コンプライアンス研修の効果を可視化 「テスト×研修」入門

コンプライアンス研修の効果を可視化

年に一度のコンプライアンス研修を前に、今年は試しに事前テストを実施してみた。「去年しっかり研修をやったのだから、基礎的な問題なら8割は正解するだろう」。そう見込んでいた人事部の教育担当者のもとに届いた集計結果は、平均正答率52%。個人情報の取り扱いルールを正しく答えられた社員は3人に1人、SNS投稿に関するコンプライアンスの問題にいたっては正答率が2割を切っていた。

受講完了率は98%。研修後のアンケートでも「理解できた」という回答が大半を占めていた。それなのに、半年後にはこの結果である。教育担当者は数字を見つめながら、ある疑問にたどり着く。「自分たちがやってきたのは、教育ではなく、研修の実施という作業だったのではないか」——。

こうした経験に心当たりのある方は少なくないのではないでしょうか。

多くの企業が毎年コンプライアンス研修を実施しています。しかし、「研修をやった」ことと「社員が理解し、行動に反映できている」ことの間には大きなギャップがあります。人の記憶は時間とともに薄れていくため、1回の研修で得た知識は、数週間後には大半が失われてしまうことが心理学の研究でも繰り返し確認されています。

では、どうすれば「やりっぱなし」を脱却し、社員のコンプライアンス意識を確実に定着させられるのでしょうか。

その答えのひとつが、テスト(理解度チェック)と研修を組み合わせて繰り返すというシンプルな方法です。本記事では、この「テスト×研修」の仕組みを階層別に設計する方法と、人事・総務担当者がそのまま使える年間カレンダーをご紹介します。さらに、最近急増している生成AI時代ならではのコンプライアンスリスクにも触れます。

📌 この記事で分かること

・研修だけではコンプライアンス知識が定着しない理由と、テストを組み合わせる効果
・新入社員・中堅社員・管理職・経営層の階層別に推奨するテストと研修の組み合わせ
・生成AIの普及で新たに生まれたコンプライアンスリスクと対策
・人事・総務担当者がそのまま使える月別の年間教育カレンダー
・テスト×研修をうまく回すための実践的なコツ

1. なぜ「研修だけ」では足りないのか

多くの企業で行われているコンプライアンス研修には、共通する課題があります。それは、研修を「受けた」ことと「身についた」ことの区別がつかないという点です。

たとえば、こんな経験はないでしょうか。

全社員にeラーニングを配信し、受講完了率は98%。人事部としては「今年のコンプライアンス教育は完了」と報告できる。しかし、実際に個人情報の取り扱いについて質問すると、正しく答えられる社員は半数にも満たない。受講完了率と理解度は、まったく別のものなのです。

もうひとつの課題は、全社員に同じ内容を一律に教えていることです。新入社員にとっては「コンプライアンスとは何か」を学ぶ段階ですが、管理職には「部下からハラスメントの相談を受けたときに何をすべきか」という判断力が必要です。経営層であれば、「不祥事を起こさない会社の仕組み」を設計する視点が求められます。全員が同じスライドを眺める研修では、どの階層にとっても中途半端な内容になりがちです。

そして最大の課題は、やりっぱなしで振り返りがないこと。一度学んだ内容も、振り返る機会がなければ急速に忘れていきます。研修を1回受けただけでは、1か月後にはほとんどの内容が記憶から抜け落ちている可能性が高いのです。

テストを組み合わせるとどう変わるのか

これらの課題を解決する方法はシンプルです。研修の前後と、しばらく経ってからの合計3回、テストを実施するだけで、教育の質は大きく変わります。心理学では「テスト効果」と呼ばれる現象が知られており、学んだ内容を思い出そうとする行為そのものが記憶の定着を促すことが、多くの研究で実証されています。

研修の前にテストを実施すると、社員一人ひとりの知識レベルや弱点が見えてきます。たとえば「ハラスメントの知識は十分だが、個人情報保護の理解が薄い」といった傾向がわかれば、研修でどこに時間を割くべきかが明確になります。

研修の直後にもう一度テストを実施すると、研修前と比べてスコアがどれだけ上がったかが数字で見えます。「研修を受けた結果、平均スコアが65点から82点に上がりました」と具体的に示せれば、経営層への報告にも説得力が生まれます。

そして1〜3か月後にもう一度テストを実施することで、知識がちゃんと定着しているかを確認できます。ここでスコアが下がっている領域があれば、その部分だけ追加でフォローすれば済みます。むやみに全員へ同じ研修をもう一度受けさせる必要はありません。

📌 テスト×研修の基本サイクル

「研修前テスト → 研修 → 研修後テスト → しばらく経ってからのフォローアップテスト」の4ステップを1セットとして回します。テストの目的は社員を評価することではなく、「組織のどこにリスクがあるか」を見つけ、教育の精度を上げることです。

2. 階層別に「テスト×研修」を設計する

コンプライアンス教育の効果を大きく高めるポイントは、階層ごとに教える内容を変えることです。考えてみれば当然のことですが、実際には「全社一律の研修」を続けている企業がまだまだ多いのが実情です。

ここからは、新入社員・中堅社員・管理職・経営層の4つの階層に分けて、それぞれにどんなテストと研修を組み合わせるのが効果的かを具体的に紹介します。

2-1. 新入社員向け:社会人としての「基本」を身につける

入社したばかりの社員が最も起こしやすいコンプライアンス上のリスクは何でしょうか。それは、学生時代の感覚のまま行動してしまうことです。

たとえば、配属先の歓迎会の写真をSNSに投稿するとき、背景にホワイトボードの会議内容が映り込んでいることに気づかない。あるいは、業務効率化のつもりで顧客リストを私用のクラウドストレージにアップロードし、自宅のPCから作業する。本人に悪意はなくても、これらは情報漏洩やコンプライアンス違反につながりかねない行動です。

区分 推奨テスト・研修
テスト コンプライアンスに関する確認テストハラスメントに関する基礎知識テスト基礎的な情報セキュリティに関するテストSNSコンプライアンス遵守のためのテストビジネスマナーに関する基礎知識チェックテスト
研修 新入社員基礎研修ハラスメント研修報連相の仕方研修

入社前や入社直後にテストを実施しておくと、「SNSリテラシーが特に弱い」「情報セキュリティの基礎が抜けている」といった傾向が見えてきます。テスト結果をもとに、研修で重点的に扱うテーマを絞り込めるのが大きな利点です。

研修後にもう一度テストを実施すれば、スコアの変化で理解度を確認する材料にもなります。さらに、配属から1か月後くらいのタイミングでフォローアップテストを実施すると、実務を経験した上での定着度の確認にもつながります。テスト結果を配属先の上長と共有すれば、OJTの指導方針を具体化するヒントにもなるでしょう。

2-2. 中堅社員向け:「自分には関係ない」を崩す

ひと通りの業務を経験し、後輩の指導も担い始めた中堅社員は、コンプライアンス教育が最も届きにくい層のひとつです。入社時の基礎研修はとうに終えており、「自分はもう知っている」という意識がある。しかし実際にテストを受けてみると、意外なほど正答率が低いことに本人が驚く、というケースが非常に多いのです。

中堅社員が特に注意すべきなのは、業務範囲が広がる中で「知らないうちに法令違反をしている」リスクです。たとえば、自社のサービスを紹介するSNS投稿が、実は2023年10月に施行されたステマ規制に抵触していた。あるいは、キャンペーン用に自分で作ったWebページの表現が、景品表示法に抵触するおそれがあった。こうしたケースは、本人に法律の知識がなければ気づきようがありません。

区分 推奨テスト・研修
テスト 個人情報保護 基礎知識テストコンプライアンスに関するテストハラスメント防止対策の基礎知識テストSNSコンプライアンス遵守のためのテスト
研修 マーケティング関連法案・コンプライアンス研修生成AI活用に関連した法令およびコンプライアンス研修ファシリテーション研修

後述する生成AIに関するコンプライアンス教育も、この階層から始めるのが効果的です。日常的にChatGPTなどのAIツールを業務で使い始めている社員が多いのがこの層だからです。

ファシリテーション研修は、一見コンプライアンスとは無関係に見えるかもしれません。しかし、研修メニューに含めているのには理由があります。会議の場は、実はハラスメントが起きやすい場面のひとつです。特定の人だけが発言し、他のメンバーが口を挟めない会議は、パワーハラスメントの構造と紙一重です。「全員が安心して意見を言える場をつくる」というファシリテーションスキルを中堅社員が身につけることで、後輩との日常的なコミュニケーションも健全になり、ハラスメントの芽を摘むことにつながります。

2-3. 管理職向け:「知っている」と「対応できる」は別物

管理職のコンプライアンス教育で最もよくある落とし穴は、「知識はあるのに、いざというときに動けない」という状態です。

たとえば、部下から「隣の課の課長からセクハラを受けている」と相談を受けたとします。このとき、どの順番で誰に報告し、相談者にどう対応すべきか。「ハラスメントはいけない」という知識だけでは、この場面では何の役にも立ちません。求められるのは、具体的な初動対応のスキルです。

区分 推奨テスト・研修
テスト ハラスメント防止対策の基礎知識テスト個人情報保護 基礎知識テストマネージメントテストコンプライアンスに関するテスト
研修 メンタルヘルスケア研修(管理職向け・ラインケア)労務管理の基礎研修評価者研修部下育成研修ハラスメント研修

管理職向け教育のポイントは、テスト結果を個人だけでなく部門単位で分析することです。たとえば「営業部はハラスメント関連のスコアが全社平均を大きく下回っている」といった傾向がわかれば、その部門の管理職を対象に重点的な研修を実施する、という判断が可能になります。

2022年にパワハラ防止法の適用が中小企業にも広がって以降、管理職にはラインケア(部下のメンタルヘルス不調の早期発見と対応)のスキルが欠かせなくなっています。テストで知識レベルを確認した上で、ロールプレイを含む実践的な研修を受けることで、「知っている」から「対応できる」への転換が図れます。

研修の中に評価者研修部下育成研修を含めている理由も、ハラスメント防止と深く関わっています。人事考課は上司の権限が最も強く発揮される場面です。評価基準が曖昧なまま運用されると、「好き嫌いで評価されている」という不信感が生まれ、曖昧な評価そのものが「評価を盾にした圧力」として受け取られれば、パワハラ認定される可能性もあります。公正な評価基準と面談の進め方を学ぶことは、評価プロセスそのもののリスクを下げることにつながります。

同じように、部下育成研修で扱う「ほめ方・しかり方」は、指導とハラスメントの境界線を明確にするスキルです。「厳しく指導したつもりがパワハラと言われた」というケースの多くは、叱り方のスキル不足に起因しています。適切なフィードバックの技術を学ぶことが、実はいちばん実効性の高いハラスメント予防策のひとつです。

2-4. 経営層向け:教育体制そのものを設計する立場として

ある企業の取締役会で、こんなやりとりは珍しくありません。「うちのコンプライアンス教育は十分なのか?」という社外取締役の質問に対し、人事担当役員は「年1回の研修を全社員に実施しています」と答えた。すると社外取締役から「それで効果はあったのか。数字で示せるか」と返され、言葉に詰まった。

経営層に求められるのは、個別の法令知識というより、「コンプライアンス教育の仕組みをどう設計し、どう投資し、その成果をどう測るか」という経営判断そのものです。

区分 推奨研修
研修 コーポレートガバナンス研修人的資本経営研修経営戦略策定研修

コーポレートガバナンス研修では、「もし自社で不祥事が起きたらどう対応するか」というシミュレーションや、取締役会がきちんと機能しているかを点検する方法など、経営の現場に直結するテーマを扱います。

加えて、人的資本経営研修を通じて、コンプライアンス教育を「やらなければいけないコスト」ではなく「人材の質を高める投資」として捉え直すことも大切です。テストスコアの推移データがあれば、先ほどの社外取締役の問いにも「数字で」答えられるようになります。

なお、経営層に対しては選択式の知識テストよりも、実践的な取り組みの方が効果的です。たとえば、「自社で不祥事が発生した場合の初動対応フロー」を経営チームで実際に策定してみる、あるいは全社のテストスコア推移を分析して次年度の教育投資計画をまとめるといった課題型のアプローチが、経営判断に直結する学びにつながります。

2-5. 階層別テスト×研修の全体像

ここまでの内容を一覧にまとめました。自社の階層構成に合わせてアレンジしてお使いください。

階層 教育の目的 主なテスト 主な研修
新入社員 基礎知識の習得。学生気分のまま起こしがちなリスクの防止 コンプライアンス確認テスト、ハラスメント基礎知識テスト、情報セキュリティテスト、SNSコンプライアンステスト 新入社員基礎研修、ハラスメント研修、報連相の仕方研修
中堅社員 業務に直結する法令知識の習得。「自分には関係ない」意識の打破 個人情報保護テスト、コンプライアンステスト(応用)、ハラスメント防止対策テスト、SNSコンプライアンステスト マーケティング関連法案研修、生成AI法令コンプライアンス研修、ファシリテーション研修(会議でのハラスメント防止)
管理職 「知っている」から「対応できる」への転換。部門全体のリスク管理 ハラスメント防止対策テスト、個人情報保護テスト、マネージメントテスト、コンプライアンステスト メンタルヘルスケア研修(ラインケア)、労務管理研修、評価者研修(公正な評価でパワハラを防止)、部下育成研修(指導とハラスメントの境界線を明確化)
経営層 教育体制の設計と投資判断。不祥事を防ぐ仕組みづくり 実践課題型(不祥事発生時の初動対応フロー策定、教育投資計画の立案など) コーポレートガバナンス研修、人的資本経営研修、経営戦略策定研修

3. 生成AIがもたらす「新しいコンプライアンスリスク」

ここまでは従来型のコンプライアンス教育の話でしたが、ここからは「今までの研修では教えていなかったけれど、今すぐ対応しなければいけないリスク」についてお話しします。

ChatGPT、Claude、Geminiといった生成AIツールは、すでに多くの企業で日常的に使われ始めています。議事録の要約、メール文面の作成、資料のたたき台づくりなど、便利な使い方は数え切れません。しかし、その便利さの裏に、従来のコンプライアンス教育ではまったくカバーされていないリスクが潜んでいます。

実際に企業の現場で起きている問題を見てみましょう。

ある製造業の企画部門で、若手社員が取引先との契約書のドラフトをChatGPTに貼り付けて「要点を3つにまとめて」と指示していました。本人は議事録作りの延長くらいの感覚でしたが、契約書には秘密保持条項で守られた価格情報や技術仕様が含まれていました。外部のAIサービスに入力した時点で、入力内容がサービス提供者側に渡り、意図しない形で利用される可能性が生じていたのです。上司が気づいて止めましたが、一歩遅ければ取引先との信頼関係に関わる事態でした。

あるEC事業者のマーケティングチームでは、商品レビューの数を増やすために、AIに「この商品を使った感想を5パターン書いて」と指示し、生成された文章をそのまま自社サイトに掲載していました。これは2023年10月に施行されたステマ規制(景品表示法の改正で、広告であることを隠した表示が禁止されたルール)に抵触する可能性があります。

あるWeb制作会社では、納期に追われたデザイナーがAIで生成した画像をクライアントのSNSに投稿したところ、フォロワーから「この画像、〇〇さんの作品に似すぎている」と指摘を受け、急いで削除する騒ぎになりました。

これらはいずれも、社員に悪意があったわけではありません。生成AIの利用に関するルールや法的リスクを「知らなかった」だけです。

リスクの種類 どんな場面で起きるか テスト×研修での対策
機密情報の漏洩 顧客情報や契約書を外部AIサービスに入力してしまう 情報セキュリティテスト → 生成AI法令コンプライアンス研修
著作権侵害 AIが生成した文章・画像を確認なく外部公開し、既存作品との類似が問題に コンプライアンステスト → 生成AI法令コンプライアンス研修
ステマ規制への抵触 AIで作った口コミやレビュー風コンテンツを広告表示なく掲載 SNSコンプライアンステスト → マーケティング関連法案研修
偏見・差別的表現 AIが生成した文章に偏った表現や差別的なニュアンスが含まれていないかチェックせず公開 ハラスメント防止対策テスト → ハラスメント研修

まずは情報セキュリティテスト個人情報保護テストで、社員のセキュリティ意識がどの水準にあるかを把握します。その上で、生成AI活用に関連した法令およびコンプライアンス研修を受講することで、AIを使って良い場面・使ってはいけない場面の判断基準を身につけることができます。

生成AIの技術や関連法規は日々変化しています。一度教えて終わりではなく、年に1回はフォローアップテストで最新のリスクへの理解度を確認する仕組みを組み込んでおくことをおすすめします。

4. 年間コンプライアンス教育カレンダー

ここまで「何を」「誰に」教えるかを整理してきましたが、あとひとつ大切なのが「いつやるか」です。テストや研修を思いつきで実施するのではなく、年間スケジュールとしてあらかじめ決めておくことで、現場の負担を分散しながら計画的に教育を回すことができます。

以下は、4月始まりの一般的な企業を想定した年間カレンダーの例です。そのまま使うこともできますし、自社の繁忙期や決算期に合わせてアレンジしてください。

時期 対象 テスト 研修 ポイント
4月 新入社員 【研修前】コンプライアンス基礎テスト、情報セキュリティテスト、SNSコンプライアンステスト
【研修後】同テスト再実施
新入社員基礎研修、ハラスメント研修 入社オリエンテーションの一環として研修前テストを組み込む
5月 新入社員
新任管理職
【フォロー】新入社員の4月研修内容の定着確認
【研修前】マネージメントテスト、ハラスメント防止対策テスト
部下育成研修 新入社員を受け入れる管理職側にも「指導とハラスメントの境界線」を教育
6月 全社員 【全社】ハラスメントに関する基礎知識テスト ハラスメント研修(全社)、メンタルヘルスケア研修(管理職向け) テストでスコアが低い部門・階層を特定し、重点的に研修を実施
7〜8月 中堅社員
マーケ部門
【研修前】個人情報保護テスト、SNSコンプライアンステスト
【研修後】同テスト再実施
マーケティング関連法案研修、生成AI法令コンプライアンス研修 夏のキャンペーン企画が増える時期。法令知識の強化に最適
9月 全社員 【総合】コンプライアンス総合テスト(階層別に実施) 上半期の総括。スコアの推移をグラフ化し経営層に報告
10月 全社員
IT部門
【全社】情報セキュリティテスト 労務管理の基礎研修(管理職)、生成AI法令コンプライアンス研修(該当部門) 情報セキュリティ月間。生成AIを業務利用している部門を重点対象に
11月 管理職
経営層
【管理職】コンプライアンステスト 評価者研修(管理職)、コーポレートガバナンス研修(経営層) 人事考課シーズン前。評価プロセスでのパワハラリスクを低減
12〜1月 全社員 【法改正】その年に施行された法改正のテスト(例:取引適正化法テスト) 法改正の知識を年内に全社へ浸透。年間スコア推移をまとめる
2〜3月 人事・総務
経営層
人的資本経営研修(経営層) 年間データを分析し次年度計画を策定。教育投資の成果を経営層へ報告

※ 上記はあくまで一例です。法改正の時期や自社の繁忙期に応じて柔軟に調整してください。すべてを初年度から実施する必要はありません。まずは4月・9月の全社テストと、自社の課題に合った階層別研修を2〜3本に絞って始めるだけでも、十分な効果が期待できます。

5. テスト×研修をうまく回すコツ

ここまで「何を、誰に、いつやるか」を整理してきました。最後に、実際に導入する際に押さえておくと成功率がぐっと上がるポイントをお伝えします。

「試験」ではなく「健康診断」として設計する

テストを導入すると聞いて、真っ先に「評価されるのか」「落ちたらどうなるのか」と身構える社員は少なくありません。実際、ある企業では「コンプライアンステストを実施します」とアナウンスしただけで、現場から「忙しいのに」「何のためにやるのか」と反発が出ることがあります。

こうした反発を防ぐには、テストの位置づけを最初から明確にしておくことが大切です。「これは個人の成績をつけるものではなく、組織全体の健康診断です。どの部門にどんなリスクがあるかを知るためにやります」——この説明だけで、社員の受け止め方は大きく変わります。

健康診断に「血圧130以上は要注意」のような基準値があるように、コンプライアンステストにも「80点を目安ライン」といった基準を設けておくと効果的です。基準に届かなかった社員は、健康診断で「要精密検査」と出たのと同じ扱いです。個人を責めるのではなく、追加のeラーニングや個別フォロー研修を案内して「学び直しの機会」を提供する。テスト結果を人事考課に連動させないことを事前に明言しておけば、社員も安心して受けられます。

この運用のポイントは、テスト結果の分析を個人単位ではなく部門別・階層別で行うことです。「営業部は個人情報保護の正答率が全社平均を下回っている」「管理職のハラスメント対応の理解度に差がある」といった組織の傾向を把握し、次の研修テーマに反映させる。そうすれば、テストは「社員を振り落とす試験」ではなく、「組織のリスクを見つけて手当てする仕組み」として機能します。

テストの結果が「次の研修」を決める

テストで正答率が低かった領域を、次の研修で重点的に扱う。この改善サイクルを続ければ、研修の内容は繰り返すたびに現場の実態に即したものへと磨かれていきます。「去年のテストで個人情報保護の正答率が低かったので、今年はそこを重点的にやります」と研修の冒頭で伝えるだけで、「ちゃんとテスト結果を見てくれているんだ」と社員の参加意欲も変わります。

経営層への報告は「回数」ではなく「スコアの変化」で

コンプライアンス教育の成果を経営層に報告するとき、「今年は研修を6回実施しました」では「で、効果は?」と聞かれて終わりです。しかし、「4月の時点で平均65点だったハラスメント知識のスコアが、9月には82点まで上がりました。特に営業部門の伸びが顕著です」というデータがあれば、話はがらりと変わります。教育予算の確保や施策の継続に対する理解が格段に得やすくなります。

法改正のたびにテスト・研修をアップデートする

コンプライアンスの対象領域は年々広がっています。生成AIの普及、ステマ規制の強化、法改正(たとえば2026年の下請法から取引適正化法への移行)など、去年のテストをそのまま使い回すだけでは新しいリスクに対応できません。ラクテスでは800種類以上のテストが用意されており、自社の業種や状況に合わせたオリジナルのテストも簡単に作成できます。

テスト結果の取り扱いルールを事前に決めておく

テストの点数は個人情報にあたります。「誰が閲覧できるのか」「どこに保管するのか」「本人へのフィードバックはどう行うか」を事前にルール化し、社内に周知しておくことが大切です。導入に際しては、従業員代表や労働組合への事前説明が必要になる場合もあります。テストの目的と結果の取り扱い方針を文書化しておくと、現場への説明もスムーズに進みます。

まず試せる「小さな一歩」

ここまで読んで、「年間カレンダーを全部やるのは、うちにはまだ早い」と感じた方もいるかもしれません。それでまったく問題ありません。最初から完璧な体制を作る必要はなく、小さく始めて、手応えを感じたら広げていくのがいちばん現実的なやり方です。

おすすめの始め方は、次の3ステップです。

ステップ1:まず1つの部門だけでテストを試す。全社展開はまだ先でかまいません。たとえば営業部や今年の新入社員だけを対象に、コンプライアンス基礎テストを1回やってみます。20問・30分程度なので、業務への影響はほとんどありません。テスト結果を見れば、「意外とこの領域の理解度が低いな」という発見が必ずあるはずです。

ステップ2:テスト結果をもとに研修テーマを決める。やみくもに「とりあえずハラスメント研修」と決めるのではなく、テストで弱点が見えた領域を研修のテーマにします。「テストの結果、この領域が弱かったので重点的にやります」と説明すれば、受ける側も「自分たちに合わせた内容だ」と感じて参加意欲が上がります。

ステップ3:研修後にもう一度同じテストを実施する。たったこれだけで、「スコアが何点上がったか」という客観的なデータが手に入ります。このデータこそが、「次は別の部門でもやろう」「来年度は全社展開しよう」と社内を動かすいちばんの武器になります。

📌 本記事のポイント

・年1回の研修だけでは知識は定着しない。研修の前後にテストを組み合わせ、スコアの変化を追うことで、理解度の可視化と継続的な定着が実現できる
・新入社員・中堅社員・管理職・経営層で教えるべき内容は異なる。階層別にテストと研修を割り当てることで、限られた予算で最大の効果を得られる
・生成AIの業務利用が広がる中、情報漏洩・著作権・ステマ規制など従来の教育ではカバーできないリスクが増えている
・年間カレンダーに沿って計画的に実施し、スコアの推移で効果を測定すれば、経営層への報告にも説得力が出る
・完璧を目指す必要はない。「1部門でテスト → 弱点を研修 → 再テストで効果確認」の3ステップから始められる

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