パルスサーベイとは?導入メリットや質問項目を紹介

企業として、安定的な成果や事業の発展を目指す上では、従業員の状態をしっかりと把握しておく必要があります。意欲に欠ける部下の意識改革をするにも、不調なチームメンバーのケアやフォローを行うにも、前提として各人の現状を知っておかなければならないからです。
この記事では、従業員の状態を的確に理解するための調査方法「パルスサーベイ」について、導入する利点や具体的な導入の仕方などを解説します。

パルスサーベイとは?

パルスサーベイという言葉は、鼓動や脈拍といった振動現象を意味する“Pulse”と、調査や測量を意味する“Survey”を組み合わせたもので、従業員に対する意識調査の一種を指します。
方法としては、従業員に10問前後の簡単な質問を投げかけるという形で行われますが、これだけでは一般のアンケート調査と変わりません。パルスサーベイの特徴は、あたかも脈拍を測るかのように、高頻度かつ定期的な調査を行う点です。具体的には月に1度、あるいは週に1度といった短いスパンで調査を実施します。そうすることで、従業員の心身の状態や職場内で生じている問題をほぼリアルタイムで掴むことが可能です。また、定期的な調査は定点観測ともなるため、たとえば従業員に急な不調が生じた場合、何が原因なのかを見つけやすくなるといったメリットもあります。

パルスサーベイの活用シーンとは?

リアルタイムでの状況把握に優れるパルスサーベイですが、あまり効果を発揮できないシーンで用いても意味はありません。どのようなシーンで活用できるのかを知っておく必要があります。
活用シーンの例としては、従業員の満足度やメンタル面をチェックしたい場合、新人をサポートするための教育(オンボーディング)の成果を確かめたい場合などが挙げられます。加えて、人事異動や導入した新制度の効果を検証したい場合にもパルスサーベイは有効です。
これらは変動が激しかったり業績への影響が大きかったりする要素のため、問題が生じていないかをこまめに確認することで、効果的な施策を講じることができます。

パルスサーベイを行う目的

短い間隔で調査を繰り返すのは、日々移り変わる従業員や職場の状態を、なるべく的確に把握するためです。状況把握がきちんとできていればトラブルの予防も可能ですし、万一トラブルが生じてしまったとしても事後対応がスムーズになるでしょう。
また、新人を迎え入れたり新制度を導入したりといったケースでは、フォローアップが不可欠です。新しく取り入れたことの有効性を測る場合、取り入れる前の時点から状況を把握しておかなければ、効果の有無や程度はわかりません。パルスサーベイを実施しておくことで、スポット的な状況だけでなく、その変化が見て取れるため、フォローアップもしやすくなります。
このように、調査は実施しただけで終わるのではなく、トラブルの予防や解消、フォローアップへの準備といった目的を達成するために手がけるものです。目的意識があるかどうかで調査の内容も変わってくるでしょう。パルスサーベイが惰性に陥らないよう、目的を明確にしておくことが大事です。

パルスサーベイの導入メリット

定期的かつ頻繁な調査によって従業員や職場の現状がわかるのは大きな利点です。しかし、それだけがパルスサーベイを行うメリットではありません。以下では、エンゲージメントや課題解決、調査費用との関係で生じるパルスサーベイの導入メリットを示します。

メリット① エンゲージメントの向上

人は自らを大切にしてくれる存在に対して思い入れや愛着をいだくものです。こうした親密な結び付きを伴う関係性はエンゲージメントと呼ばれます。こまめな調査を行うことで、2つの点からエンゲージメントの向上を期待できます。
第1に、従業員が会社からの調査に対応することで、経営理念や会社への貢献を意識するきっかけとなることです。パルスサーベイの実施という形で会社から働きかけを受ければ、従業員は現状の把握や改善に努めようとする会社の姿勢を感じ取ります。そして、自分たちもそれに応えようとするでしょう。
第2に、的確な状況把握に基づき職場環境の改善や従業員へのフォローを行うことで、「働きやすい会社だ」との思いが従業員に芽生えます。これによって会社のために頑張ろうという意欲が高まり、結び付きが強まるでしょう。

なお、パルスサーベイと似た調査に「エンゲージメントサーベイ」があります。こちらについては以下の記事をご覧ください。

「エンゲージメントサーベイに適した質問項目とは? 目的やメリットも解説」

メリット② 社内課題への早期解決

設備の不調や備品の不足、同僚との仲違いなど、職場内で生じるトラブルは多種多様です。そのような問題への対処は早ければ早いほどよいものですが、そう簡単にはいきません。トラブルの内容や程度によってはなかなか表面化せず、上司の耳に届く頃には事態が相当悪化しているといったこともあります。会社に対する従業員の悩みや不満も同様で、退職願を出されてはじめて上司が気づくようなケースも珍しくないでしょう。
パルスサーベイの実施は、こうした問題を早い段階で可視化させます。ちょっとした身体の不調ではわざわざ病院へ行こうと思わない人でも、会社の定期検診では医者へ不具合を訴える気になるものです。それと同じように、会社が定期的な調査を行えば従業員もトラブルや不満などの存在を明らかにします。その結果、早期に問題の芽を摘み、良好な職場環境の維持や離職率の低下につなげることが可能です。

メリット③ 費用の削減

手続き面におけるパルスサーベイの利点として、低コストであるという事実も無視できません。一般に行われる従業員調査は、かなり費用がかかります。これは、年に1度など調査頻度が少ない代わりに、規模が大きくなりがちだからです。質問の作成や分析に時間を要するため、高コストになります。外注も可能ですが、さらにコストはかかります。たとえば、ある公共財団法人に300名規模の調査を依頼する場合、1回あたりの費用は33万円(税込み)で、追加分の調査用紙や属性項目別の報告書は別料金となっています。
これに対してパルスサーベイは、月単位・週単位など調査頻度が多い代わりに規模は小さく、コンパクトに済むのが特徴です。用意する質問数も少ないため、自社で調査できて担当者の負担も軽くなります。加えて、オンライン上でパルスサーベイを簡単に作成・実施できるツールもあり、さらなるコスト軽減も目指せます。

パルスサーベイ実施の流れ

ここからはパルスサーベイの導入を考えている方へ向け、調査の流れを5つのステップで紹介します。それぞれにポイントがあるため、きちんと押さえておきましょう。

Step1.調査の目的を明確にする

パルスサーベイは職場や従業員の現状を把握するための調査ですが、そもそも何のために現状を把握する必要があるのか、調査前にはっきりさせておかなければなりません。これは目的に応じて調査の質問内容が変わるからであり、ひいては調査そのものの実効性にも関わってくるためです。
また、目的と共に調査対象者も明確にする必要があります。たとえば従業員の満足度調査なのか、新入社員のオンボーディングなのか、あるいは人事異動後の効果検証なのかで、目的や対象者は大きく異なります。「何のため、誰に対して」調査をするのかという点が揺らいではいけません。有効な回答データを入手するためにも、目的はきちんと定めておきましょう。

Step2.質問項目を作成する

質問項目は、設定した目的と対象者にあわせて作成します。質問数は5~10問ほど、目安としては5分以内で回答が完了する程度が望ましいでしょう。回答は文章を記述させるものではなく、「はい/いいえ」の二択形式か、多すぎない選択肢から手軽に選べる方式とするのが基本です。たとえば新人へのサポート体制の実効性を確認したいのであれば、「教育担当者への質問はしやすいですか」「マニュアルのわかりやすさを5段階で選んでください」などの質問が考えられるでしょう。
パルスサーベイは月1度、週1度といった短いスパンで行うため、回答に過大な時間や労力がかかってしまうと、調査そのものが不満や負担の発生原因となりかねません。あれも知りたい、これも知りたいと欲張らず、質問数や内容は吟味するよう注意してください。

Step3.調査を実施する

回答や調査結果の集計がしやすいように、パルスサーベイは対象となる従業員への調査シートの共有という形で実施します。一人ひとり口頭で聞き取りなどを行うわけではなく、簡単なアンケート調査として行うのが基本です。
実施にあたっての注意点は2つあります。1つ目は、段取りをつけておくことです。調査の数日前までに告知を行い、所要時間や回答期限、調査シートの提出先といった手続きを明示しておきましょう。期限の前には提出を促すメールを送れば、回答率も向上します。
2つ目は、調査の概要と目的の説明です。何のための調査かを伝えることで、従業員からの誠実な対応が期待できます。

Step4.結果を分析する

調査シートが寄せられたら、それを基に現状の把握と分析を行います。分析すべき対象には、回答の内容だけでなく、回答率も含まれる点に留意しましょう。たとえば、回答率が想定よりも低かった場合、質問が難しく回答が負担だった、期限や提出先の周知が不十分だった、などの原因が考えられます。回答率が著しく低いと調査自体の信用性が下がり、運用にあたって参考にできなくなってしまうため、対策が必要です。
回答内容に関する分析は、前回の調査結果との差異に着目しつつ行うとよいでしょう。新制度導入後の満足度の変化や、オンボーディング後における理解度の変化など、節目ごとに原因と結果を見ていきます。いずれも現状の把握をした上で、継続すべき点と改善すべき点を洗い出すことが重要です。

Step5.対策を考える

分析から対策へと速やかにつなげていくことで、パルスサーベイを受けた従業員の側でも調査の意義を実感しやすくなります。洗い出した中に課題があれば、できるだけ迅速に対策を考えなければなりません。
パルスサーベイはあくまでも簡易的な調査なので、必要に応じて従業員と面談を行い、詳細な状況を聴取しましょう。業務や人間関係でのトラブルがあった場合はフォローも求められます。そうした対策の効果は次回のパルスサーベイで検証する、というサイクルを確立することも重要です。
以上の一連の流れは、人事考課にも活用していけます。ただし、質問に回答することで不利に扱われると思わせてしまうと、従業員側も率直な回答をしなくなる恐れがあります。パルスサーベイは状況改善のために行うもので、懲罰などのために実施するわけではないと示し、従業員を安心させる必要があることにも留意しましょう。

質問項目の例

パルスサーベイでは調査頻度が高いため、手軽に回答できるような形式にするのが基本です。たとえば、10点満点中何点かで評価させる形式、「あてはまらない/あてはまる」のいずれかを選ぶ二択形式など、回答の手間も考慮して決めましょう。
質問事項の枠組みとしては、業務・会社の方針や企業理念・制度や評価・ワークライフバランスの4点に分けられます。以下ではそれぞれの意義と質問の具体例を示します。

業務に関して

業務の内容や分量に関するカテゴリーでは、質問を通じて個々人の業務適性や、仕事の割り振りの適切さなどをチェックします。
仕事における得手不得手は人によって異なり、適性のない業務に就いてしまうと十分なパフォーマンスを発揮するのは困難です。調査の結果、ある従業員について、仕事へのやりがいや成長の実感などが乏しいと判明した場合、その人物を別な業務に回すといった対処が考えられるでしょう。また、仕事の割り振りについても、従業員ごとに多すぎず少なすぎもしない業務量を配分するには、本人たちの意識も参考にする必要があります。
パルスサーベイでは、こうした判断に役立つ回答が得られる質問を投げかけなければなりません。具体的には以下のような質問が挙げられます。

・現在の仕事は自分にあっていると思うか
・仕事にやりがいを感じているか
・業務を通じて成長できてると感じるか
・達成したいと思う目標はあるか
・自身の職位に対して割り振られた仕事の量は適切か
・チーム全体における仕事の量はちょうどよいと思うか

会社の方針や企業理念に関して

会社の方針や企業理念に関するカテゴリーでは、質問を通じて会社の方針が従業員に理解されているか、企業理念が従業員らに賛同してもらえているかといった点をチェックします。
会社という全体があり、個別の部門や部署があり、チームや個人があるなかで、それぞれの方針は大枠で一致していなければなりません。たとえば会社と部署の方針が食い違っていたら、目標へ向かう力が分散されたり、打ち消されたりしてしまうからです。また、会社と従業員個人の理念が合致していれば、業務へのモチベーション向上が期待できます。
そのため、調査にあたっては、企業の方針や理念に対する考えを読み取れるような質問を入れておくとよいでしょう。

・会社の経営方針について理解できているか
・役員や幹部は経営計画などの情報を適切に伝えてくれていると思うか
・従業員が会社から大切にされていると感じるか
・会社の成長性や安定性、将来性に関して問題を感じているか
・経営理念に共感、賛同をしているか

制度や評価に関して

制度や評価に関するカテゴリーでは、質問を通じて昇進や給与といった人事評価が従業員の納得を得ているか、能力の評価が適切だと思われているかなどをチェックします。加えて、教育やキャリア形成についての制度が機能しているかどうかも確かめられます。
役職や給与額として表れる人事評価は、評価する側とされる側とで齟齬が生じやすい部分です。評価への不満はモチベーションや生産性の低下をもたらし、下手をすると離職にもつながりかねません。認識の食い違いがあれば早期に把握する必要があります。また、教育やキャリア形成といった制度の充実は従業員の将来性にも関わるため、求人の効果などに影響するでしょう。
いずれもパルスサーベイを行う上では、おろそかにできない部分です。

・現在の給与に納得しているか
・自分の役職は適切だと思うか
・現在の評価制度は能力や成果をきちんと反映できていると思うか
・新人教育では仕事に必要なことを十分に教えられているか
・キャリアアップのための制度が充実していると感じるか

ワークライフバランスに関して

ワークライフバランスに関するカテゴリーでは、質問を通じて従業員の心身の健康をチェックします。
仕事で成果を上げるには、肉体や精神の健康が非常に重要です。また、プライベートの充実が業務に影響するケースもあります。ワークライフバランスを問うことで、違法な長時間労働が生じていないかといった点も明らかにできるはずです。
以下のような質問を入れ、しっかりと確かめる必要があります。

・業務の中で過大なストレスを感じることがあるか
・仕事と生活のバランスが保たれているか
・残業は無理のない範囲に収まっているか
・睡眠が十分にとれているか
・有給休暇がとりやすい環境だと思うか

まとめ

パルスサーベイとは、月単位・週単位で簡単な質問を繰り返す従業員調査です。従業員や職場の現状を把握し、問題があれば対策を講じる必要があるため、目的にマッチした質問を用意する必要があります。
パルスサーベイに使用する適切な質問の用意が難しい場合、簡単に質問をそろえられて自社仕様にもカスタマイズできるチェックテストシステム「ラクテス」の利用がおすすめです。無料で使えるフリープランもありますので、ぜひお試しください。

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