持った人材を育成するためには、状況にあわせて各人に効果的な手法を検討し、フレームワークをアレンジする必要があります。なお、手法の改善や、ほかのフレームワークの適用を検討する際にも、5W1HやPDCAサイクルといったフレームワークの活用が効果的です。

フレームワークが効果的でなかったからといって、方法論を考えることを放棄してゼロベースで個人の裁量に任せることもまた、属人化や質の安定性を損なうリスクを負うことになります。フレームワークにこだわらずとも、失敗・成功を問わずフィードバックを収集し、分析と改善を繰り返すことで人材育成手法の最適化を目指しましょう。

まとめ

枠組みを意味するフレームワークを人材育成に活用することで、育成手順の効率化や、品質を安定させられるメリットがあります。フレームワークは様々な種類があり、自社の経営目標に沿った手法を選定することが大切です。実践したらフィードバックをもとに手法を自社流にアレンジし、改善を重ねていきましょう。

適切な手法を選ぶためには、各人のスキルを把握しておくことが欠かせません。スキルチェックにはラクテスがおすすめです。スキルを「見える可」することで、成長を客観的に評価できるため、人材のモチベーション向上や育成手法の改善に活かせます。クラウドサービスなのでインターネット環境さえあれば簡単に開始でき、無料でも利用できるので、気軽に試してみましょう。詳細はこちら

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