eNPSとは? 計算方法や調査の方法、日本企業における平均スコアを紹介

企業の人事担当にとって、従業員のモチベーションや離職率の改善は大きな課題です。「eNPS」という指標を把握することで、従業員の職場への満足度を把握でき、改善のヒントを得られます。そこで本記事では、eNPS調査の概要とメリット、数値の改善方法などについて解説します。

eNPSとは?

eNPS(Employee Net Promoter Score)とは、従業員が自社に対してどれだけ愛着を持っているかを数値化したものです。組織や仕事に関心や愛着を持ち、積極的に参加している状態を「エンゲージメント」といいます。eNPSスコアが高いほど、従業員のエンゲージメントレベルが高いことを意味します。
eNPSでは「あなたは、この会社を友人や家族に推薦しますか?」などの質問を行います。回答は0(全く推薦しない)から10(強く推薦する)までの10段階評価で、その評価点をもとにスコアを算出します。詳しい計算方法については後述します。

eNPSのスコアを向上させる施策を行うことで、従業員のモチベーションや生産性を向上でき、離職率の低下や、顧客満足度の向上にもつながります。

従業員満足度とNPSとの違い

eNPSと似た指標に「従業員満足度」と「NPS」があります。いずれも、顧客や従業員が自社に対してどのような感情を持っているかを測定するための指標ですが、測定する対象や方法、意図する目的がそれぞれ異なります。

従業員満足度との違い

従業員の心理状態を表す指標として「従業員満足度」があります。しかし、従業員満足度は「従業員個人の幸福感やモチベーション」を向上させることを目的としているのに対し、eNPSは「職場への満足度」を向上させることを目的としています。職場への意識を正確に測るにはeNPSが適しています。

NPSとの違い

eNPSとNPSでは、測定する対象が異なります。eNPSは「従業員」が自社に対してどのような感情を持っているかを表す指標であるのに対し、NPSは「顧客」が自社に対して抱いている愛着や信頼感を表す指標です。NPSは、自社のブランド力を高めるためによく使用されます。

eNPSの調査方法

まず質問項目を決めます。最も代表的な質問は「自分の家族や友人や家族に職場を勧めたいと思いますか?」というものです。その1問だけでもeNPSスコアを算出できますが、労働環境や他社員との関係などを問う以下のような質問を併せて行うと、より詳細に従業員の気持ちを知ることができます。

・あなたの職場には、自分自身を成長させる機会がありますか?
・上司はあなたが業務を遂行するために必要な情報を提供していますか?
・公正で公平な待遇を受けていると感じますか?
・組織のビジョンとミッションに共感していますか?

以上のような質問でアンケートを作成し、従業員に「0点(全くそう思わない)~10点(強くそう思う)」の10段階で回答してもらいます。

eNPSの計算方法

つけた点数に応じて、従業員を「推奨者」「中立者」「批判者」の3グループに分類します。職場を積極的に友人に勧めたい人は「推奨者」、勧めたくない人は「批判者」、どちらでもない人は「中立者」となります。
eNPSのスコアは、「推奨者の割合(%)」-「批判者の割合(%)」で求めます。例えば、100人の従業員に質問し、以下のような結果が得られたとします。

・推奨者:40人(40%)
・中立者:30人(30%)
・批判者:30人(30%)

この場合、推奨者の割合は40%、批判者の割合は30%なので、スコアは40(%)-30(%)=10(%)となります。スコアは-100から+100の範囲内で示されます。スコアが高いほど、従業員のエンゲージメントレベルが高いということになります。
「推奨者」「中立者」「批判者」のタイプごとに改善施策を打つことで、スコアを効果的に改善できます。

推薦者

「推奨者」とは、10点または9点をつけた従業員です。自社を指示する姿勢を持ち、モチベーションも高いことが特徴です。会社に対して高い忠誠心を持っているため、自社の良いところについて自発的にSNSや口コミで共有することがあります。自ら広報や採用活動の一翼を担ってくれる存在で、企業のブランド力向上に貢献する可能性が高いです。

中立者

「中立者」は、8点または7点をつけた従業員です。自社に対してある程度の忠誠心を持っているが、推薦者ほど自社に好意を持っているわけでもない状態です。中立者である従業員のモチベーションをさらに高め、推薦者へと改善するような施策が必要です。

批判者

「批判者」とは、6点以下の点数をつけた従業員です。会社に対する忠誠心が低く、不満やネガティブな感情を抱いている可能性があります。このグループに属する従業員は離職の可能性が高く、自社のビジョンや活動について無関心であることが多いです。そのため、他の従業員のモチベーションも下げてしまう可能性があります。また、会社への批判などを友人や知人に広めることで企業のブランドを低下させるおそれがあります。そのため、この「批判者」グループを最優先して対応策を講じるべきです。

日本企業のeNPS平均スコア

株式会社ビービットが行った2017年の調査によると、日本企業の平均eNPSスコアは-61.1でした。業界別に見ると「官公庁・自治体・公共団体」ではeNPSスコアが-41.3と比較的高い結果となっています。一方「出版・印刷業」「サービス業」「運輸・運送業」のスコアは低く、いずれも-70を下回っています。
参考:株式会社ビービットによる 16業界eNPS調査結果

日本は、海外企業と比較して職場への満足度が低い傾向にあります。
米国の調査会社ギャラップ社が行った「エンゲージメント・サーベイ」によると、高いエンゲージメントを持つの従業員の割合は、日本はわずか6%でした。また、日本の従業員エンゲージメントレベルは、調査対象の129カ国中128位でした。

参考:日本の従業員エンゲージメントの低さを考える(ニッセイ基礎研究所)

またクアルトリクス合同会社が行った日本を含む世界20カ国・地域の従業員エンゲージメント調査の結果によると、2020年の従業員エンゲージメントは世界全体では66ポイントであったのに対し、日本は47ポイントと比較的低くなっています。
参考:2021年の従業員エンゲージメントを左右する鍵は「帰属意識」(クアルトリクス合同会社)

eNPSを改善するメリット

企業のeNPSが高くなるほど、従業員が働きがいを感じられるようになり、企業にとっても様々なメリットをもたらします。

生産性の向上

eNPSを改善することで、従業員の仕事への充実感や達成感が高まります。仕事にやりがいを見出すことで、業務に積極的に取り組むようになります。また、eNPSを改善することは従業員同士の信頼関係を構築することにもつながるため、職場でのコミュニケーションが改善されます。業務中の問題解決のための意思疎通が円滑に行えることで、作業の効率が良くなり、生産性が向上します。

離職率の低下

少子化により、現在の日本では多くの業界・企業で労働者不足の課題を抱えています。そのような中、従業員に長く勤めてもらえるような職場作りは企業にとって重要な課題です。
eNPSが高い職場では、職場に対する満足度が高いためストレスや不満が少なく、離職率が低くなります。離職率を低下させることで、人材流出による業務の停滞や生産性の低下を防ぐことができます。

リファラル採用の促進

リファラル採用とは、自社の従業員に紹介してもらった人材を採用する方法です。リファラル採用には、求人募集にかかるコストが削減できることや、自社にフィットする人材を採用できることなどのメリットがあります。自社のことをよく理解している従業員が薦める人材であるため、採用のミスマッチが起こる可能性が低く、入社後に長く働いてもらうことができます。
eNPSのスコアを改善することで、友人に勧めたいと思えるような職場を作ることができ、リファラル採用を促進できます。

eNPSの改善方法

ここからは、eNPSの改善方法を具体的に紹介します。改善を行った後は、再びeNPSスコアを測る調査を行い、効果検証をすることも重要です。

人事評価制度の改善

人事評価制度を適正なものに改善すれば、従業員は自分の評価に納得できるようになり、組織に対する信頼感や愛着が高まります。人事評価のルールや仕組みを明確に定めることで、従業員のキャリアアップの道筋を示したり、目標管理を適切に行うことができます。結果として、従業員のモチベーションや成果の向上につながります。

ビジョンの共有

企業のビジョンが共有されることで、従業員は自分たちが働く組織の方向性や目的を明確に理解できます。そのため、組織の成長や発展に貢献しているという実感が得られ、モチベーションが向上します。
ビジョンは市場の状況や従業員の意見に合わせ変化することもあります。その場合は、改めて全従業員に新しいビジョンを共有しましょう。組織の方針を常に明確にして透明性を保つことで、組織に対する信頼感が高まり、eNPSが向上します。

コミュニケーションの促進

上司から部下への命令形式のコミュニケーションや、評価やアドバイスを伝えるだけのコミュニケーションでは、従業員のやる気やモチベーションを高めることは難しいでしょう。一方的なコミュニケーションではなく、従業員が上司や同僚と意見を交換できるような工夫をすることが大切です。例えばチームミーティングでは議題を明確にし、全員が積極的に発言できるような環境を整えたり、カジュアルな食事会などのイベントを企画したりすることで、発言しやすい雰囲気を作ることができます。職場の雰囲気を明るいものにするような施策を行うことで、従業員同士のコミュニケーションを促進し、チームのパフォーマンス向上が期待できます。

待遇の改善

従業員の評価に見合った給与を与えることが大切です。報酬面での待遇が改善されれば、従業員は会社から評価されていることを実感できます。
また給与以外に、福利厚生を充実させることもeNPSの改善に有効です。例えば、低価格で利用できる社員食堂を整備したり、快適なリフレッシュスペースを用意したりすれば、従業員は「自分たちのために快適な職場環境を整えてくれている」と感じ、自社への愛着が湧くでしょう。スキルアップのための研修参加費の補助などを行い、従業員の自己成長を支援することも、従業員のモチベーション向上に有効です。

まとめ

eNPSは、従業員のエンゲージメントを測る方法の一つです。類似した指標として従業員満足度、およびNPSがありますが、それぞれ測定方法や意図する目的が異なります。eNPSスコアを高めることで、生産性の向上や離職率の低下が期待できます。
eNPSでは「あなたは、この会社を友人や家族に推薦しますか?」などの質問に基づいてスコアを算出し、スコアが高いほど従業員エンゲージメントが高いことを示します。従業員は「推奨者」「中立者」「批判者」の3グループに分類され、それぞれ改善施策を打つことでスコアを効果的に改善できます。
eNPSを改善するには、人事評価制度の改善、ビジョンの共有、コミュニケーションの促進、待遇の改善が重要です。これらの改善を行い、再度eNPSスコアを測定して効果検証を行いましょう。

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