早期離職を改善する6つの方法とは? 離職の原因と対策を解説

雇用の流動化が進む中、従業員の離職率を改善するためにはどうすればいいのか頭を悩ませる企業も増えています。実際、早期離職率の改善は、組織の安定を図る上で非常に重要な課題です。課題を解決するためには、従業員、特に若者が早期離職してしまう原因を探ることが大切です。その上で従業員の定着率を上げ、長く活躍してもらうための施策を打つ必要があります。本記事では、離職が起こる原因や特徴、そして定着率を向上させる方法について解説します。

離職率が問題視されている背景

離職率の問題は、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。厚生労働省の調査によると、2022年度(令和4年度)における常用労働者全体の入職率は15.2%、離職率は全体で15.0%でした。

参照元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf(p.7)

しかし、新卒者の離職率はより高く推移しており、同省が2023年に公表した資料によると、新卒者の3年以内離職率(早期離職率)は、大学卒業者で32.3%、高校卒業者で37%でした。厚生労働省の資料によれば、大卒者の早期離職率が30%を超えたのは1995年が最初で、それ以来30年近くものあいだ同水準で推移し続けています。

参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html

参照元:https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001156476.pdf

このような状況が明らかになるにつれて、現在では多くの企業が従業員の離職率ないしは定着率に目を向け、その改善に乗り出しています。というのも、採用した人材が早期に離職してしまうことは、企業の成長を大きく阻害する要因になりえるからです。

改めて言うまでもなく、従業員の採用は相応のリソースを投じずにできるものではありません。採用計画を立て、求人票をつくって募集し、選考活動を経て採用を決定するまでに、企業は多くの資金・時間・労力を投じます。その人材が入社した後も、十分な戦力になるように育成するまでには一定の時間とコストが必要です。それにもかかわらず、3年以内に早々に自社から去られてしまうのでは、投入したリソースに見合うリターンが得られません。

「早期離職するのは仕方ないと割り切って、どんどん人材を入れ替えていけばいいじゃないか」という考えをもつ方もいるかもしれません。しかし、それは上記のようにコストの無駄が大きいですし、中長期的に見れば状況をさらに悪化させてしまう恐れもあります。というのも、少子高齢化の進行に伴って、社会全体で労働者が少なくなってきており、これに伴って企業間での人材獲得競争はさらに激化しつつあるからです。

そのような状況で、早期離職率が高い状況を放置している企業は、「従業員を使い捨てしているブラック企業」とみなされて、採用活動で苦戦を余儀なくされる恐れが強くなります。また、人材の入れ替えが激しい状況では、組織内にノウハウを蓄積していくことも難しくなるため、組織全体の安定や成熟を阻害する要因にもなりえます。

労働者側から見れば、転職するのはもはや珍しいことではなくなっており、離職する心理的ハードルは低くなってきている状況です。しかし、企業としては、このような状況に強い危機感をもち、「なぜ従業員が離職してしまうのか」「離職を防ぐためにはどうすればいいのか」と、対策を考えることが重要です。

参照元:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況を公表します(令和5年版)

参照元:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概況

従業員が離職を決断してしまう四つの原因

従業員の離職を防ぐには、「そもそも何が原因で離職が生じてしまうのか」を分析・把握することが重要です。かつては内閣府が、現在では子ども家庭庁が主管している「子供・若者白書(旧青少年白書)」の平成30年版には、若者の離職理由の統計調査があります。これに即して分析すると、従業員が離職を決断する主な原因は、以下の四つに大別できます。

原因1. 採用のミスマッチが起きている

離職の主要な原因のひとつは、採用のミスマッチです。これは入社前の期待と実際の職務内容や職場環境のギャップが大きいことを示しており、期待と現実の乖離を意味します。平成30年版「子供・若者白書」によると、初職の離職理由の中で最も多かったのは、「仕事が自分に合わなかった」で43.4%でした。離職理由は複合的なものである場合も多いですが、この仕事とのミスマッチは、離職の決断に至った最も大きな理由としても最上位です。

参照元:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12927443/www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf(p.8)

これは当の若者の認識だけでなく、採用する企業側にも問題があると考えられます。たとえば、採用活動の段階で「開示している情報が少ない」、「ポジティブな面しか伝えない」、「自社やその業務に必要な能力や適性や要件の定義ができていない」などといったことがあると、ミスマッチの多発は避けられません。

原因2. 労働条件が悪い

労働条件に対する不満も大きな離職理由です。具体的には、低賃金や長時間労働、サービス残業などの労働環境が挙げられます。前掲の調査結果によれば、離職理由として、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」と答えた割合は23.4%、「賃金がよくなかったため」と回答した割合は20.7%でした。

参照元:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12927443/www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf(p.8)

これらの条件は、従業員のワークライフバランスや健康、仕事のモチベーションに直接影響を及ぼし、結果として離職を引き起こす要因となります。企業は、労働条件や労働環境を見直し、お互いに納得できる雇用関係を構築することが重要です。

原因3. 重いストレスがかかっている

第三の離職理由は、職場での重いストレスです。ここではまず、セクハラ・パワハラなどのハラスメントも含めた人間関係に起因する精神的負担が想定されます。また、過重なノルマや責任もまた、従業員に過度なプレッシャーを与え、離職に走らせる原因です。

実際に、前段の調査では、「人間関係がよくなかった」と答えた割合が23.7%、「ノルマや責任が重すぎた」と回答した割合が19.1%となっています。企業としては、従業員が職場や仕事に馴染めるように、入社後もしっかりフォローをしていくことが重要です。ただし、「責任ある仕事を任されなかったため」を離職理由にしている割合も8.0%存在するため、個々人の能力や成長度、性格などにあわせて調整することも求められます。

参照元:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12927443/www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf(p.8)

原因4. 従業員に将来への不安を抱かせている

従業員が離職を決断する第四の原因は、所属する企業や自身のキャリアに対する将来への不安です。「この企業には将来性がないのでは」「ここで長く働いても自分が望むキャリアパスは描けないのでは」という不安は、従業員が転職を考え始める大きなきっかけになりえます、

事実、前段の調査では「勤務先の会社などに将来性がないと考えたため」と回答した割合が15.1%に上っています。これは、企業が自社のビジョンや成長戦略を従業員へ明確に伝え、個々のキャリア支援をすることの重要性を示しています。

参照元:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12927443/www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf/b1_00toku_01.pdf(p.8)

離職する可能性が高い人の特徴

離職を防ぐためには、従業員が退職を検討している兆候をいち早く捉え、的確にフォローすることが重要です。そこで以下では、離職者に共通する特徴や行動パターンを紹介します。もしも自社の従業員に同じような兆候が見られた場合は、早期に対応策を講じるようにしましょう。

特徴1. モチベーションが低くなった

仕事に対するモチベーションの低下は、従業員が離職を考えている可能性を示す重要なサインです。仕事に対する熱意が衰えると、その変化はさまざまな形で現れます。たとえば、「これまでは積極的に取り組んでいた新しい仕事への挑戦が減る」、「会議での発言が目に見えて少なくなる」、「仕事のパフォーマンスが以前と比べて低下している」などです。

これらの兆候は、従業員が職場や仕事に対して意欲を失い始めていることを示しており、早期の対応が求められます。もちろん、これらは単なる疲労などによって生じている可能性もありますが、そうだとしてもフォローが必要なのは違いありません。

特徴2. 残業や休日出勤を断るようになった

結婚や育児など明確なきっかけもなく、急に残業や休日出勤を断るようになった場合も、離職を考えているサインとして認識することが必要です。これには、退社時間が以前よりも早くなる、有給休暇の消化が増えるなどの変化も含まれます。

従業員がこれまでのように仕事に時間を割かなくなるのは、仕事や職場に対する熱意や関心が低下しているサインです。あるいは、すでに転職活動を始めており、そのために時間を充てたいのかもしれません。残業や休日出勤を断るようになった理由を強く問いただすのはハラスメントに抵触する恐れもあるので、従業員の様子を注意深く観察し、適切な対話を行うことが重要です。

特徴3. コミュニケーションが減った

従業員が離職を考えている場合、コミュニケーションの変化も顕著な兆候となります。日常の挨拶や雑談が以前に比べて減少するのは、職場への帰属意識や関心が低下している証拠です。具体的には、「普段の挨拶をしなくなる」「以前は活発だった雑談が減る」「社内の飲み会や食事会を避けるようになる」「なんとなくよそよそしい態度を取る」などが挙げられます。

また、「仕事の愚痴や不満が激しくなる」、あるいは逆に「仕事の愚痴や不満を急に言わなくなる」といった変化も要注意です。後者は一見矛盾しているようですが、すでに会社を見放していたり、転職を決めて心を切り替えていたりする恐れがあります。いずれにしても、従業員が会社の話題に対してこれまでとは異なる態度を示すようになった場合は、その背景にあるものは何か注意深く考えるようにしましょう。

【6つの施策】早期離職を防いで定着率を上げる方法

早期離職の問題を解決し、定着率を高めるためには、具体的な施策が必要です。以下では、上記で挙げた離職原因を解消し、従業員が長期にわたり安定して働ける環境を整えるための6つの施策を紹介します。

施策1. 賃金の見直し

離職の主な原因のひとつである「労働条件の悪さ」に対応するために、まずは賃金の見直しから始めましょう。各従業員がそのスキルや経験、労働量に見合った適正な報酬を受け取っているか、同じような立場同士で不公平な偏りなどが出ていないか注意が必要です。サービス残業が横行している場合は、その防止も欠かせません。

自社の従来の賃金体系では調整が難しい場合は、労働市場における相場も参考にして、なるべく他社に劣らない賃金を設定することも検討しましょう。適正な報酬は従業員のモチベーションを高め、自社への忠誠心を育む効果があります。

施策2. 働き方条件の見直し

労働条件を改善するためには、働き方の柔軟性を高めることも重要です。特に現代では、リモートワークやフレックスタイム、短時間勤務など、多様な働き方への対応が求められています。これにより、従業員はワークライフバランスを取りやすくなり、ストレスの軽減や仕事への集中力向上が期待できます。

こうした柔軟な働き方を整備することで、会社自体には特に不満がないにもかかわらず、家庭や健康上の理由などでやむなく退職する従業員を引き留めやすくなります。また、採用活動において多様な人材へアプローチできる大きな強みになることも無視できません。

施策3. 労働時間の見直し

離職の主原因として挙げられる「労働条件の悪さ」や「過重なストレス」に対処するためには、労働時間の見直しも欠かせません。長時間労働の削減は、従業員のストレス軽減とワークライフバランスの改善に直結します。デジタル技術などを活用した業務効率化によって労働時間を短縮できれば、それは企業にとっても人件費の削減や生産性向上などのメリットになります。

また、サービス残業の根絶は、法的な側面だけでなく、企業の倫理的な責任を果たす上でも重要です。適切な労働時間の管理と遵守は、従業員の満足度を高め、結果として離職率の低下に寄与します。

施策4. 評価制度の見直し

従業員に「将来の不安」を抱かせないようにするためには、評価制度の見直しも重要です。昇進や昇給などに関連する評価基準や評価方法を改めて見直し、より公平かつ透明性ある制度になるように努めましょう。同時に、セクハラやパワハラなどを抑制する制度・体制の強化も重要です。

このような取り組みをすることで、従業員は、「会社は自分の働きにしっかり報いてくれる」「不当なことからは力強く守ってくれる」と安心や信頼を抱きやすくなります。また、評価制度への信頼は、賃金への納得感を強める効果もあります。

施策5. 教育体制の見直し

従業員の不安や過重な負担に対処するためには、教育体制の見直しも極めて重要です。まずは新入社員がスムーズに職場や仕事に適応できるように、研修体制やメンター制度などを見直しましょう。また、既存の社員に対しても、新しい役職などに就くタイミングで、必要な知識やスキルを教育・研修する機会を設けるのがおすすめです。

さらに、継続的な取り組みとして、キャリア開発のための教育・相談制度などを導入することも求められます。個々人の適性や希望にあわせたキャリア支援を行うことで、従業員は自分の将来に対する不安を和らげ、企業に対する忠誠心を深めやすくなります。また、定期的に1on1ミーティングなどを実施することは、上司が部下の悩みや離職の兆候を察知するためにも効果的です。

施策6. 採用方法の見直し

早期離職の最大の原因である「採用のミスマッチ」へ対処するためには、採用方法の見直しが欠かせません。企業はそれぞれ特有の文化や業務体系をもっています。したがって、採用活動においては一般的な能力試験やSPIの結果だけに頼るのではなく、自社の文化や価値観にマッチした人材を見極められるような工夫が必要です。

そのためには、自社が求める人物像とは何なのか、その能力や資質、人格性などの「採用ペルソナ」をできるだけ詳細に規定することが重要です。これが具体的に固まっていれば評価基準にブレが生じにくくなり、ミスマッチを避けやすくなります。また、採用活動に際しては、勤務体系や労働条件などに関して正確に説明したり、現場の社員と交流できる機会を設けて仕事の実態を知ってもらったりすることも重要です。場合によっては、自社独自にカスタマイズした採用試験などを導入することもおすすめします。

採用のミスマッチを防止するなら「ラクテス」がおすすめ

採用のミスマッチを防ぐためには、応募者の能力と自社の業務要件との適合性を正確に把握することが重要です。そして、この目的を達成するためには「ラクテス」の活用が効果を発揮します。

ラクテスとは、企業の人事担当者が自社オリジナルの筆記試験を簡単に作成できるクラウド型のシステムです。ラクテスでは完全オリジナルの試験作成から、さまざまなテンプレートを使用した簡便な試験作成まで柔軟な活用ができます。テンプレートには、Excel操作やWebマーケティングといった実務スキルを問う内容から、社会人基礎力などの一般的な問題まで幅広く用意されています。たとえば、ジョブ型雇用において職種ごとに異なる経験や知識を問うテストを作成する際などにも最適です。

このように、ラクテスで自由にテスト内容を作成・カスタマイズすることで、一般的な能力試験やSPIだけでは見極められない、自社特有の要件を反映した試験を実施できるようになります。その結果、企業は採用プロセスにおいて、自社の要件に応募者が適合しているかをより正確に評価できるようになり、採用のミスマッチを効果的に防げます。

ラクテス|SPIではわからない?対策される能力検査に「オリジナル適性検査」導入のすすめ

ラクテス

まとめ

企業が直面する早期離職の問題を改善し、定着率を高めるためには、離職の主要原因を理解し、それに対応する具体的な施策を講じることが必要です。その際には、賃金や労働条件の見直しをはじめ、多様なアプローチが求められます。

中でも重要なのは、採用活動の改善を通して、自社と応募者のミスマッチを避けることです。このミスマッチを避けるためには、自社オリジナルの試験を作成できるシステム「ラクテス」が役立ちます。本記事を参考に、ぜひ離職率の改善に取り組んでみてください。

page top